「何で普通にできないの?」は“発達女子”には暴力です!

イラスト・沖田×華

嫌われまくっても「?」だった子供時代

岩波 発達障害によくある周囲とのコミュニケーションギャップには、いつ頃気がつきましたか。

沖田 小中学校の頃からです。あまりにスゴすぎたせいで、今まで同窓会に一度も呼ばれたことがないぐらい。小中は共学、高校は女子校だったんですけど、本当に嫌われまくってました。

小学校で女子どうし「〇〇くんが好き」って話になりますよね。それを相手の男の子に言ってしまうんですよ。「〇〇ちゃんが好きなんだって」とか。そうやってことごとく関係を壊していくから、ラブラブクラッシャーって言われてた。

岩波 きっと、沖田さんには悪気はないんですよね。

沖田 「好きだってみんなにわかってもらったほうが動きやすくない?」みたいな。男の子に「俺、別にあいつのこと好きじゃないんだけど」と言われたら、それも女の子に伝えてしまって「なんでそんなこと言うの!?」って怒られる。

それで、その子の友達まで巻き込んでいく。

岩波 沖田さんの漫画にありましたね。女子全員に囲まれたって。

沖田 定型の人(発達障害でない人)は、私に言っても話が通じないので、第三者に介入してもらうんです。「こういうことされてすごいムカつくんだけど、沖田はわかってくれないの。どうしたらいい?」って相談する。私は裏に呼ばれて、全員からバッシングです。「昨日の、なんなのよ」って。

でも宿題も毎日忘れるような私が、そんな言葉の端々を覚えてるわけがない。「好きって言ったの、なんでバラすの?」って詰め寄られるけど、それは「内緒にして」って言われなかったから。

普通、小学生になればわかるんですよね。ヒソヒソ話で「誰々くんが好き」と話をされたら、内緒にするんだって。でも私はすぐ政治家の演説みたいに「この子は〇〇くんが好きだそうです!」と言いふらしていた。

人の話を聞けない「ちくわ耳」

岩波 そういういざこざはあったにせよ、友達関係は充実していたと聞きました。

沖田 それが最近わかってショックを受けたんですけど、私から見た親友と、親友から見た私は、とらえ方がまったく違っていたんです。

6歳からずっと、35年来の親友にミッチという子がいます。

ミッチは私との出会いをよく覚えてる。入学式の日に私、タイツも上履きも忘れてきて、スリッパでペタペタ歩いてたんですね。教室で私を見た瞬間にミッチは、「他の子と明らかに違うヤツがいる」と思ったって。で、目が合った。

私、目が合うとロックオンする癖があって。私より気が弱そうで、なんでも私の言うことを聞いてくれそうなタイプを見つけるんです。それがミッチ。

そのとき私、初対面だから何か面白いことやらなきゃと思ったんですね。私は全然覚えてないんですけど、ミッチが言うには「あんたね、『オレたちひょうきん族』の明石家さんまのモノマネしながら近づいてきたよ」。「知っとるけ〜のケ!」ってやつです。

それがあまりにも怖くて、ミッチは固まっちゃった。そのまま私に捕まって、小中高ずっと離れられなかったんです。私は、いつも一緒に帰ってくれていい子だなぁと思ってたんですけど。

岩波 ミッチは沖田さんに心理的束縛をされていた(笑)。

沖田 そう。私は「友達は、この子しかいらない」って思ってました。ミッチは頭が良かったのに、私のルーティンに合わせているうちに、どんどん頭悪くなっちゃった。

100回ぐらい、私のこと嫌いだって言ったらしいんです。面と向かって「嫌い! 絶交!」って。でも私は「あ、そう。そういえば昨日、駄菓子屋でうまい棒がね」と、まったく話が通じない。ちくわ耳なんです。「私はミッチ好きだよ。嫌いじゃないよ」とか言って終わらせてしまっていた。

ただ、ミッチは特殊な友達です。今でも会いたいと思ったときに必ず会えるんです。ミッチはスピリチュアルが好きで、前世からつながってるとかワケわからないこと言ってますけど。元看護師の同僚とミッチだけです、今でもつきあってるのは。

岩波 ミッチさん以外のクラスメイトとは、どんな関わりを?

