子どもの学力を落としてしまっている親の残念な口グセ

「子どもが勉強をしない」「学校の成績が悪くて」と悩んでいる方は多いですが、親が日常で使っている言葉にその原因があるのだとしたら……。子どものセルフイメージを変える言葉がけについて、教育のプロコーチである田嶋英子さんに教えてもらいました。

「セルフイメージ」と「能力」「努力」の驚きの関係

子どもは自分の能力について、「私は頭がいい」「イマイチだ」「頭が悪い」など、さまざまなセルフイメージを持っています。

セルフイメージと実際の能力とは、必ずしも一致しません。自分で「頭がいい」「天才」と思っていても、努力が伴わなければ実際の成績は上がりません。逆に「私は頭が悪い」と思っている人が、「だから人よりも努力しなければ」と思って努力をすれば、成績は上がります。

セルフイメージがどうであれ、努力をすれば成績は上がるし、しなければ上がりません。ここは注意しておくべきポイントです。

じゃあ、努力するかどうかが大事で、セルフイメージなんて関係ないじゃないの、と思うかもしれませんが、実はおおいに関係あるのです。

勉強に限りませんが、努力をするのは、子どもにとって楽なことではありません。努力し続けることは、なおさらです。学生の頃、試験勉強といえば、「一夜漬け」「直前に丸暗記」ではありませんでしたか?

昭和世代の人は、「つらくても頑張る」「今だけガマンすればいい」「そうしなければならない」というど根性で人生を乗り越えてきました。つまり、昭和世代の人生はいわば「山登り」。

ところが生まれたときから安全で豊かな世界を享受してきた平成世代にとって、人生は草原を歩く「ピクニック」なのです。この感覚の差がコミュニケーションエラーを呼び込んでいます。

昭和世代からはまったく頑張っていないように見えても、次世代にとっては、草原を歩くのだって頑張っているわけです。その「頑張り」を認めてくれないと、悔しくなり、またがっかりして「心が折れてしまう」わけですね。

その次世代が「頑張る」ために有効なのが、高い「セルフイメージ」なのです。「私はバカだ」というセルフイメージの人が、勉強ができるようになるために努力するのは、そのセルフイメージと逆行します。

「私は頭がいい」「天才だ」というセルフイメージの人は、努力の方向とセルフイメージが同じ方向なので、比較的取り組みやすいし、感覚も楽しいと感じることが多いわけです。

ここから紹介する「頭のよくなる言葉」を正確に言うと、子どもが「自分は頭がいい」と思うようになる言葉、つまりいいセルフイメージが持てる言葉ということになります。

「バカの呪い」を解きましょう

私は大学受験生の指導をしていたこともあるのですが、そのころの重要な仕事の一つが、「バカの呪い」を解くということでした。大学を受験しようという年齢になってまで、子どもたちの多くが「バカの呪い」にかかってしまっていたのです。

すなわち、「自分はバカだ」という信念、強烈なセルフイメージを持ってしまっているのです。

自分はバカだ(セルフイメージ)
    ↓
やってもできない(能力)
    ↓
どうせできないからやらない(行動)
    ↓
成績が悪い、試験に落ちる(現実)
    ↓
人にバカにされる、バカだと思われる(評価)
    ↓
自分はバカだ(セルフイメージの強化・固定)


この負のループにはまっていることを、「バカの呪い」にかかるといいます。では、この「自分はバカだ」というセルフイメージ、いつ、どうやって身につけたのでしょうか。

一番多いのは、子どもたちの生活の中に「勉強」というワードが入ってくる小学校入学前後です。しかし、それ以前に、家庭の中で「バカ」という言葉が使われているかどうかが、鍵になります。

「えっ、子どもに『バカ』なんて言いませんよ」というお母さんも多いでしょう。でも、自分に向かってはどうですか? 自分のこと「バカだなあ」って、思いませんか? 自分に「バカ」って使ってませんか? 夫には? 身内には使いませんか? テレビに出てくる芸能人や政治家に向かって、「バカね」って何気なく言ってませんか?

そう、この「バカの呪い」は、主語を特定しないのです。

大好きなお母さんが使っている「バカ」の言葉は、子どもたちの耳に入っているし、心に蓄積されているんですよ。その蓄積が、「勉強」と結びついたときに、「自分はバカだ」というセルフイメージにつながります。

「バカの呪い」は強烈なので、言い換えも強烈に行う必要があります。もはやお子さんに「バカの呪い」がかかっていると思うご家庭では、「バカ」を打ち消すくらいの言葉、「天才」に変えていきましょう。

ご飯作っても、お掃除しても、「天才」と表現してください。口紅上手に引けたら「天才」。バーゲンでお値打ち品を手に入れても「天才」。まずはお母さんが、自分自身を「天才」って言いましょう。

「天才」の大安売りで構いません。お子さんにも、ご主人にも、テレビに向かっても、猫ちゃんにも。

慣れるまで言うほうも言われるほうも変な感じですが、嫌な気分ではないはずです。そして100日、約3か月で定着します。

まだお子さんが小さいご家庭は、「おりこうさん」「賢い」「頭いい」でも大丈夫です。「バカ」って使いそうになったら、言い換えしていきましょう。

どうかどうか、「バカの呪い」から子どもを救ってあげてください。

【こう言いカエル】

バカ→賢い、天才 

勉強とは常に「頭が悪い」と感じること

とはいえ、子どもが「自分は頭が悪い」と感じることもあるでしょう。どんなときに「頭が悪い」って感じるかというと、今の自分よりレベルが上のことに挑戦しようとしているときです。

今までできていること、できていたことをやるとき、考えるときは、「頭が悪い」なんて感じないはずです。

今までと違うこと、初めてやること、レベルの高いこと、それに取り組もうとしているからこそ、今までと同じように楽々とできない自分のことを、「頭が悪い」と感じるんですよね。

子どもたちは、いつも新しいことに挑戦しています。足し算ができたら引き算に。日本語だけじゃなくて、英語も。いつも新しいことを学ぼうとしています。それは、「頭が悪い」って感じ続ける経験です。私はその感覚は、決して悪くないと思います。

でも、「頭が悪い」という言葉は否定的なイメージが強いですね。そう子どもが感じているようなら、「進化中」なのだと教えてあげてください。新しい自分に進化したら次のステージに行けるわけで、その途中だということです。

親も常に「進化中」でいたいですね。学校時代だけでなく一生。

【こう言いカエル】

頭悪い→進化中 

 

PROFILE
田嶋英子

プロコーチ/NLPマスタープラクティショナー。あねごイノベーションズ代表。1961年佐世保生まれ。広島大学教育学部で教育学と心理学を学び、卒業後は高校教諭として活躍。結婚・出産後は二男一女を東京大学などへの進学サポートに成功。現在は、子どもの不登校・ニート・引きこもり問題、夫婦関係の改善、婚活・就活など、家族・子育て・職場の人間関係に精通した「お母さんサポートの専門家」としてセミナーやトレーニングを行っている。

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