45歳の新人営業マンを異例の昇進へと導いた「ひと言」

仕事のありきたりな定型句にちょっとした言葉を加えたり、いつものメールに一文を加えるだけで、人間関係はもちろん自身への評価、仕事の業績、そして自分の未来さえも大きく変えることもできます。リーダーシップやコミュニケーション、子育て講演などで活躍する松本秀男さんに、その方法を教えてもらいます。

「未来のいいイメージ」をひとつ加える」

たった1通のメールで、部下や仕事相手のやる気を引き出す方法をご存じですか。それは、未来のいいイメージを伝えること。たとえば、次のような一文をプラスするのです。

「どんな結果になるのか、いまからワクワクしています」
「3か月後、社内がワッと騒がしくなる様子が楽しみです」

親しい相手ならば、次のような一文でもOK。

「終わったあとのビールが楽しみですね」

プロジェクトが完了した未来のこと、締め切りを乗り越えた時点での様子をイメージしてプラスします。

というのも、仕事に追われている人は、目の前のことに精いっぱいになりがちです。また大きな課題、壁にぶつかって、それを乗り越えようと試行錯誤はするけれど、なかなか前に進んでいる実感がなく、ずっとこのきつい状況が続くと思えてしまいます。

そんな人に対して、「壁を登るにはこうすればいい。そこに手をかけるんじゃなくて、もっといい手がかりがある」と壁の乗り越え方ばかり説明しているのでは、心の熱量があがりません。

むしろ大切なのは、登った先にまったく違う世界が広がっているのだと示すことではないでしょうか。

ほんのひと言プラスするだけで人生は大きく変わる

仕事や人間関係、人生を変えるための「ひと言」についてさらに紹介する前に、私がなぜこのようなお話をできるのか、お伝えします。

私は30代で何度も転職をしました。迷っていた時代と言っていいでしょう。兄が継いでいた家業のガソリンスタンド経営を8年ほど手伝ったあと、スタンドは兄に任せ、外資最大手の損害保険会社の契約社員の営業として働きはじめました。

45歳。なんと「45歳でゼロからの転職」です。

もちろん、10年以上スーツを着る機会もなかった人間が、すぐに成績を上げられるほど甘い世界ではありません。

毎日毎日、パンフレットが入った重い営業カバンをぶら下げ、下町の商店や工場へ飛び込み訪問。一日70件ほどまわっても、そうそう契約はとれません。新人3か月目にして月の手数料収入が2000円という苦しい時期もありました。

そんななか、ある小さな行動の積み重ねが、大きな成果につながっていきました。たとえば仕事のお礼として、「どうもありがとうございました。これからもよろしくお願いします」とあいさつするのが普通だと思います。私はこうしたお決まりのあいさつに、「ひと言」プラスすることを始めました。

「おかげで、仕事が2日分ぐらい前に進みました!」
「スピーディなご対応のおかげで、一気にエンジンがかかりました!」
「この日程は、個人的にも、とてもありがたいです!」

こんな何気ない「ひと言」をつけ加えるだけで、不思議なくらい相手の印象に残るのです。時には笑顔が広がります。ビジネスライクでクールな人間関係がちょっとあったまります。

この「ひと言プラスする習慣」を続けることで、自分の印象が変わり、信頼を得て、仕事も人間関係も人生も、すべてがうまく回りだしたのです。

結果的に、1年目で新人賞を獲得し、トップ営業に。下町の飛び込み営業だった私が年商100億円規模の企業からも契約をいただくようになりました。

そして50歳にして、契約営業社員としては異例の正社員に登用され、近畿中部北陸エリアの営業社員を教えるトレーナーとなり、そしてその1年後には、本社に異動し営業企画部へ。さらにわずか1年で、CEOや役員の直下となる経営企画部へ。

45歳の下町のガソリンスタンドのおやじが異例の昇進となりました。

基本なのに多くの人ができていないこと

もう一つ、少し注意するだけで人間関係を親密にし、自分を印象づける重要なポイントをご紹介しましょう。それは相手を名前で呼ぶこと。営業でも接客業でも、客商売の基本中の基本です。

駆け出しの営業の方は、単に役職で「社長もご存じだとは思いますが」などと言いがちですが、できる営業は「山田社長」「川口部長」というように必ず名前を呼んでいます。

ではなぜ、名前で呼んだほうがいいのでしょうか?

名前で呼ぶことは、その人を業務上のファンクション(役割や機能)として扱っているのではなく、一人の人間として向き合っていますよ、という表明です。呼ばれる側からみると、相手から認められているという「承認欲求」を満たすものであるため、名前で呼んでくれる人に対して親しみを感じるのです。

簡単にいえば、名前をきちんと呼ぶことは、相手を個人として認めることであり、それは敬意につながるからこそ、大切にしたいのです。

お年寄り相手だと、それが誰であっても、おばあちゃん、おじいちゃんで済ませる方もいますが、個人個人を尊重するのなら「○○さん」ときちんと名前を呼ぶべきでしょう。

名前を呼ぶことは、セールスでも効果的だと実証されています。

アメリカ・テキサス州にある南メソジスト大学のダニエル・ハワード教授は、学生にクッキーを売る実験で、相手の名前を呼ぶ場合には、呼ばない場合に比べて、購入率が約2倍になるという実験結果を発表しています。

名前を呼んだほうがいいのは社名でも同じこと。「御社」と言うよりも、「竹内産業さまは……」と言うことで、相手に対する敬意が伝わります。

ベテランの方でも意外と実践できていないということも多いので、しっかりできているか、次の機会に注意してみてください。

 

PROFILE
松本秀男

一般社団法人日本ほめる達人協会専務理事。国学院大学を卒業後、歌手さだまさし氏のマネージャーを経て、家業のガソリンスタンドを再建。45歳で外資最大手のAIU保険の代理店研修生に。そのコミュニケーション力で数々の成果をあげ、トップ営業、本社経営企画部のマネージャーとして社長賞を受賞するなど、まわりにムーブメントを起こす感動エピソードを生み出し続けた。組織を動かし、家庭まで元気にする達人として活躍中。