「温度のある言葉」を意識して使うと家族の距離はグッと近くなる

親としては、いつでも子どもの体が何より心配なものです。

私には息子が二人います。食事だけはしっかりとってほしいと思っていても、子どもが思春期だったり関係性が悪くなっていたりするときは、「ご飯を食べなさい」とか「食べてね」と言っても、なかなか聞いてくれないものですよね。

こんなときは、子どもにどんな言い方をすればいいのでしょうか?

オススメなのが、あるカウンセラーの方に教えてもらった次のような方法です。

「温かいうちに食べな」

お風呂についても、「お風呂に入りな」より、

「お風呂に入って温まってきな」

という言い方。この方が、相手の心に反応しようという気を起こします。

関係性が冷えきっていたり、気持ちに潤いがなくなっていたりする人には、こうした“温度”を感じさせるひと言をかけてあげると、思った以上に効果を発揮することがあります。

その後、介護に携わっている人からも同じようなことを聞きました。
温度のある言葉を使われると、温かいものを食べたり、温かい湯に入ったりした様子を思い浮かべて、心もほぐれるのでしょう。「じゃあ、食べてみようかな」「そろそろお風呂に入るか」という気持ちになるものです。

これは仕事でも通用することだなと私は感じました。

「熱さを感じるね」
「グッと温度が上がっているよ」 

 これで自分の中の熱意や熱情が相手にも伝わります。
また、直接温度を表す言葉でなくても、

「わくわくするよね」
「どんどん盛り上がってきたな」

というような言葉も、感情をありありと表現できます。

活字にすると、ちょっとわざとらしい感じがするかもしれませんが、実際に言い慣れてしまうとそれほど気恥ずかしくもありません。

とくに、心が寒くなっている人には、言葉で温度を伝えるのがいいと思います。

家族のピンチを乗り越える魔法の言葉

また、長く家族として暮らしていると、思いがけずピンチに陥ることもあります。そんなとき、私がいつも自分自身に問いかける魔法の質問をご紹介しましょう。

「これは何のチャンス?」

疑問形になっているところがミソ。よく言われる「ピンチはチャンス」は、脳が動かないので他力本願のようなもの。これとはまったく違います。

「これは何のチャンス?」というのは、脳に対する質問であり、前に進めるひと言です。目の前のピンチから逃げようとせずに、正面から逆境という山を乗り越えることで、その向こうにチャンスの光の筋が見えるという方法です。

普段から「これは何のチャンス?」と考える訓練をしていると、ピンチでも冷静に解決策を考えられる自分に変わります。
最近になって、それを実感する事件が起きました。

長男がめでたく大学に合格しました。それはいいのですが、危うく入学手続きを忘れそうになるという、とんでもないピンチが発生したのです。

私は妻と長男が手続きをしているつもりでしたが、金曜日の朝、ふとその日が手続きの締め切り日だったことを思い出しました。

「そういえば手続きは無事に済んだ?」

それが朝7時前。妻はすでに出勤しており、長男は高校の文化祭の準備に向けて家を出ようとしていたところ。長男は「へ?」とその場で凍りついています。書類を見たら、真っ白のまま! 住民票もとっていないし、もちろん入学金も振り込んでいません。

あせって妻に電話すると、あちらも「へ?」と電話口で凍りついています。
これは大ピーンチ! その日のうちに書類を整えて、入学金を振り込んで、当日の消印で書類を郵送しなくてはなりません。

こんなとき、どんな言葉が出てくるでしょうか。きっと普通は、「何やってるんだよ!」「ダメじゃない! どうするんだ?」という「反応」のひと言じゃないかと思います。

私は幸いにも、「これは何のチャンス?」という問いかけをする訓練を普段からしていました。ここで怒っても生産的なことは何もありません。私にも当然責任があります。

ここで思わず私の口から出てきたのは、

「いやあ、うちってほんと、スリル満点だよね!」

という言葉。われながら笑ってしまう「対応」です。それを言ったことで冷静になり、作戦を練りはじめました。出先にいる妻と電話で連携しながら、長男には学校に行く前に急いで書類を書かせて写真を貼らせました。

私は大きな企業と打ち合わせがあって、遅くても10時には地元駅を出なくてはいけません。区民事務所は9時前に開いているので、まずそこで住民票取得。その足で銀行で入学金を振り込み、そのまま郵便局へ行って、書類をまとめて書留にしてひと安心。
あとは駅まで走って、打ち合わせの時間に滑り込みセーフ。まさに、スリル満点の家族でした。

「おやすみ」のあとに加えるひと言

もう一つ、普段から使える、家族の距離を近づける「ひと言」を紹介します。

夜寝る前のあいさつの言葉は、「おやすみ」「おやすみなさい」と相場が決まっています。でも、私はいつもそれにひと言だけ加えています。

「おやすみ、また明日」

深い意味はありませんが、明日につながっている感じがするので、いつのまにか、そういう言い方をするようになりました。今日もよかったけれど、明日もまた楽しくやろうねという気持ちです。もしくは、今日は大変だったけれど、明日はきっといいという気持ち。

私には息子が二人います。50歳を超えたおやじが、夜遅く息子の部屋をトントンとノックして、「じゃ、父さんは先に寝るぞ。おやすみ、また明日」と言って歩いているわけです。

変なおやじかもしれませんが、妻にも同じように、ごく普通に毎日そう言ってきました。今日と明日をつなげただけですが、これを繰り返していくことで、いい未来がやってきそうな気分になりませんか。 

 

PROFILE
松本秀男

一般社団法人日本ほめる達人協会専務理事。国学院大学を卒業後、歌手さだまさし氏のマネージャーを経て、家業のガソリンスタンドを再建。45歳で外資最大手のAIU保険の代理店研修生に。そのコミュニケーション力で数々の成果をあげ、トップ営業、本社経営企画部のマネージャーとして社長賞を受賞するなど、まわりにムーブメントを起こす感動エピソードを生み出し続けた。組織を動かし、家庭まで元気にする達人として活躍中。