問題のやらせすぎに注意! 中学受験の「間違った早期教育」とは

わが子を頭のいい子に育てたい。これはどんな親にも共通する本音でしょう。だからといって、幼いときからドリルをたくさんやらせても、頭のいい子に育つわけではありません。では、幼児期には子どもにどんなことをさせると将来の学力アップにつながるのでしょうか? 中学受験指導の第一人者である小川大介先生が教えてくれました。

理解の伴わない反復学習には要注意

「将来の中学受験を視野に入れているのであれば、子どもがまだ小さいうちから準備をしておいたほうがいい」

このような意見を聞いて、早期教育を始めたという親御さんもいるでしょう。しかし、子どもの脳は、0歳〜3歳、3歳〜7歳、7歳〜10歳と三つの段階をふんで成長していきます。

脳心理学者の林成之先生による、子どもの脳の成長とその変化について述べた『子どもの才能は3歳、7歳、10歳で決まる!』(幻冬舎新書)によると、子どもの脳は9歳〜10歳のころに大きく変容し、抽象的な内容が理解できるようになるといいます。それは、長年中学受験の指導をしてきた私も強く感じていることです。

中学受験の問題はまさに抽象問題のオンパレード。言葉で書かれたものを図式化して答えたり、聞いたこともない外国の事情や100年前の物語などをイメージしたりしなければなりません。それには、脳がそのような動きをとれる段階まで成長し、変容していなければ本来は対応できないのです。

ところが、一部の早期学習塾では、年齢が上がってから(適切な脳の成長段階になってから)学習すべき問題を低年齢の子に反復してやらせ、「こんな年齢でも解けるんですよ!」とアピールします。

でも、それは3歳〜5歳の子どもが見たことを見たまま記憶しているだけで、理解しているわけではありません。ですから、仮に5歳の子が難関校の中学入試問題を解けた(ように見える)としても、同じ子が10歳になって同じ問題を解けるかどうかは別問題です。

一方で、脳のつくりがほぼ完成している小学校高学年以降の先取り学習は有効です。現に、私立中高一貫校はそのような学習カリキュラムで進めていきます。

また、小学1年生の子どもが3年生で学習する内容に取り組むことにもそれほど問題はありません。その時期は、まだ抽象能力を問われる問題に取り組まないためです。

単純に計算をしたり、言葉を覚えたりするだけであれば、学年を超えて進めていってもいいでしょう(もちろん、本人が楽しんでいるということが絶対条件です)。

子どもの脳の成長を見きわめたうえで、ムリなくハードルを上げていきましょう。くれぐれも、形だけの〝早期教育〟には注意してください。

どれだけ小さいうちに熱中体験をしているか

では、親は幼児期にどのような働きかけをしてあげるべきなのでしょうか?

私は長年、中学受験専門の個別指導教室の代表として、さまざまなご家庭の教育相談を受けてきました。よくあるのが「高学年になってから成績が伸びなくなった」というご相談です。

そういうご家庭に「お子さんが小さいころ、どんなすごし方をされていましたか?」とたずねると、多くが「習いごとをたくさんさせてきた」「低学年から塾に通わせていた」と答えます。

一方、学年が上がるにつれてグングン成績を伸ばしてくる子がいます。4年生のときは、「授業のスピードが速すぎてついていけない」「こんなにたくさんの宿題はムリ!」とムラッ気を見せていたのに、一度ペースをつかむと、あれよあれよと成績が上がり、入塾時には考えられなかった難関校に合格してしまう――。

この違いは、「小さいときにどれくらい熱中体験をしているか」ということです。

小学校低学年までは勉強は学校の宿題だけで、あとは毎日外遊びをしていたというAくん。めずらしい虫やキレイな形をした石を持ち帰っては、うれしそうに親に見せてくれたそうです。

親も「この虫、なんていう名前なんだろうね?」「この石は何でこんなにツヤツヤしているのかな」と一緒に図鑑を広げ、調べていたそうです。

楽しくて夢中になれることに対して、子どもは学びのセンサーを全開にします。Aくんにとっては「遊び」でも、目の前にあるいろいろなことに興味を持ち、それを知りたいと行動に移し、自分の知識として蓄えてきた――。このことが、のちの勉強へとつながっていったのです。

たとえば理科の生物を勉強したとき、「あっ! あのとき見つけた虫にはこういう特徴があるからこのグループなんだな」と理解が深まる。こうしたつながりがおもしろいから、理解したことが使える形で頭に残る。

塾に通い出した当初はテキスト主体の勉強に慣れませんでしたが、勝手がわかってくるにつれ大きく伸びてきたのは、この「生きた理解」があったからです。

そして、もう一つよかった点は、親御さんが夢中になるわが子の姿を温かく見守っていたこと。子どもはお母さんとお父さんが大好き。親の愛情を感じながら、自分が好きなことをして遊ぶというのは、子どもにとって何よりの安心感と幸福感をもたらします。

こうしたプラスの感情をベースに持ちながら幼少期にたっぷり遊んで学んだ子は、必ず後伸びします。幼少期に「満足がいくまで遊んだ」「納得がいくまでやりとげた」といった経験があると、たとえ途中で壁にぶつかっても、「自分ならなんとか乗り越えられる」という強い心が後押しします。そしてここぞというとき、ものすごい集中力を発揮するのです。

くれぐれも、「早く始めればそれだけ有利になるに違いない」という理由で、その子の発育に見合わない問題をたくさん解かせたり、“右脳を刺激する”などのうたい文句で特に効果の検証できない習い事をさせたりしないようにしてください。

親が子どもを伸ばすことができるのは間違いありませんが、子どもの伸びる力を阻害してしまうのも親なのです。

 

 

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PROFILE
小川大介

教育専門家。中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員。1973年生まれ。京都大学法学部卒業。学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として活躍後、中学受験専門のプロ個別指導塾SS-1を設立。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。同時期に中学受験情報局「かしこい塾の使い方」の創設にも参画し、情報発信を開始。受験学習はもとより、幼児期からの子どもの能力の伸ばし方や親子関係の築き方に関するアドバイスに定評があり、各メディアで活躍中。そのノウハウは自らの子育てにも活かされ、一人息子は中学受験で灘、開成、筑駒すべてに合格。『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』(すばる舎)、『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)など著書多数。

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