おこづかいで計画的なお金の使い方をトレーニング
あなたの家では、お子さんにお金を与えるとき、どういう仕組みにしていますか? 家計の相談にやってきた方々、またセミナーなどでお会いする方々、学校で会う父母のみなさんの話を聞いていると、大きく次の3つのパターンに分かれるようです。
- 「毎月○円(週に○円)」というおこづかい制
- 必要なときに渡す一時金制
- お手伝いに応じて渡す報酬制
横山家では、小学校3年生になってから高校を卒業するまで、毎月のおこづかい制でやっています。額は学年によって異なりますが、月に一度おこづかいを渡し、あとは本人の管理で自由にやりくりしてもらいます。
もし、部活動で必要な道具、どうしても手に入れたい生活用品、みんなで共有したら生活が楽しくなるアイテムなどを買いたい場合、月に一度の家族マネー会議の場でそれぞれがプレゼン。私と妻、本人以外の子どもたちが納得すれば家計から支出して購入します。
なぜわが家がおこづかい制での子育てを実践しているかと言うと、2人ともファイナンシャルプランナーでもある私たち夫婦は、「おこづかいをもらっている間は、お金の使い方を学ぶ訓練期間だ」と考えているからです。
この時期、何より重要なのは自分の手持ちのお金を見ながら使い方を自分で考えること。毎月定額のおこづかいを渡すことは、計画的なお金の使い方をするためのトレーニングになります。
「現金で」使う感覚を養う
とはいえ、実際に子どもたちがお金の価値をしっかりと理解し始めるのは10歳ごろ。しかも個人差があります。
たとえば、娘が小4のとき、500円のおこづかいをもらったその日に500円分の買い物をしてしまい、その後、出かけるたびに10円のお菓子も買えないことにガッカリする、というような場面も目にしてきました。
お金の価値をわかり始めてはいるものの、目の前の「欲しい!」に流され、計画的に使えないこともあるわけです。ただ、そういった小さな失敗によって、「一気に買っちゃうとあとで大変」ということを学び、翌月以降は我慢するようになります。
また、最近はスイカやパスモなどの交通系のICカードが普及してきたため、子どもたちも電子決済で支払う場面が増えています。こうした決済手段のない時代に成長した私たちは、「チャージするんだから、結局これは現金を使うのと同じこと」という自覚がありますが、子どもたちが同じようにとらえているかはわかりません。
そんな時代だからこそ、小さいうちから現金でお金を使う感覚を学ぶ必要があります。これは大人も同じですが、「お金としての実態」を感じていないと、ついつい浪費してしまうからです。
お金には限りがあることを知る
「お金という実感」がないという意味で、私は必要なときに渡す一時金制をあまりおすすめしていません。親がしっかり使い道を管理しないと、それが「本当に必要な使い方」かどうか曖昧になるだけでなく、子どもに「お願いしたら、お金が出てくる」「ちょうだいと言えばいい」という感覚を持たせてしまうからです。
家計相談では、専業主婦の方から「私は専業主婦だし、稼ぎが少ないからおこづかいをもらえてないんです」というお話をよく聞きます。しかし、掘り下げて確認すると、スーパーでの買い物のときなど、家計から自由に使っているケースが多々あります。
おこづかいに換算して計上すると数万円。でも、本人はおこづかいなしでコツコツ節約しているという感覚です。子どもへの一時金制も似たようなズレを生む可能性があります。
お手伝いは「ありがとう」で終わりたい
もう一つの、お手伝いに応じて渡す報酬制にはメリット、デメリットの両面があります。お金は労働の対価だという原則を覚えるには適しているかもしれませんが、日常的なお手伝いにもお金が絡むとなると、それは正しい親子関係なの? という気がしてきます。
親としては「このくらいやってくれて当たり前」なことを、子どもは「(対価を)もらえないならやらない」となってしまいかねません。ただし、心理的な抵抗を感じないのであれば導入してみるのもいいでしょう。お風呂を掃除したら○円、食事のあとに食器を洗ったら○円、犬の散歩に行ったら○円、テストで満点をとったら○円、決めたルールを守れたら○円など、細かく設定して積み上げていくことになるでしょう。また、定額のおこづかいを少なめにして、一部をお手伝いの報酬制にするという組み合わせもあります。
お子さんのお金の管理能力は上がるでしょうが、個人的にはおこづかいはおこづかいで渡し、お手伝いには「ありがとう」で終わりたいと考えています。
足りないときは「補填費用」から
お金は私たちが生まれた瞬間から一生の間ずっとつき合っていくもので、人生の幸福度を大きく左右します。そして、子どもたちにとって最初にお金の使い方を考える機会となるのがおこづかいです。
横山家では小学3年生から500円のおこづかいが支給され、学年が上がると小学生のうちは100円ずつ上がる仕組みです。おこづかいを始める年齢の根拠は特になく、長女のときのやり方を続けています。
ただ、五女だけは600円からのスタートでした。これは彼女が家族マネー会議で「欲しい月刊マンガ雑誌が580円だから」と主張し、承認されたからです。マンガ雑誌を買うと残金は20円ですが、文房具などの学校生活に必要なものは家計から出すルールなので、残金20円でもかまわないと納得していました。
それでもおこづかいが足りない場面は出てきます。そんなとき、子どもたちは「年間のおこづかい補填費用」から使っています。これはお年玉を貯金と「年間のおこづかい補填費用」に分けたもので、足りない月の分をそれで補ったり、月々のおこづかいでは買えないものを購入したりしています。
「なぜ欲しいのか」を掘り下げる
小中学生のうちは、買い物をするときは妻や私に「○○を買う」と申告するのがルールになっています。そして、子どもたちが買ったものをどうしているかについてそれとなく気にして、後日「最近、使っていないけど、大切にしている?」「いい買い物だった?」「出しっぱなしで片づけてないよね?」など、本人が使い方を振り返ることができる問いかけをします。大切にしていなかったら「無駄づかいだ」と反省し、次に生かてもらいたいからです。
すべてのものについて問う必要はありませんが、本人の意志でした買い物に「どうだった?」と問いかけて、使い方を意識するように手伝いをしましょう。
おこづかい制を始めるとき、親としては「すぐに使い切ってしまうんじゃないか」と不安になります。しかし、私はそれでいいと思っています。最初はおこづかいをもらった当日に全部使い切ってしまうという失敗をしたとしても、親は欲しいものを簡単には買ってくれないとわかると、やりくりすることを覚えます。さらに、「そもそも、これは本当に欲しいものなのか」と、子どもながらに熟考するようになってきます。「欲しい」というウォンツの理由を掘り下げていくと、より本質的なニーズが見えてくるということです。
たとえば、「友だちとファストフード店に行きたい」と思ったとき、本当のニーズは「友だちと一緒に時間をすごしたい」ということだと気づくと、「だったら、家に来てもらえばお金を使わずにすむかも」と行動が変わってきます。
計算、管理、金銭感覚など、おこづかいを通じてお金の使い方を考えることは、子どもにとってとても重要な学びと体験です。
こうした金銭感覚の教育は、社会に出ていく前準備になります。なにしろ、私たちはずっとお金を使いながら生きていくのですから。
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表。お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の問題の抜本的解決、確実な再生を目指し、これまでの相談者数は2万3千人を突破。各種メディアへの執筆・講演も多数。個人のお金の悩みを解決したいと奔走するファイナンシャルプランナー。