「ウチの子もしかして発達障害?」親が絶対にしてはいけないこと

絶対に認めない親もいる

「コミュニケーションに問題を抱えがち」「独自のこだわりがある」などの症状があるASD(自閉症スペクトラム障害)や、「多動・衝動性」「不注意」をおもな症状とするADHD(注意欠如多動性障害)。これらの総称である「発達障害」は、生まれつきのものです。

個人の特性と言うべき部分も少なくありません。薬を飲んだから、あるいは大人になったからといって、その特性が消えるわけではないのです。

そこで大切なのは、本人が自分の特性を理解して、学校や職場、家庭などで問題が起こらないように対応策を考えること。周囲の人も、発達障害の当事者のできること・できないことを理解し、特性を活かせるよう協力するのが理想です。

しかし、現実には難しいことが少なくありません。

当事者のもっとも身近な支えになるべき家族でさえ、発達障害を理解できるとは限りません。むしろ「まさかウチの子が発達障害のはずがない」という思い込みから、発達障害そのものを否定してかかることもあります。

診察室でも「ウチの子にそんな障害があるわけがない! 正常なことを証明しろ!」と親が診断を拒否することや、「こんな薬を飲ませてどういうつもりだ!」と怒りをぶつけてくることがあります。

どちらも親が「子どもが発達障害を持っている」という事実を頭から否定しているのです。ある家族は、「ウチの家系から精神科に通うような人間が出るわけがない」と堂々と主張していました。

むしろ、当事者のほうが冷静です。病院を受診する前から、本やネットで発達障害について調べて知識を蓄えており、「自分はこういう特性があるようですが、どうでしょうか」と、自分で診断を付けてくるケースが珍しくありません。

発達障害は障害者か、健常者か

周囲の無理解の背後には、精神疾患全般に対するタブー視もありそうです。

ある方は夫に発達障害を打ち明けたとき、「気持ちわりぃ」と言われたそうです。精神疾患を何か「汚らわしいもの」とさえ感じ、全否定してかかる人は確かに存在しています。それは、「発達障害はまれなもの、自分とは無縁のもの」という大きな誤解のせいかもしれません。

事実は正反対です。むしろ、発達障害はまったく珍しくない疾患であり、また誰しも発達障害になる遺伝子を持っているとさえ言えます。発達障害を全否定する姿勢は完全な誤りです。

ADHDの特性を持っている人は、人口の5%ほどだと言われていますし、日本だけでも少なくとも500万人以上いると推定されます。

さらに、ADHDという診断に至らないだけで、ADHD的な特性によって日常生活に支障をきたしている「境界域(いわゆるグレーゾーン)」の人を含めれば、もっと多いはずです。濃淡はあっても、かなり多くの人が発達障害的な特性を持っているのです。

学校で「発達センター」を勧められたら

小学校の先生が、子どもの立ち居振る舞いから、発達障害の疑いを持つことがあります。そんなとき、「発達センター」、「子ども発達センター」などに行くよう、勧められるかもしれません。

その場合、おそらく教師はかなりの確信を持っています。「疑い」程度では「うちの子が発達障害のはずがない」と、親が反発するからです。また統計上も、1クラスに30人いれば、1〜3人が発達障害を抱えていても、不思議ではありません。

発達センターは、言葉や行動、情緒などの発達に心配のある子どもを支援する施設です。医療機関ではなく、行うのは相談と検査です。

例えば、山梨県の「こころの発達総合支援センター」は、センターの目的を次のように示しています。

「……子どもの心の健康や発達障害に関わる問題に的確に対応するため、児童思春期に特有な心の病を持つ子どもや心的外傷を抱えてしまう被虐待児、早期に発見されにくく適切な支援を受けられないため不適応状況に陥りやすい発達障害児者に対して、診断・治療等のクリニック機能や相談・支援体制の充実を図るとともに、発達障害児者の療育について地域の関係機関と連携した地域支援システムを構築します」

小学生の段階だと、まず知能検査が行われます。知的障害があった場合、通常の学級が適切かなどを見て、その子に合った学習環境を案内するためです。もっとも、ここでの判定には強制力はなく、アドバイスにとどまります。

発達障害の疑いがある場合は、医療機関を紹介してもらえます。その他、言葉の遅れがある子には「ことばの教室」に導入したり、言語聴覚士による療育の機会を設けたりしてくれます。

