包丁の“スイートスポット”を使うと切るだけでトマトが美味しい!

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よく切れなくなったからといい包丁を買ってみたり、包丁研ぎ器で入念に研いでみたり……。でも、実はそれより大事なのが“包丁のどの部分を使って切るか”ということ。料理の味までよくなる切り方を、シェフで料理科学研究家の水島弘史先生に教えてもらいましょう。

切り方ひとつで味も香りも変わる

料理は「塩」と「火」、さらに「切る」という3つの基本をマスターすれば誰でも上手くなります。ここで紹介する「切る」の重要性はあまり知られていませんが、料理の結果を大きく左右します。

間違った切り方をすると、野菜からは水分が出てベチャベチャになるし、うまみや甘みも逃げてしまいます。また、煮くずれしやすくなって、日持ちもしなくなる。

正しく切れば野菜いためはさらにシャッキリおいしくなり、トマトの角切りだって身がくずれないし、タマネギを切っても涙が出ません。ネギの小口切りは冷蔵庫で5日ぐらい持ちます。ウソみたいだと思うかもしれませんが、全部本当です。

特別な包丁はいりません。スーパーの500円ぐらいのものでも、100円均一の包丁でもけっこうです。たったひとつだけ大事なのは、「刃がまっすぐ」であること。

まな板の上など平らなところに刃を寝かせてピタリと押しつけてみましょう。刃とまな板の間にいっさいすき間がないのが「刃がまっすぐ」な状態。切れ味は気にしなくてかまいません。多少刃こぼれがあっても、刃がまっすぐでありさえすれば問題ないのです。

そして大切なポイント。ご家庭では包丁を研がないでください。というのは、包丁はとても繊細な器具なので、簡便な包丁研ぎ器などでガシガシ研ぐと逆にダメにしてしまうからです。

切りものは一種のスポーツ

「正しい切り方」というのは、すごい勢いでキャベツの千切りができるとか、大根のかつらむきが上手だとか、そういう技術のことではありません。ここでいう「正しい切り方」とは、食材の細胞をつぶさない切り方のこと。

曲がった刃を食材に切り込んで動かすと、刃と食材の間にムダな摩擦が生まれます。つまり、野菜も肉も、切り口の細胞がつぶれてしまうのです。

細胞をつぶさない切り方をするために、まず前提となるのが「刃がまっすぐな包丁」を使うこと。そのうえで、正しい切り方を実践しましょう。キュウリやニンジンでちょっと練習してみてください。

包丁でトマトをスパッと切るために必要なのは、正しいフォーム、そして正しい包丁の持ち方、構え方、動かし方。

料理は一種の科学ですが、切りものはスポーツです! スポーツを身につけるのに一番大事なのは基本姿勢。正しいフォームで切れば、ムダな力を使わず、刃物を通じて体の動きを効率よく食材に伝えることができます。

テニスのサービスを考えてみてください。足腰を安定させ、ヒザをやわらかく動かし、肩からヒジ、手、そしてラケットと、全身の動きが連動しなければ強いサービスは打てません。

ムチャクチャなフォームで力まかせに打っても、けっしてスピードのあるサービスは打てないし、どこへ飛んでいくかわかったものではありません。

正しいフォームを身につけた小学生のサービスは、フォームを知らない大人のサービスよりずっと速いでしょう? 切りものも同じこと。正しいフォームさえ知っていれば、女性だっていつもの包丁でラクにカボチャが切れるんです。

包丁の刃の真ん中あたりを使って押しつぶすように切る方が多くいますが、実際に使うのは、刃先から指2本分の位置から刃の中央までの間5cm ほど。ここが包丁の「スイートスポット」で、一番よく切れる部分です。

切り方のルール

1.まな板の高さを調節する

身長とまな板の高さが合っているかどうか確認しましょう。まな板の前に立ち、両手を伸ばしたとき、ヒジがやや曲がって自然に両手がまな板につく状態になるのが最適。ヒジが伸びきってしまう場合は台が低すぎ、ヒジが折り曲がるようだと台が高すぎ。
足元に踏み台を置いたり、逆にまな板を2枚重ねたりして調節しましょう。それだけで切り物がラクになります。

2.包丁を3本の指で持つ

①親指と人差し指で柄の同じ場所を両側から軽く持つ

②中指をかける

③薬指と小指は使わない(3本の指だけで持つ)

3本指で持つとムダな力が入らなくなります。包丁を「点」で持つようにすると腕のふりがまっすぐに刃から食材に伝わるので、包丁の重さを利用して食材が切れます。

3.体を45度に開いて構える

包丁を持っている側(右利きの人は右側)に体を45度開いて立ち、反対側の体は台につける。両肩を水平に保ち力を抜く。手首はやわらかく曲げ、ワキをしっかり締めて背筋を伸ばす。包丁の峰、手首、腕、ヒジがほぼまっすぐになるようにする。

4.押し出す意識で切る

3本の指だけで持ち、ムダな力を抜いて腕から動かし、刃を斜め前方に突き出すようにして切ります。戻すときは切る意識を持たず、切り口をなぞって手前に戻すだけ。

まず、まな板に対して刃を約30度で切り込みます。斜め下前方に差し込む感じです。ワキは締めたまま、肩を支点にしてヒジから包丁の柄までをまっすぐにしたまま押し出す気持ちで。

使うのは、刃先から指2本分の位置から刃の中央までの間5cm ほど。ここが包丁の「スイートスポット」で、一番よく切れる部分です。

 

[レシピ]
トマトサラダ
材料
2人分
トマト
150グラム
タマネギ
30グラム
パセリ
3グラム
オリーブオイル
野菜の重さの0.8%
コショウ
好みで

つくり方

① トマトを切る

② タマネギをみじん切りにする

③ パセリをみじん切りにする

④ ボウルにタマネギとパセリを入れ、塩を加えて軽く混ぜたらオリーブオイルを入れ、混ぜ合わせる

⑤ きれいに盛ったトマトに④をのせ、好みでコショウをふる

 

 

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PROFILE
水島弘史

フランス料理シェフ、料理科学研究家。1967年、福岡県に生まれる。大阪あべの辻調理師専門学校および同校フランス校卒業後、フランスの三つ星レストラン「ジョルジュ・ブラン」で研修。帰国後、渋谷区恵比寿のフレンチレストラン「ラブレー」に勤務、1994年より3年間シェフを務める。2000年7月に恵比寿にフレンチレストラン「サントゥール」を開店。後に「エムズキッチンサントゥール」と改め、2009年4月まで営業。現在は、麻布十番にて水島弘史の調理・料理研究所を主宰し、すべての料理に通じるプロのルールを伝えている