「PB=低品質」を変えたセブンプレミアムのブランド戦略

2007年の発売以来、累計販売額は10兆円となり、名実ともに国内ナンバーワンのPB(=プライベートブランド)として成長した「セブンプレミアム」。PBのパッケージに、ある文言を入れることで売上げがはね上がった西友。いまやPBに「安かろう、悪かろう」のイメージはありません。消費者の刷り込みを一変させた企業戦略を、ブランドコンサルタントの乙幡満男さんに教えてもらいます。

スーパーやコンビニのPB(=プライベートブランド)の商品は、「低価格の代名詞」「安物買いの銭失い」「安かろう、悪かろう」などと揶揄(やゆ)されていました。各社の企業努力により、品質はどんどん向上してきたのですが、お客さんにはそれがなかなか伝わらないという状況が続きました。

私も以前、メーカー品とPB商品のパッケージを隠して並べ、どこの商品かわからないようにして品質を調査する「ブラインドテスト」を行ったことが何度かあるのですが、結果は、メーカー品とPB商品が同等であることもあれば、PB商品が圧勝することもありました。PB商品の品質がメーカー品とほとんど変わらないということは、こういったテストでも証明されています。

それにもかかわらず、お客さんへのインタビュー調査では「メーカー品の方が、品質が良い」という意見が多かったのです。既に刷り込まれたイメージを変えることの大変さがわかりました。

また、まったく同じ商品を、Aはメーカー品、BはPB品ということにして、「どちらが美味しいか」というテストも行ったのですが、中身が同じであるにもかかわらず、「メーカー品のほうが美味しい」と言う人のほうが圧倒的に多い、という調査結果になることもありました。

つまり、PBにとっては、「いかに自社のPB商品の品質が良いというイメージをお客さんの頭の中に植えつけるか」が課題でした。

セブン&アイグループのPB「セブンプレミアム」は、当時ほとんどの日本のPBが安さを軸にし、デザインはメーカー品とそっくりなものや質感があまりないものが主流だったのに対して、著名クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏を起用し、シンプルさと気品のあるデザインにしたのです。

また、商品についても「PB=品質が良くない」と思われていた時代に「品質の良さ」という価値を前面に打ち出したことで、成功しました。

さらに「金の食パン」や「金のビーフシチュー」など、素材や美味しさにこだわったワンランク上の付加価値の高い商品も開発し、好評を博しました。通常のパンやビーフシチューと比較して値段が高いにもかかわらず、また「PB=安い」と思われていたにもかかわらず、売れているのです。

お客さんにとっての価値が何かがわかれば、決して難しいことではありません。その価値を高めていくのがブランディングです。価値を高めて打ち出し、その価値をお客さんが認めれば、金の食パンのように、高くてもたくさん売れるのです。

ブランドのポジションを変えた「セブンプレミアム」

ブランドのポジションを変えた「セブンプレミアム」

「二番煎じでも、利益が出ればよいのではないか」と考える人もいると思います。短期的に考えれば、利益は出せるのでいいのかもしれませんが、長期的に見れば、ブランド価値を築くことは難しいと考えるべきでしょう。

したがって、ポジショニングはお客さんの頭の中にないものに新しい何かを作り出すのではなく、「既にお客さんの頭にあるイメージを操作して、それを商品に結びつけること」がポイントになってきます。

西友のPBは「みなさまのお墨付き」

西友も以前は、「Great Value(グレートバリュー)」という、アメリカのウォルマートと同じ価格訴求のブランドを持っていました。パッケージデザインは白地に青文字で、低価格というイメージです。しかし、品質を訴求するブランドということを打ち出すべく「みなさまのお墨付き」を立ち上げたそうです。

「みなさまのお墨付き」は、読んで字のごとく、「みなさま=消費者」の「お墨付き=実際に試食したり試したりして良いと認めた」ブランドということになります。西友では、みなさまのお墨付きを発売するにあたり、全商品消費者テストを行い、お客さんの70%(2019年10月以降80%)が支持した商品のみを発売しました。

すると、パッケージデザインを変えただけなのに売上が1・5倍に伸びた商品もあったそうです。いかにお客さんに対して上手に伝えることが重要か、これでわかるでしょう。

「PBの品質の良さ」を伝えることによって、それまでの「PBは低価格で品質は良くない」というポジションから、「気軽に使えて、品質が良いことがわかりやすい」というポジションを取ることに成功したのです。

つまり、ブランドにおいて、実際に品質が優れていることよりも(もちろん品質が優れていることは重要なのですが)、お客さんが「品質が良い」と頭の中で認識してくれること(これを「知覚品質」と呼びます)が大切なのです

ブランドは、お客さんの頭の中に焼き付けるものです。人間の記憶には限りがあり、ブランドを覚えていられるとしたら1カテゴリーにつき1つくらいでしょう。

であれば、他のブランドに似せることはナンセンス。確固たるブランドの「目指す姿」があるかどうかで、個性の出し方、ひいてはブランドの価値も変わってくるのです。

 

 

PROFILE
乙幡満男

1974年生まれ。株式会社ブランドテーラー代表取締役。日本マーケティング学会会員。日本ブランド経営学会会員。 大学卒業後、メーカーにて商品開発を担当。数多くのヒット商品を世に出し、特許も取得。米国クレアモント大学院大学ドラッカースクール卒業(MBA)ののち、米系コンサルティング会社で、イオンのPBのブランディングに従事。 2014年マツモトキヨシに入社。同社のPB「matsukiyo」など新しくブランドを立ち上げた。ブランド全体の売上・利益向上に貢献し、世界最大手のブランドコンサルティング会社が主催する「Japan Branding Awards 2018」最高賞受賞に導いた。 2018年にブランド開発及び商品開発のコンサルティング会社を創業し、現在、大手流通やメーカーなど様々な企業のブランドコンサルタントとして活動中。

ブランディングが9割

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  • 作者:乙幡 満男
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