発達障害にもよく見られる、「集団行動が苦手」な子どものために、小さいグループを作り、遊びながら人に慣れさせる訓練をするところもあります。こうした発達センターの支援内容は、自治体によりさまざまです。

診断が付いたら学校に相談

病院などで発達障害の診断が付いたら、学校には伝える必要があります。学校にスクールカウンセラーが在籍する場合もありますし、その学校にいなかったとしても、定期的に近隣校のスクールカウンセラーが来て、相談できる環境にあることが多いと思います。

ただし、スクールカウンセラーが発達障害の知識をしっかりと備えているかどうかは、わかりません。またどれくらいの個別の配慮が望めるかは、学校によって異なります。

しかし、一定のプラスの効果は期待してもいいと思います。例えば、ADHDや学習障害の場合、試験時間を若干延ばしてもらうことなどが行われています。

私が見聞きした範囲でも、病院からの診断書があるだけで、さまざまなルールをゆるくしてくれる場合があります。

例えば、学校に診断書を提出することで、遅刻や欠席が多くて退学処分になるところを大目に見てくれた、出席日数が足りず進級できないところをレポート提出で許してもらった、などです。

大学生の場合でも、保健管理センターに相談すると、講義をすべて録音したり録画したりする許可をもらえるなど、さまざまなことが可能になる例がありました。保健管理センターの心理相談員が、担当の教官との橋渡しをしてくれることが多いと思います。

本人の理解より「問題解決」を

小学校低学年では、本人が発達障害について理解するのは難しいでしょう。多少なりとも認識するのは、早くても小学校高学年からだと思います。

親が子供に説明するにしても、「発達障害」という言葉を使う必要はないと思います。発達「障害」という言葉のインパクトが強すぎるからです。本人も拒否反応を示し、自分が発達障害だと認めたがらないかもしれません。

「あなたにはこういう特性があって、他の人とこんなふうに違うから、こんな場面ではこう気をつけたほうがいい」というように、日常のトラブルについて解決していく具体的な話し合いをするのがいいと思います。

発達障害そのものの理解より、問題解決を優先しましょう。

親は叱るより「離れる」

私がいつも発達障害のあるお子さんを持つご家族にアドバイスしているのは、「無理に子供の行動を直そうとしない」ことです。

一度は注意することが必要です。でも、その後も問題行動が続くようなら、いったんは子供から離れるように指示します。家族との関係性を悪くしないことが、一番だからです。

同じ注意や叱責が何度も続けば、相手も反論してくるでしょうし、やがて感情的になって、お互いに罵声を浴びせ合うことになりかねません。毎日顔を合わせる家族とそんなことをしていたら、誰だってイヤになります。

しかし、これが実によくあるパターンなのです。

「なんとか子供の問題を解決したい」という親心があるのはわかります。でも、口で注意して行動が変わるぐらいなら、とっくに解決しているはずです。注意することがそのまま感情をぶつけ合うことになってしまうのでは、親子関係を悪化させるだけです。

例えば、買い物依存症を治すよう注意をしたとします。治ったように見えることもあるかもしれません。でも現実には、家族から隠れたところでいくらでも買い物は続けられますし、カードローンだって借りられます。親の金を盗む例もありました。

最終的には、本人が「これはまずい」と自覚して、自分から「変わろう」と思わない限り、本人の行動は変わりません。

親が援助する姿勢は大切ですが、同時に「家族が口で言っても、簡単には変わらない」ことは認識しなければいけません。家族にできないからこそ、病院など他のアプローチが用意されている、と考えてください。

実はASDやADHDの治療をきちんとすることによって、さまざまな問題行動が少なくなっていくことは珍しくないのです。

そして一番避けたいのは、繰り返しになりますが、家族間の関係が悪くなることです。

病院で治療をするにしても、家族との関係が良好のほうが、問題の解決につながりやすいことは明らかです。口ゲンカばかりしていたら、治療の相談もできませんから。

 

 

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PROFILE
岩波明

昭和大学医学部精神医学講座主任教授(医学博士)。1959年、神奈川県生まれ。東京大学医学部卒業後、都立松沢病院などで臨床経験を積む。東京大学医学部精神医学教室助教授、埼玉医科大学准教授などを経て、2012年より現職。2015年より昭和大学附属烏山病院長を兼任、ADHD専門外来を担当。精神疾患の認知機能障害、発達障害の臨床研究などを主な研究分野としている。著書に『他人を非難してばかりいる人たち』(幻冬舎新書)、『精神鑑定はなぜ間違えるのか?』(光文社新書)等がある。