沖田 嫌いな友達はたくさんいました。でも友達って、何をどうしたら友達なのか、長年わからなかった。

岩波 小学1〜4年ぐらいまでは一緒に遊んだり、家を行き来したり、それぐらいの関係が一般的な「友達」だと思うんですが。

沖田 友達の家に行っても友達と遊ばないで、漫画見ちゃうんです。部屋で、『ドラえもん』を見つけたら、そればっかり読んじゃう。友達がゲームしてるときも、ずっと本を読んでました。私は遊びに参加しているつもりなんですけど、いつもひとりで勝手なことをしていた。だから友達も「バッカちゃんを呼んでも私と遊んでくれない」と。

最悪、友達の兄弟の部屋にまで入り込んで漫画読んじゃうんです。するとお兄ちゃんからクレームが来てしまう。

で、ある日友達終了の日がある。「もう遊びに来ないで」と言い渡される。

それでも行くんです。その子が居留守を使っても、勝手に家に入っちゃう。日曜日の朝10時にこの子の家に行く、というのをルーティンにしていたら、その子がいないとわかっていても行きます。

この子んち行く、いない。この子んち行く、いない。そういうのを3軒ぐらい繰り返してから、公園に行きます。公園でもルーティンの遊びがあって、遊具をひとつずつやります。

そこから本屋で立ち読みです。昔はお店もユルかったんで2時間ぐらい時間潰して。

とにかく本の虫でした。

友達に言われたこと、先生に言われたこと、耳からの情報があまりにも入らない。でも字だったらわかるんです。字とか自分の好きな話なら。

いじめられてるのに、わからない

岩波 クラスメイトとは、あんまりコミュニケーションを取れてなかったのかな。

沖田 そうですね。ひとりで図書室に行ってました。私的には充実してるんですけど、まわりからすると、いつもいない。沖田はいつもどっか行ってるという。

岩波 積極的に排除されたり、いじめられたりもなかった?

沖田 いじめだとわからなったんです。遊んでくれてるんだ、かまってくれてるんだと思ってた。陰口はさんざん言われてたんだけど。

岩波 仲間外れみたいにして情報を教えないとか、集団から排除するようなことでしょうか?

沖田 ぼっちはありましたけど、全然傷つかなかった。クラスの中でだけは仲良くしなきゃと思うけど、クラスから外へ出てしまうと、友達というカテゴリーに入らない。小学校1年生のときは、この子たちに帰る家があることも知らなかったです。いつも学校で会うから、学校にだけいる存在だと思っていた。ある意味「黒板消し」みたいな存在というか。

だから教室でいじめに遭ったときは、逃げる場所を作ってました。すみっこにいると落ち着くんです。音楽室だったらグランドピアノの下とか、ひとりになりたいことがよくありました。

「沖田はたまにいなくなる」

岩波 ひとりになりたくて、ふっといなくなる。

沖田 責められると、言葉が出てこなくなるんです。

小学校3年生のときに緘黙(かんもく)症になったことがあります。1対1でしゃべられると体が固まって言葉が出てこなくなる。頭の中では謝らなきゃとか、いろいろ考えてるんですけど。

岩波 それは、「カタトニア」と呼ばれています。

統合失調症に出現する「緊張病」と似ていますが異なるもので、ASDの方に見られることがあります。静止したまま、コチーンとまったく動かなくなってしまい、30分以上もそのままの姿勢でいることもあります。

沖田 そう。いきなり石になってしまう感じ。

私が何も反応しないでいると、相手がどんどんヒートアップしてくるんですよ。私は表情に出ないだけで内心はどうしよう、どうしようって焦りまくってる。まずい、まずい、ここでしゃべらないと先生が怒る。親が怒る。

最終的にはボコボコにされて泣くんです。一応泣いて気持ちが切り替わると、ちょっと言葉が出るようになります。だから、先生も手が出るようになっちゃうんですね。

緘黙の治し方ってないんですか?

岩波 緘黙まで行ってしまうと、対応が難しいですよね。周囲が一所懸命働きかけたり、怒ったりしても、逆効果で。むしろいったん場所を変えないといけない。

沖田 そのままリアカーに乗せられて、一番落ち着く場所だった図書室に置いてきてもらうのがいいです(笑)。

岩波 そう、保健室かどこかにちょっと放置してあげて、「ゆっくりしてください」というふうにしないとダメでしょうね。

緘黙というのは、本人の頭の中がフリーズしている状態です。

でもまわりにはわからない。まず、そういう現象があることを、教師が知ることが必要ですね。知らないと、反抗してだんまりを決め込んでいると思って、自分がバカにされてるようでイライラしてしまうことになります。

沖田 私は普段よくしゃべるだけに、不利になるからわざとしゃべらないんだろう、と見られていました。

上着を着るとランドセルを忘れる

岩波 でも、沖田さんは基本的にすごく目立っていたと思います。教室にいなければいないことで、また目立ったはずです。

沖田 先生が対処できないというか。まったく言うことを聞かないので、小学校1年のときに「耳の検査をしてくだい」と言われました。

2学期の三者面談では「精神病院に行ってください。この子は精神薄弱者です」。母が、そこまで自分の娘は小学校に適応できていないのかと、すごくショックを受けてました。

岩波 授業中に、席を離れてフラフラ歩き回ってしまったりしたことは?

