マスクも一因⁉ あらゆる不調のもとになる「隠れ酸欠」とは

感染予防のためにしているマスク。じつはこれが酸素の摂取量を減らし、「隠れ酸欠」が進行しやすい一因になっている可能性があります。治療家の京谷達也先生によると、気づかないうちに体の中で酸素不足が進むと、さまざまな不調があらわれはじめるそうです。体が酸素不足に陥る原因について教えてもらいました。

そのつらい症状「酸素不足」が原因かも⁉

疲れやすい、目がかすむ、頭痛がする、朝起きるのがつらい、動悸がする……。最近、このような症状に悩まされているとしたら、それは体の「酸素不足」が原因かもしれません。

コロナ禍で、私たちは長期間にわたって強い精神的ストレスにさらされつづけています。ストレスがあると、私たちはストレスから身を守ろうと無意識に背中を丸めることが多くなりますし、また、自律神経のうちの「交感神経」も優位に働きます。

交感神経が優位になると呼吸が浅くなるので、酸素を十分にとりこめなくなり、全身が軽い酸素不足におちいってしまうのです。

実際、私の知り合いのクリニックでも新型コロナの流行以降、患者さんたちの採血をすると、その多くが以前の血液よりも黒ずんでいるようになったそうです。 血液中のヘモグロビンは酸素と結びついて鮮やかな赤色になります。血液が黒ずんでいるのはおそらく、ヘモグロビンと結びつく酸素が減っているためでしょう。

酸素は生命維持のためのエネルギー源です。エネルギー源である酸素が、全身のそこかしこで不足すれば、内臓をはじめあらゆる組織や器官の機能が低下するので、当然、さまざまな不調や不具合が現れます。

しかも、怖いことに、この酸素不足は免疫力をも低下させます。酸素不足によって免疫細胞の働きが弱まって、免疫機能全体が弱体化してしまうのです。 そしてさらに怖いことに、ほとんどの場合、酸素不足状態にある本人にその自覚がないことです。

酸素不足の状態にあるにもかかわらず、それに気づいていない、つまり「隠れ酸欠」の人が多くいます。 ストレスなどによる隠れ酸欠では、酸素の摂取量の減少は毎日、少しずつ進行します。そのため、気づくのがとてもむずかしいのです。

さらに、新型コロナの流行で、今は多くの方がマスクをしています。マスクで鼻と口をおおっていると、酸素の摂取量が減ってしまいます。新型コロナによる不安というストレスが体の酸素不足を引きおこし、マスクの着用が酸素不足をいっそう悪化させているのです。それも気づかないうちに……。

マスクが、隠れ酸欠の状態に追い打ちをかけているといえるでしょう。

気づかないうちに進行している酸素不足

多くの人は自分でも気づかないうちに、酸素不足におちいっています。この状況を解消するためには、横隔膜をやわらかくほぐすことが欠かせません。

私はこれまで数多くの「横隔膜の動きが悪い方々」の治療をおこなってきました。 患者さんたちは精神疾患やぜんそく、慢性疲労、更年期障害、気管支炎などの疾患があり、それらの不安やストレスなどが原因となって横隔膜の動きが極端に低下していました。

これまで横隔膜の調整前と調整後の患者さんたちの酸素摂取量を測定してきた結果、調整後には平均で酸素摂取量が調整前に比べて約40%も増加することがわかりました。

この結果から、横隔膜がしっかり動いていない方は、生命維持に欠かせない酸素を十分に体の中にとりこめていないことがよくわかっていただけると思います。 これでは、体に異常が出るのも当然です。

酸素不足になっている方のほとんどが、そのことに気づいていない隠れ酸欠です。クリニックに見える患者さんたちも、たとえ酸素の摂取量が以前に比べて約4割も減っていても、そのことに気づいていらっしゃいません。

その理由は、呼吸が毎日、少しずつ浅くなっていき、しかも、その状態に私たちは毎日少しずつ慣れていってしまうためです。

たとえば、おなかを膨らませたり、凹ませたりしながらおこなう腹式呼吸は、 胸を動かすだけの胸式呼吸よりも呼吸が深くなる分、横隔膜が大きく動いていなければしっかりできません。

ところが、高齢の方たちの大半が、まったくといっていいほど腹式呼吸ができないのです。たとえできる方でも、吸った息を10秒間かけて吐きつづけられません。

そういう方々は横隔膜がしっかりと動いていないから、かわりに肩を動かしてなんとか酸素を肺に入れていたりします。

そこで、私が「呼吸が浅いですね」と指摘すると、ほとんどの患者さんが「気がつきませんでした」と驚かれるのです。

あなたは腹式呼吸ができますか? 吸いこんだ息を10秒間かけて吐きだすことができますか?

