脳医学者が発見! 日本人がいつまでたっても英語ができない理由

30歳を過ぎてから本気で英語を習得しようと思い立った脳医学者の瀧靖之先生。16万人の脳画像を見てきた経験をもとに、日本人に適した英語習得法を模索してきました。「脳のしくみ」を活かした英語の習得法とは? あなたが英語を話せない原因は、脳の使い方にあるようです。

「なぜ英語を身につけたいか」を思い出す

英語を学び直そうとするとき、中学英語まで戻るという人がよくいらっしゃいます。中学校の教科書を読んだり、参考書にある文法事項から復習しようというのです。確かに、そうした方法もありますが、あまり効率的ではないというのが私の考えです。

一般に、英語の勉強の種類を大きく分けると、次の5つになるかと思います。

・単語力をつける

・読む力をつける(リーディング)

・書く力をつける(ライティング)

・聴く力をつける(リスニング)

・話す力をつける(スピーキング)

おそらく大半の人が中学校や高校で英語を学んできたのは、この順序だと思います。単語を覚えつつ、リーディングが中心の授業だったことでしょう。私のように、リスニングやスピーキングをしっかり学ぶ機会がないまま、高校や大学を卒業してしまった人も多いかと思います。

それに対して、大人の英語習得はどのような順序で手をつけていけばよいのでしょうか。なぜ大人になって英語を学び直すのか、その目的をもう一度確認してみましょう。それは、単に試験でいい点数を取るためではなく、外国人と話してみたい、海外旅行を楽しみたい、世界を舞台にして仕事をしてみたいというものではありませんでしたか。

つまり、英語をツールとして、さまざまな人とコミュニケーションをしたいということだったはずです。そのために磨くべき能力は、いかに相手の英語を間違いなく聴いて、いかに自分の思っていることを正確に伝えるかという実践的なコミュニケーション力です。

私の考えでは、もっとも効率がいいのは次に示した順序です。①〜④の順に学びつつ、それにプラスして単語をコンスタントに覚えていくというものです。

①聴く力をつける(リスニング)

②話す力をつける(スピーキング)

③読む力をつける(リーディング)

④書く力をつける(ライティング)

+単語力

なぜこのような順番がいいかというと、理由は2つあります。

1つは、ネイティブの子どもが言葉を身につけていく過程をたどることが、ものごとに対する習得過程として自然であると考えるからです。

もう1つは、英語をコミュニケーションの手段として考えるときに大切なのは、相手と意思を疎通させること。そうなると、おのずから大事になるのは、聴く力と話す力になってきます。その2つの力を身につけるために、まずはリスニングとスピーキングに取り組むことが効率的なのです。

単語を覚えれば英語力が上がるという誤解

最初から英語を話せるという日本人はいません。まずは模倣からはじめればいいのです。

実は、脳というのは、何かを真似することにたけています。興味深いことに、私たち人間を含めた霊長類の脳には、模倣に特化した働きを持つ神経細胞があるのです。

そうした神経細胞のことは、鏡に映すように相手の真似をするという意味を込めて、「ミラーニューロン」と呼ばれています。ただし、ミラーニューロンは単一の神経細胞を指すのではなく、いくつかの脳の領域が関係していると考えられています。

具体的にいうと、前頭葉にある下前頭回と運動前野、側頭葉と頭頂葉ようのあいだにある側頭頭頂接合部などの領域が協調して、模倣にかかわっているといわれています。

ですから脳のしくみからみてみると、日本人の英語の発音がよくないのは、つづりを先に覚えて、それから発音を覚えるという順序で英語を勉強しているからだと私は考えています。

「This is a pen.」という文を教科書で見ると、単語を一つずつ区切って、まず意味をとらえようとするわけです。「This」が「これ」という意味で、「is」は「……です」という意味で、「a」は「1本の」という覚え方をするので、「ディス イズ ア ペン」のようなぎこちない発音になってしまうのです。

私も学生時代はそう覚えていました。そして、その調子で何年も勉強して単語の数を増やしていけば、英語が上手になると思っていたのです。

しかし、そのやり方では、ついに「英語でコミュニケーションがとれる」というレベルには到達しませんでした。正直なところ、文字を覚えて、それから発音を覚えるというやり方を100年続けても、英語がうまくなることは困難です。そこが、多くの日本人の一番の誤解だと思います。

 

聞こえたままのカタカナで覚えてしまう!

では、リスニングの技術をどうやってアップすればよいかというと、「文字→発音」ではなく、「発音→文字」の順に覚えるようにするのです。聞こえたままにカタカナで暗記する方法です。

たとえば、「ピーナッツバター」ならば「ピナバラ」と聞こえるのですから、そう覚えてしまえばいいだけのこと。金属の「nickel」は誰も「ニッケル」とは言わずに、「ネコー」のように発音します。それならば、そう覚えたほうが早いと思いませんか。

「your apple」は、文字を先に覚えるから、「ユア アップル」と発音してしまい、通じないのです。聞いたまま「ヨー アポー」と覚えたほうが、ネイティブには通じます。

実際に、明治時代の日本人は、そうやって英語を覚えていたようです。木綿の「cotton」は、「コットン」ではなく「カタン」と覚えていました。だから、今でも手芸の世界では「カタン糸」という言い方をするわけです。

また、「メリケン粉」「メリケン波止場」の「メリケン」は、今なら「アメリカン」のこと。変な発音に思えるかもしれませんが、ネイティブに対しては、「アメリカン」と言うよりも、「メ」にアクセントを置いて「メリケン!」と言ったほうが間違いなく通じます。 学習の比率としては、最初のうちはリスニング9割、スピーキング1割くらいで、徐々にリスニングとスピーキングを5割ずつくらいに持っていくのがいいでしょう。

 

PROFILE
瀧靖之

東北大学加齢医学研究所教授。医師。医学博士。1970年生まれ。東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授。東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授。MRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究に従事。

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