沖田 逆にボーッとしてましたね。音がうるさすぎて、違うことばっかり考えちゃう。

岩波 発達障害のお子さんだと、立ち歩かないまでも、体をゆすったり、椅子をガタガタ傾かせたりしていることがよくあります。手遊びも多いです。

沖田 私は机に落書き派でした。塾でもずっと落書きばっかり。漫画のキャラクターみたいな、エロ漫画の裸です。

岩波 ボーッとしていることに対して、小学校の先生は注意しなかった?

沖田 文房具箱とかお道具箱というのがまったく理解できなくて、何のためにあるのかわからなかった。本当は図工の時間に使ったりするんですけど、「これは私の物なんだ」と思って家用にしちゃったんです。

学校に持ってこないから、友達が代わりのものをくれたことがあります。やったーって喜んでいたら先生に取り上げられた。

「自分の文房具箱があるでしょ? それを持ってきたらいいのよ。なんでお友達のお小遣いで買ってもらおうとするの? 変でしょう?」

でも私は、「だってあのお道具箱は私の物なんですよね。だから、どう使ってもいいんですよね?」。

先生もそれで、この子変だと思ったらしいです。自分の物に異常なこだわりがあって、絶対にうんと言わない、言うことを聞かない特徴があると。

岩波 忘れ物も多かったんですよね。

沖田 宿題を忘れるし、物もなくしました。冬はランドセル。

よいしょって上着を着たら、ランドセルのことを忘れちゃう。

岩波 ランドセルを忘れることは、他の人でもしばしばあるようです。学校に着いてから気がついたという人もいました。

ランドセルを忘れる子ども

沖田 ランドセルに慣れると、今度はランドセル以外の物が持てなくなる。手て提さげ袋を置いてきちゃうんです、両手が自由になってないとイヤだから。傘もしょっちゅう忘れたし。靴もなぜかよくなくしてました。でも銭湯に行くセットはカゴに全部収まるので、それは忘れない。

岩波 必需品セットは忘れないようにまとめておく。これはうまい対策です。

沖田 夏休みの宿題でも注意されたことがあります。

苦情が来たのが、カボチャをくり抜いて作った虫かご。「これならエサいらず! すごくない?」と思って学校に持って行ったんです。でも腐って臭くなるじゃないですか。それを先生が処分しようとしたら、私は「捨てないで!!」って大騒ぎ。先生3人がかりで押さえつけられました。

あと、友達とのトラブルで問題になったのは、後ろから肩を叩かれると反射的に叩き返してしまうこと。

岩波 軽くポン、という程度でも? 一種の感覚過敏かもしれませんね。

沖田 犬がびっくりしてかむみたいに、手が出てた時期があります。先生にめちゃくちゃ怒られてなくなったんですけど。見えない所から急に出てくるとびっくりする。テレビのドッキリとかすごい嫌いで傷つくんで、見るのやめたりしてました。

第一印象で死ぬほど嫌われる

岩波 クラスでは、よくしゃべるほうだったんですか?

沖田 すごいしゃべるんですけど、自分の好きなことをしゃべってるだけです。

岩波 コミュニケーションは取れていない。

沖田 「ねえ聞いてよ!」って押しつける。相手の話を聞いてた記憶がまったくないです。

岩波 自分のコミュニケーションの取り方は良くないと思ったのは、20代になってからですか?

沖田 そうですね。漫画家になってからです。

岩波 編集者とのやりとりが大変だったと聞きました。

沖田 同業者どうしも難しいです。いつの間にか嫌われてる。

うちの旦那も同業者なんで「この人に口きいてもらえなくなったんだけど、なんでかな」と相談して、何を話したかおさらいするんです。すると、そりゃ怒るよね、というところが見つかる。

岩波 言いすぎることがあるんでしょうか。相手にとって「痛い」言葉で指摘してしまうとか。

沖田 ありますね。言ってはいけないことを無意識に言ってしまう。今はないですけど。

マイマニュアル

岩波 最近は、かなり自分をコントロールしようという気持ちになっているようですね。

沖田 何年か前に「メルトダウン」(精神的に追い詰められ、ストレスが極限に達した発達障害当事者の身に起こる、強いパニック症状のこと)を起こしてから少し性格が変わって、テンションの上がり方がゆっくりになった気がします。

昔はスイッチが入るとガッと怒ったり、グワーッと笑ったり、感情の起伏がものすごく激しかったんです。しゃべるとどうしてもテンションが高くなってしまうので、言っちゃいけないレベルまですぐ到達して、第一印象で死ぬほど嫌われる(笑)。