どちらの答えもノーなら、あなたは隠れ酸欠といって間違いないでしょう。 あなたの横隔膜も、あなたが気づいていないだけで、硬くなっていて、そのために呼吸が浅くなっている可能性は十分にあります。

あなたがもし、ストレスが多くて、前屈みの猫背で、毎日マスクを欠かさずにしていて、60歳以上であれば、その可能性はさらに跳ねあがることでしょう。

横隔膜が硬くなっている人の体の中では、隠れ酸欠は激しく進んでいる可能性があります。今、あなたが悩んでいる不調も、知らずにおちいっていた「酸素不足」が原因かもしれません。

横隔膜ほぐし(ウォーミングアップ)

まずは腹式呼吸の練習です。最初は、おなかが膨らむ感覚をつかむだけでOK。それができるようになったら、 横隔膜ほぐしで使う腹式呼吸をマスターしましょう。

①椅子に座って、おなかに両手を置きます。口を軽く閉じて、 鼻から息を吸いこみ、おなかを風船のように膨らませます。

 

②口を軽く開けて、おなかを凹ませながらゆっくりと息を吐きます。おなかの中の空気を腹圧で出していく感じでおこないましょう。①、②に慣れたら③へ。
 

 ③横隔膜ほぐしでの呼吸法の練習です。さきほどの要領で「おなかを膨らませながら鼻から3秒で吸って、おなかを凹ませつつ10秒で口から吐く」を3回くりかえします。慣 れればできるようになるので最初は息が続くまでできればOK。

実践! 横隔膜ほぐし

下の図を参考にポイントに手を置き、上体を前にしっかり倒しながら呼吸することで、手の圧と腹式呼吸の両面から横隔膜を刺激することができるエクササイズです。
※妊娠中や内臓に疾患を抱えている方では、ポイントを押さず、ポイントにやさしく手を当てるだけにしましょう。それだけでも効果があります。

手を置くポイント

手を置くポイント



①背にもたれかからないように、椅子に浅めに座ります。みぞおちのポイントに両手の指を置き、3秒間で鼻から息をたっぷり吸いこみ、おなかを膨らませます。

②親指以外の4本の指でポイントをグッと押し、体を前へ倒しながら、10秒間かけて口から息を吐き、おなかを凹ませます。息を吐ききったら、上体を戻します。①②を3回くりかえしましょう。

③ポイントを左右の手でそれぞれ押さえ、3 秒間で鼻から息をできるだけ多く吸いこみ、おなかを膨らませます。

④親指以外の4本の指でポイント2をグッと押し(肋骨の一番下の骨の内側に差し込むイメー ジで)、体を前へ倒しながら、10秒間かけて口から息を吐き、おなかを凹ませます。息を吐ききったら上体を戻しま す。③④を3回くりかえしましょう。

⑤これまでと同様にポイント3を左右の手でそれぞれ押さえて、3秒間で鼻から息をたっぷり吸いこみ、おなかを膨らませます。次にポイント3をグッと押し、上体を前へ倒しながら口から息を吐きだし、おなかを凹ませていきます。これを3回くりかえしましょう。

⑥最後は、胸の中央部にあるリンパ反射区ポイント、胸骨を上から順番にさすり、痛みを感じた場所があれば、そこを4本の指で左右に約1分ほど刺激します。この痛みは体 を治していく際に発生する痛みなので、心配はいりません。

 

 

PROFILE
京谷達矢
一般社団法人楽健道協会の代表理事。治療家。アプライ ド・キネシオロジー(応用運動機能治療学)などの技術をもとに試行錯誤を重ね、「楽健術」という独自の治療法を開発。骨や筋肉を本来あるべき姿に整え、自然治癒力を最大限に引き出すための施術・指導を行っている。この20年間で延べ 6万人もの患者の施術にあたってきた。