「横隔膜」が免疫力の要である理由
免疫力が弱まれば、風邪からインフルエンザ、新型コロナなどのさまざまな病気を引きよせることになります。元気で長生きしたいのなら、免疫力を高めること。そのために注目すべきは「横隔膜」です。
加齢やストレス、マスクの長時間着用などで呼吸が浅くなると、横隔膜が硬く動きづらくなり隠れ酸欠に陥ります。酸欠によるもっとも 深刻な影響が、免疫力の低下です。細胞のエネルギ ー源である酸素が不足し、そのため、他の細胞同様、免疫細胞もその働きが低下 してしまいます。また、血液循環の悪化による低体温も免疫の低下を引きおこす一因となるのです。
そこでおすすめしたいのが「横隔膜ほぐし」です。横隔膜をやわらかく整えることにはいくつもの効果があり、それらが相乗効果を生むことによって免疫力がよりいっそう高まります。
理由①酸素の供給を上げる
免疫力を高める最大の要因となるのが、隠れ酸欠を解消して、酸素の供給量を増大させる効果です。
横隔膜ほぐしによって、横隔膜をやわらかく整えてしっかりと上下に動くようにしてやれば、深い呼吸が可能になって、たくさんの酸素をとりいれら れ、体のすみずみに酸素がいきわたるようになります。
すると、全身の8兆個の細胞すべてで、自家発電所のミトコンドリアが活性化してエネルギーを産生するようになり、体温が上がってきます。体温が上がると、免疫細胞の働きがぐんぐん高まり、それにつれて免疫力もぐんぐん高まっていくのです。
理由②全身の血液循環がよくなる
横隔膜の上下運動に助けられることで、大動脈の血液も大静脈の血液も勢いよく流れています。横隔膜がやわらかくなり、上下運動がしっかりおこなわれれば、 大動脈、大静脈という太い血管の血流が高まります。その結果、 血液が全身のすみずみまで届くようになるのです。そして、末端まで血液が循環すれば、体温が上がり、免疫細胞のマクロファージもNK細胞もT細胞も本来の元気をとりもどすでしょう。
理由③腸活になる
横隔膜ほぐしの免疫力アップ効果はこれだけにとどまりません。腸をやさしくマッサージする動きもします。腸はなんと、全身の70%もの免疫組織が集まる最大の免疫器官でもあるのです。腸が活性化されることで免疫力アップが促されていきます。
また、「しあわせホルモン」と呼ばれるセロトニンの約90%は腸でつくられます。横隔膜はストレスの影響をもっとも強く受けます。セロトニンの分泌がさかんになって穏やかな気持ちになれれば、ストレスによって動きづらくなった横隔膜もときほぐされ、スムーズに上下するようになるでしょう。
もし、あなたの横隔膜が硬く縮んで、動きづらくなっていても、それをしなやかで、やわらかく、よく動く状態に変えることは、何歳からでもできます。それは、横隔膜が筋肉だから。筋肉はいくつになっても、自分の働きかけ次第で変えることができるのです。
実践! 横隔膜ほぐし
9つのポイントを押しながら腹式呼吸をし、おなか全体をゆるめましょう。胃腸のポイントを押して刺激を与え、 働きを整えることで免疫力が高まり、精神も安定します。
※妊娠中や内臓に疾患がある方は、ポイントを押さずに、ポイントにやさしく手を当てるだけにしましょう。それでも十分効果があります。
① 椅子の背にもたれかからないように、浅めに座ります。おへその上のポイント①に両手を置き、3秒間で鼻から息をいっぱいに吸いこみ、おなかを膨らませます。
② ポイント①を押し、上体を倒しながら10秒間でおなかを凹ませつつ、 口から息を吐きだします。息を吐ききったら上体を戻し、①②を3回くりかえします。
③ 掌(てのひら)でおへそのまわりを円を描くように10回さすります。小腸を刺激するイメージで。
④ ポイント2に両手を置 き、3秒間で鼻から息をいっぱいに吸いこみおなかを膨らませます。
⑤ ポイント2を押し、上体を前へ倒しながら10秒間で口から息を吐きだし、おなかを凹ませていきます。息を吐ききっ たら上体を戻し、④⑤を3回くりかえします。
⑥ ポイント3~9についてもポイント2と同様に、3秒で鼻から息を吸っておなかを膨らませ、それぞれのポイントを押しつつ、上体を倒しながら10秒間かけて口から息を吐きだし、おなかを凹ませます。これをそれぞれのポイントで3回ずつおこないます。
⑦ 最後は胸の中央部にあるリンパ反射区ポイント、胸骨を上から順番にさすり、痛みを感じた場所があれば、そこを4本の指で左右に約1分さすって刺激します。この痛みは体を治していく際に発生する痛みで、心配無用です。

“隠れ酸欠”から体を守る横隔膜ほぐし (青春新書プレイブックス)
- 作者:京谷 達矢
- 発売日: 2020/07/14
- メディア: 新書