しゃべってる最中から「なんか変なこと言ってるな」とは思います。相手の表情を見てても、それはわかるんです。

でも自分の言いたいことは全部言わないと、次の話題に行けないから。やめられないんです。ダーッと早口でしゃべって、ハイ私の話終わり、みたいな。

岩波 抑制できずに、すべて言い切っちゃうんですね。

沖田 今はほとんどトラブルはないですが、20代はとにかくぶつかりまくってて。

岩波 発達障害のある人だけではないですが、自覚してかなり抑制する人もいるし、いくつになってもガンガン言う人もいます。

「犯罪者になりそうなヤツ・ナンバーワン」

岩波 周囲に「わかってほしいな」と思っていたことはありますか。

沖田 ひとりになりたいときが一日に何回かあって、そのことで怒られていました。

時間の感覚もよくわからない。昼休みが終わったのに戻ってこないとか、課外授業で外に行ったら必ず迷子になるとか。でも、わざとじゃないんです。

私的には「何時には、ここにいる」っていうルールがあるだけで。それを知ってほしかったかな。

まわりはしょっちゅう行方不明だと騒いでるけど、私はここにいるので、という感じで。

岩波 発達障害に理解のある先生はいましたか?

沖田 理解はできなかったんだけど、「この子はこういう子なんだ」とわかってくれた先生が高校にいました。数学が、何回補習しても0点になってしまう。そしたら先生に「囲碁につきあいなさい」と言われて、囲碁を5回やったら留年を勘弁してくれました。

そのとき先生が「努力してるけどできないんだってことがわかりました」と。サボってるわけじゃないとわかってくれただけでも万々歳だった。

岩波 教師は疑っていたんでしょうね。全体の点が悪いならしょうがないけど、特定の科目だけガクンと悪いのは、そこだけ手を抜いてるんじゃないかと。

沖田 数学が壊滅的にダメでした。私がひねくれていたせいもあって、「因数分解を必要とする会社ってありますか?」とか言って、ムダに先生を逆上させるんです。

小学生の頃もさんざんそういうこと言うから、先生の手が出ました。頭悪いくせに生意気なことばっかり言って、ちっとも言うこと聞かない。

家庭教師は泣かすし、塾は5回クビになりました。隣の子に話しかけてばかりいるから。

習字教室ではずっと漫画を読んでました。先生に怒られたら「ここに漫画があるからいけないんです、ここに本棚があるからいけないんです」と、全部人のせいにした(笑)。性格が良くなかったです。怒られても素直にごめんなさいと言わないばかりか、大人をやり込めてましたから。

岩波 それも、自然に出ちゃった反応ですよね。

沖田 女子どうしのトラブルも、私は悪くないというスタンスですから。これじゃあ友達いなくなりますよね。

友達になるのは、ミッチみたいな、私の話をちょっと聞いてくれる、優しい子だけ。

笑っちゃうのが、卒業文集のアンケートです。私のアンケートは本当に悲惨で「将来ホームレスになる人ナンバーワン」とか書かれてました。

風呂に入るのを忘れていつも汚いし、存在を忘れられている。「将来犯罪者になりそうな人ナンバーワン」とも書かれたんですが、それ見て私、笑ってました、アハハハハって。すごいディスられてるのに、それも笑えてしょうがない。

 

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PROFILE
沖田×華

富山県出身。1979年2月2日生まれ。小学4年生のときに、医師よりLD(学習障害)とADHD(注意欠如多動性障害)、中学生のときにはアスペルガー症候群と診断される。看護師として勤務していた頃、周囲、特に看護師同士のコミュニケーションが困難を極め、自殺未遂を経験する。2008年、漫画家デビュー。2018年、『透明なゆりかご』(講談社)で第42回講談社漫画賞(少女部門)を受賞。同年にドラマ化され、文化庁芸術祭のテレビ・ドラマ部門で大賞受賞。主な作品に『毎日やらかしてます。』(ぶんか社)、『お別れホスピタル』(小学館)などがある。NHK「あさイチ」、同「発達障害ってなんだろうスペシャル」等、メディアにたびたび出演している。

PROFILE
岩波明

昭和大学医学部精神医学講座主任教授(医学博士)。1959年、神奈川県生まれ。東京大学医学部卒業後、都立松沢病院などで臨床経験を積む。東京大学医学部精神医学教室助教授、埼玉医科大学准教授などを経て、2012年より現職。2015年より昭和大学附属烏山病院長を兼任、ADHD専門外来を担当。精神疾患の認知機能障害、発達障害の臨床研究などを主な研究分野としている。著書に『他人を非難してばかりいる人たち』(幻冬舎新書)、『精神鑑定はなぜ間違えるのか?』(光文社新書)等がある。