信州大学経営大学院特任教授
3つの資産運用のうち初心者がやっていいのはひとつだけ
大前提として、投資初心者や老後資金づくりを考えている人ほど「長期・分散・積立」投資をおすすめします。
投資には株式の信用取引やFXなど超短期で行う「投機」、短期での株式や投信を行う「短期投資」、投資信託で長期・分散積立を行う「年金作りの資産運用」の3つがあります。
はっきり言わせていただきますが、今、日本の証券会社や銀行が顧客に行うアドバイスのほとんどは、投資というよりは「投機」に近く、私は本物の投資ではないと考えています。
来年、どこの市場が上がるか、今が絶好の買い時とかいった売買タイミングを当てにいくような短期投資も、投資というよりギャンブルに近い行為です。
ですから経済知識ゼロの人は、インデックス・ファンドを使って上図の「長期・分散・積立」投資を実践すること。これだけ知っていれば大丈夫です。
インデックスとは「指数」という意味で、インデックス・ファンドは、その指数に連動して価格が動くように作られた投資信託ということです。
インデックス・ファンドなら「長期・分散・積立」を1本で実現
投資初心者に「外国株式インデックス・ファンド」をおすすめする理由を説明しましょう。「外国株式インデックス・ファンド」は先進国22か国に分散投資されているので、これを長期にわたってコツコツと購入する積立投資を行えば、「長期・分散・積立」投資がたった1つのファンドで可能になる。これが最大の理由です。
外国株式インデックスの国別組み入れ株構成比率。米国株が投資の中心になっている
外国株式インデックスの組み入れ上位10銘柄。有名IT企業へ自動的に投資できる
日本人だからといって、必ずしも日本株式インデックス・ファンドを買う必要はありません。日本株だけでは「分散」投資になりませんから。
論より証拠。外国株式インデックスのチャートを見てみましょう。
これは1970年から2018年までの長期間のチャートですが、世界全体(先進国)の株式市場は、長期的には上がっているのがわかります。外国株式インデックスは、こ49年間で年率平均7.6%の上昇率。ということは、投資額が10年で2倍以上になるということです。
世界経済は、日本のように一部には成長が停滞している国もあれば、2008年のリーマンショックの時のように一定期間に世界全体が不調に陥ることもあります。でも、全体で長期的に見れば世界経済は一定の成長を続けてきましたし、これからも成長が期待できます。
外国株式インデックスに投資する人は、そうした世界全体の長期的成長の結果として、成長の果実を受け取ることができるということです。
その投資法も、基本的には毎月定額の資金が自動的に投入される積立投資。いわゆる“ほったらかし”での投資になります。たまに株式市場の急騰や暴落が話題になりますが、特に気にする必要はありません。
積立投資では、株式市場が低迷しているときは自動的に多くの株数を買うことになるので、市場が回復すればその分の利益を手にすることができます。
30年後、新興国は先進国を逆転する
日本に確定拠出年金が導入された2001年以降、「数ある投資信託の中から何を選べばいいんだ?」という質問が多く寄せられました。
私の答えはシンプルに、「外国株式50%+新興国株式50%」でした。
外国株式インデックスが先進国の株式をバランスよく組み込んでいるのに対して、新興国株式インデックスは、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)、フィリピン、インドネシア、タイ、韓国、台湾、そのほか中南米、東ヨーロッパなど、今伸び盛りの23か国の株式を組み込んでいます。
国連関連機関の予測で、2050年における世界のGDPを国・地域別で比較したものを見ると、現在の「先進国:新興国=6:4」が2050年には「3:7」となり、大逆転が起こります。
つまり、長期での投資を行って世界の成長を逃さないようにしたいなら、新興国にも投資しておく必要があるのです。
日本だけに投資するのはリスクがある
国内の情報についてはほかの国の情報よりも多く詳しく入ってくるため、日本人の方にどこに投資をしたいかと聞くと、日本の企業が中心になってしまいます。しかし、現実的に考えると、長期の投資先として考えた場合、将来的な日本経済の実力はそんなに高くないことを覚えておきましょう。
「先進国+新興国の株式インデックスファンド」に投資をすれば、世界でよほどのことが起こらない限り手堅く成長を取り込めます。iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAなどの制度も用意されているので、「もう遅い」などと考えず、投資への一歩を踏み出してみてください。
1958年東京生まれ。オンライン金融ビジネススクール「上地ゼミ」主催者、一般向けには同じくオンラインで学べる「アール宅配便」を通じて長期国際分散投資の啓蒙活動を行う。また、信州大学経営大学院特任教授としてファイナンス科目を担当。早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了、米国モルガン・スタンレー証券にトレーダーとして入社。1998年、日本初の投資信託専門証券会社の設立に参画、同社にて専務取締役。その後、米国大手資産運用会社にてアドバイザーを歴任。『ダマされたくない人の資産運用術』(小社刊)のほか著書・論文多数。2014年、大阪銀行 協会より論文『銀行の投資信託販売と投資家の行動バイアス』で優秀賞を受賞。2016年、『年金民営化の経済分析』で特別賞受賞。