親がよく言う「頑張って」は子どもには“ダメ出し”に聞こえている

いつも使う言葉、いわゆる「口ぐせ」には人生に大きな影響を与える力があります。あなたが選択して投げかけている言葉がお子さんにやる気や勇気を与えている半面、伸びる力を削いでしまっていることも……。親がなにげなく使っているものの、実は子どもは別の意味でとらえている「口ぐせ」、チェックしてみましょう。

「頑張ること」のジェネレーションギャップ

令和の時代に入って、つくづく感じているのは、昭和世代の親と平成以降に生まれ育った子どもたちとの間のコミュニケーション・エラーの問題です。つい先日も、あるお母さんから相談を受けました。中学受験を前にした娘さんから、次のように言われたそうです。

「お母さんと話すとやる気が下がるから、話したくない」

シングルマザーとして一生懸命に育てた一人娘にこう言われて、ショックを受けたそうです。お母さんからすると、まったく思い当たることがない。傷つけるとか、やる気を下げるつもりなんてありません。励まそう、元気づけようと思って言葉をかけていたのです。

「それ以来、どう声をかけていいのか、分からなくなりました。自分の子育てにも自信がなくなってしまって」お母さんも泣きそうです。

このお母さんはまだ30代。ときに昭和世代の言葉に違和感を覚えながらも、それに従ってきた世代だと言えます。自分が言われてきたとおりに言っただけ。自分はそうして頑張った。それが、次世代には、まったく違うふうに受け取られてしまったら、混乱しますよね。

どう考えたらいいのでしょうか。「もっと頑張れ」と言われると、子どもたちには、「今、頑張っていない」と聞こえるのです。つまり、承認されていない、否定されている、と伝わっているのです。ダメ出しですね。

たしかに、親世代の基準から見ると子どもたちは「頑張っていない」ように見えるのです。なぜなら、成果が出ていないから。その前提として、あまり行動していないからです。もっと頑張れるはず、もっとできるはず、と心から思っているから、「もっと頑張れ、やればできる」と叱っているだけなのです。よかれと思ってです。

親世代の評価の基準は、「できる」(成果・能力)と「やっている」(行動)です。その基準から見ると、子どもたちは、「頑張っていない。やっていない」だから、「やればいいのに」「頑張ったらいいのに」という声かけになるのです。

目標を見つけるだけで大きな進歩

ところが、子どもたちは、すでに「頑張っている」のです。「成果・能力」「行動」というポイントでない、承認ポイントがあるのです。そこを見つけて承認することが、子どもたちのやる気を持続させ、行動につなげるカギになります。

その承認ポイントは、「目標を持つこと」「やろうとすること」(意欲)です。まだ「成果」にはつながっていない。まだ十分な「行動」にもつながっていない、でも「やろうとしている」。その「意欲」を持つこと自体を頑張っているのです。

イメージしてみてくださいね。親世代は、目の前に山がある世界に生きているわけです。「その山を登る」という目標を持つのが自然だし、その目標はわかりやすく、登った先のゴールも自明です。

きっと今より景色もいい。空気もキレイ。気持ちいいはずです。今よりもいい生活、今よりもいい給料、今よりもいい仲間。途中つらいかもしれないけれども、何よりも、登ってみたい。そんな感じです。

ところが、子どもたちの世界には、山がありません。見渡す限り草原です。どちらを目指したらよいのかわかりません。どう進めばよいのか、それとも今のところにいるほうがいいのかわかりません。

進んだ先に何があるのかも約束されていないし、今よりもよくなるという保証もない。そして、たとえ草原のピクニックといえども、歩くのにはそれなりの体力と気力が必要です。

そんな中で、とりあえず一つの目標を定めること、どちらかの方向に進もうとし始めること、その目標をブレずに持ち続けることが、子どもたちにとっての「頑張る」ポイントです。だから、目標を持ったこと、「意欲」を持っていること自体を、「頑張ってるね」と承認する声かけをしてあげてほしいのです。

