様々ながんのリスクを軽減! 専門医が「コーヒー」をすすめるワケ

「コーヒーはがんに効く」という研究結果がある一方、「がんを予防する効果はない」と正反対の情報を伝える人もいます。いまや、がんにまつわる情報は多すぎるため、間違った情報も混在しています。はたしてコーヒーとがんの本当の関係とは? すい臓がんを中心に1000件以上の外科手術を行ってきた佐藤典宏医師に解説してもらいました。

世界で確認されたコーヒーの効果

以前から、コーヒーに含まれるポリフェノールは生活習慣病やがんを防ぐと言われていましたが、最近でもコーヒーによるがん予防効果については、国内外の多くの研究から明らかとなっています。

過去に報告された40の研究を解析したところ、最も多くコーヒーを飲む人は、最も少なく飲む人に比べ、すべてのがんのリスクが減少していたのです。なかでも、コーヒーの摂取によって、前立腺がん、子宮体がん、口腔がん、白血病、皮膚がん、および肝臓がんのリスクが低下することが確認されています。

このほかにも、コーヒーによる乳がんや大腸がんのリスク低下が報告されています。乳がんとコーヒーとの関係を調査したところ、コーヒーを1日4杯飲むことで、閉経後に乳がんのリスクが10%低下することが示されています。

さらに、イスラエルの報告よると、コーヒーを飲まない人に比べ、1日1~2杯飲む人は大腸がんのリスクが20%、2~2.5杯飲む人では40%、さらに1日2.5杯以上飲む人では50%も低下することが示されています。

日本人にもコーヒーはがんに効くのか?

日本におけるコーヒーとそれぞれのがんでの研究結果が出ています。

肝臓がん

日本では、およそ9万人を対象に、コーヒー摂取と肝臓がんの発生率との関係について調べた大規模な研究があります。この研究によると、コーヒーをほとんど毎日飲む人は、ほとんど飲まない人と比べ、肝臓がんのリスクが約半分に減少し、さらに1日5杯以上飲む人は、肝臓がんのリスクが4分の1にまで低下していました。

子宮体がん

同様に、およそ5万人の日本人女性を対象とした研究では、コーヒーを週2日以下しか飲まないグループに比べ、1日1~2杯飲むグループは子宮体がんのリスクがおよそ40%、1日3杯以上飲むグループはおよそ60%低下していました。

頭頸部(とうけいぶ)・食道がん

宮城県で行われたおよそ3万人を対象とした研究で、コーヒーを飲む習慣のある人は、飲まない人に比べて、口腔、咽頭、および食道がんのリスクがおよそ50 %低いことがわかりました。

これらのことから、コーヒーは様々ながんの予防に有効であることは明らかです。

インスタントコーヒーでもがん予防につながる⁉

ところで、なぜコーヒーはがん予防につながるのでしょうか?

これまでの研究によると、クロロゲン酸という抗酸化作用を持つコーヒーの成分が、発がん抑制に関与している可能性が指摘されています。しかし、コーヒーによるがん予防のメカニズムについては、残念ながらまだ解明されていません。

では、コーヒーならカフェイン抜き(デカフェ)やインスタントのものでも同様の効果があるのでしょうか? 答えはYESです。

実際に、先ほど紹介したコーヒーによる大腸がんのリスク低下の研究では、カフェイン抜きのコーヒーでも同様のがん予防効果があることがわかりました。また、イギリスの研究によると、コーヒーによる肝臓がんのリスク低下は、挽いた豆をドリップしたコーヒーだけでなく、インスタントコーヒーでも同様の結果でした。

つまり、コーヒーはそのタイプにかかわらず、がん予防効果があるようです。ただし、前述したように市販のコーヒー飲料には砂糖をはじめ糖分がたくさん入っているものがありますので注意してください。

再発防止にもコーヒーが力を発揮!

では、がんの手術後にコーヒーを飲むのはどうなのでしょうか?

術後の生活指導のパンフレットなどには、「コーヒーなどの刺激物は控えるように」と書かれているものもあります。また、コーヒーをなるべく飲まないようにと指導している医師もいるようです。

私は、自分自身がコーヒー好きなこともあり、「術後、コーヒーを飲んでもいいですか?」と聞かれたときは、コーヒーが好きな患者さんには「空腹時を避ければ、飲んでもいいですよ」とお伝えしています。

実はコーヒーが大腸がんの再発を予防し、死亡率を低下させるという研究結果もあります。術後の患者さんに、カフェイン入りコーヒーとカフェインなしコーヒー、およびハーブティー以外のお茶の摂取量について、アンケートをとった結果は以下の通りです。

カフェインの有無を問わず、1日にコーヒーを4杯以上飲む人は、まったく飲まない人に比べて、大腸がんの再発あるいは死亡リスクが42%低下

カフェイン入りコーヒーを1日に4杯以上飲む人は、まったく飲まない人に比べて、大腸がんの再発または死亡リスクがなんと52%も低下

カフェイン摂取の増加と、大腸がんの再発または死亡リスクの低下とは、相関関係にあった

・一方で、カフェインなしのコーヒーおよびハーブティーの摂取では、大腸がん再発率あるいは死亡リスクとの相関関係はなかった(米国における、大腸がんステージⅢ患者に対する術後補助化学療法についての臨床試験に登録された953人の患者によるアンケート調査より)

このことから、ステージⅢの大腸がんの患者さんにおいては、コーヒーの摂取(1日4杯以上、とくにカフェイン入りのコーヒー)は、再発および死亡リスクを低下させることが証明されました。

そもそものがんの予防にしても、再発防止にしても、コーヒーの摂取は有効といえます。

ただしコーヒーを飲む際は、時間帯に注意が必要です。

夕方以降にコーヒーを飲むとカフェインによって不眠や睡眠障害を引き起こす可能性があります。できればカフェイン入りコーヒーは朝からお昼すぎまでにとどめ、夕方以降にはカフェイン抜きのコーヒーを飲むようにしましょう。

 

 

seishun.jp

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PROFILE
佐藤典宏

医師・医学博士(産業医科大学第1外科講師、在宅サポートながさきクリニック非常勤医師)。1968年、福岡県生まれ。93年、九州大学医学部卒業。外科医として研修後、九州大 学大学院へ入学。2001年から米国ジョンズ・ホプキンス大学医学部にてがんの分子生物学を研究。2006年より九州大学腫瘍制御学助手、12年より産業医科大学助教を経て現在にいたる。膵臓がんを中心に1000例以上の外科手術を経験し、日本外科学会、日本消化器外科学会専門医・指導医、がん治療認定医の資格を取得。16年に「がんをあきらめない人の情報ブログ」(https://satonorihiro.xyz/)を開設し、がんについての情報を発信。著書に『ガンとわかったら読む本』(マキノ出版)、『がんが治る人治らない人』(あさ出版)等がある。

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