それでこそ、「自分のことを分かってくれている。この人のために、もう少し頑張ってみようかな」と思えるようになるのです。子どもたちにとって、目標を自分で持てるって、スゴイことなんです。目標を決めて、それに取り組もうとしていることって、それだけで素晴らしいんです。それだけで、このAI時代のなかで、人と差別化できます。「成功」なんです。そういう理解をしてくださいね。

承認の次に、「やってみたらいいよ」というお父さん、お母さんの信頼いっぱいの後押し、励ましが有効です。そちらの方向でいいんだ! 進んでいいんだ! その「励まし」こそ、子どものやる気を持続させるんです。

失敗に見えることも、無駄に感じることもあると思いますが、たくさん経験させてください。その経験こそ、AIと人間を分ける、人間独自の、その子独自の、価値となっていくのです。 

心配すれば「心配な子」に、信頼すれば「信頼される子」に育つ

昔から日本では、言葉の持つ力を「言霊(ことだま)」と言って大切にしてきました。「思考」とは「言葉」であり、「言葉」を変えることで「思考」や「考え方」を変えることができます。そうすると「感覚」が変わり、「行動」が変わります。

つまり、「言葉」には「人生」を変える力があるということです。あなたが選択した「いい言葉」は、あなたのお子さんの人生にいい影響を与えていきます。

では、あなたにはどんな「口ぐせ」「思考ぐせ」があるでしょうか。親がついつい言いがちで、相手の(子どもの)やる気や気分がダダ下がりになる言葉をもうひとつ、ご紹介します。

親が子どもに対して、「心配」という言葉を使うのを、よく耳にします。その子どもが、もはや成人していても、です。習慣、「口ぐせ」ですね。「心配」という言葉を使う人は、きっと子どもの頃から「心配」と言われて育っていると思います。

お母さんは、本能として子どものことを心配してしまう生き物ですから、「心配」と思ってしまう、言ってしまいます。心配するのは親の愛情だ、と思っている人も多いでしょう。「心配」という言葉で、何をイメージするでしょうか。

「何か、困ったことになるんじゃないか」
「ちゃんとできるかどうか、不安」
「この子は、要領が悪いから」
「今までも失敗してるし」

そんな背景が浮かんできませんか。「心配」が、子どものことを思っての言葉であることは、間違いありません。しかし、イメージする未来が、前向きでないことも確かです。

もっといい言葉、ありそうですね。一方で、「心配なんかまったくしていない、ウチは放置です」と言われるお母さんもいますが、それもちょっと違うんですね。
「心配」の反対語は、「信頼」です。「放置」とか「無視」では、ないんです。違いがわかりますか?

そうです。愛情があるかどうか、気にかけているかどうか、です。「放置」という言葉からは、愛情は伝わりません。お母さんに愛情がないなんて、言ってませんよ。愛情はあります。でも「放置」という言葉から愛情は伝わらないのです。

「心配」という言葉の代わりに、「信頼」「信じてる」を選択しましょう。
「心配」される子どもより、「信頼」される子どものほうが、いい感じじゃないですか? 今までがどうだった、とかよりも、これからどうなってほしいのか、です。お母さんが「心配」するから、「心配な子ども」になるのです。子どもはお母さんのイメージを演じているのです。

今、「心配」でも、未来は「信頼される人になる」と信じることはできますよね。お母さんが「信頼」するから、「信頼される子ども」が育ちます。将来、「信頼される大人」になってほしくないですか?

「心配」を「信頼」に。「お母さんは、信じてるよ」と伝えましょう。

【こう言いカエル】

心配だ→信じてる 

 

PROFILE
田嶋英子

プロコーチ/NLPマスタープラクティショナー。あねごイノベーションズ代表。1961年佐世保生まれ。広島大学教育学部で教育学と心理学を学び、卒業後は高校教諭として活躍。結婚・出産後は二男一女を東京大学などへの進学サポートに成功。現在は、子どもの不登校・ニート・引きこもり問題、夫婦関係の改善、婚活・就活など、家族・子育て・職場の人間関係に精通した「お母さんサポートの専門家」としてセミナーやトレーニングを行っている。

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