10秒で伝わる! 頭がいい人の説明に必ずある「4つの原則」

10秒で伝わる説明力

説明のうまい人と説明のヘタな人がいる。説明上手はそれだけで物事がスムーズに進む一方、説明ベタは理解してもらえないだけでなく、誤解が起こるなどの支障が起こる。言葉を使うだけなのに何が違うのか? 本来、説明は「10秒」で事足りるのに、説明がヘタな人ほど長々と語ってしまいがちだ。あなたに欠けている、説明力を上げる4原則をご紹介しよう。

第1原則 「丁寧な説明」はわかりにくい

丁寧に説明すればするほどわかりやすくなると考えている人がいる。それが多くの人の抱いている、最大の間違いだ。

むしろ逆と考えるべきだ。丁寧であればあるほど、むしろわかりにくくなる。わかりやすく伝えるには、要点を絞って、できるだけ短く伝えるのがコツだ。ほとんどの場合、10秒もあれば十分に伝わる。

たとえば、「この道をまっすぐ歩いて、最初の信号の右にはコンビニがあり、左側には弁当屋さんがある。それを過ぎて、次の信号に行くと、イタリア料理の店が左側に見える。それを過ぎて次の信号の右にはM銀行があって、左にはマッサージ店がある。その信号を右に曲がると、ラーメン屋さんとネパール料理屋さんが並んでいる。その隣にビルがあって、1階には理容室が入っている。そのビルの3階が私のオフィスだ」と言ったとしよう。

おそらく、これは正確な説明だろう。だが、聞いている人にはよくわからない。

それよりは、もっと簡単に「この道を歩いて、三つ目のM銀行のある信号を右に曲がる。3軒目の理容室のビルの2階」と言うほうがずっとわかりやすい。これなら10秒ですむ。

なぜ、正確な説明はわかりにくいのかというと、言うまでもなく、余計な情報がたくさんあるからだ。

人間の理解力には限度がある。あまりに多くの情報を与えると消化不良を起こして理解できなくなってしまう。余計な情報は加えずに、要点を絞ってできるだけ短く伝えてこそ、相手は理解することができる。

下手な説明をする人のほとんどは、欲張っていくつものことを語ろうとして、それを整理できずに崩壊してしまう。余計なことは語らずに絞るのが最も説明をわかりやすくする方法だ。

第2原則 はじめにズバリと結論を示して、その後で補足する

もちろん、すべての説明が10秒で終わるわけではない。もっと複雑な説明が必要なこともある。だが、その場合も、最初に10秒ほどでズバリと全体像を示し、そのあとで補足するという説明法を身につけておけば、常にわかりやすく説明できる。

たとえば、未知の駅に到着して付近を歩こうとするとき、まず駅前の地図を見て、周囲の状況を頭に入れてから歩き出すのと似ている。そうしてこそ、迷子にならず、大体自分がどこにいるか、どの方向に向かっているかを把握しながら、歩くことができる。

話をするときも、そうすることによって、聞いている人に大まかな方向を理解してもらえる。そうしないと突然話の中に放り込まれて、聞いている方は理解ができない。

たとえば、「ラーメンが好きな理由は何ですか?」と聞かれたとする。そのとき「私がラーメン好きなのは、奥が深いからです。ラーメンは、醤油、とんこつ、みそ、魚介などのスープのどれもが麺に合います。どのベースでも微妙な味わいがあります。しかも、店によってそれぞれ工夫をするのでその違いを味わうのにあきません」と答える。

初めにズバリと、「奥が深いから好き」と結論を示して、その後で、それについて補足説明をする形をとっていることがおわかりいただけるだろう。

そのような説明のしかたは、新聞や雑誌の記事をイメージするとわかりやすい。これらの記事は、見出しがあり、そのあとに大まかなリードがつく。そして、それを説明する形で、いつ何が起こったかを述べる。

初めの大枠を示しているので、聞いている人は、その不足分を補う形で耳を傾ける。 小さなことは、まずは無視して説明し、それを理解できたところで、細かいところを付け加えてこそ、相手は細かいところまでしっかり理解できる。

第3原則 1回の持ち時間は30~60秒と心得る

人が一人で話を続ける場合、30秒を基準に考えるべきだ。文章で書くのであれば、4行くらいだろう。最も基本的なのは、第1原則で示した通り、最初の10秒以内でズバリと示した後、20秒程度でそれを補足する。文章であれば、最初の1行でズバリと示した後、3行ほどで説明を加え、合計4行程度にする。

30秒を超すと、耳で聞いている人は筋道を追えなくなってくる。説明の仕方がうまくなかったり、内容が少し複雑だったりすると30秒の前に迷子になる。文章による説明の場合には、それよりは少し分量が多くても理解できるが、それでも、せいぜい時間にして60秒、字数で400字くらいだろう。

したがって、持ち時間は30秒、長くても60秒で語るつもりでいるのが好ましい。

もちろん、複雑な内容を説明するときは10分や20分、場合によっては1時間以上の説明をする必要があるだろう。それを30秒から1分ほどで説明することは難しい。しかし、その場合も、30秒から60秒ほどの一回の持ち時間を複数回使うと考えるべきだ。

多くの本には小見出しがある。その小見出しはだいたい1分ほどで読み終えるくらいの分量だ。小見出しをいくつか合わせて一つの章を作り、それを重ねていって一冊の本を構成している。それと同じように、1分以内の説明を一つの単位として、その組み合わせで全体を説明すると考える。

そう考えることでメリハリの利いた説明になる。

第4原則 説明は相手との対話と心得る

説明は発話者が一人で長々と話す独白ではない。あくまでも、聞いている人の様子を見ながら対話するものだ。たとえ説明が文章であるものについても、基本的には同じことがいえる。

初めから、すべての人が理解できる完璧な説明をする必要はない。質問されるのを想定したうえで説明をすればいい。質問を導き出すような説明をし、質問を受けてから次の説明をするのでもいい。

初めは不完全でも、最後になって誰もが納得するように説明をするのが最も好ましい。説明というものを、そのようなやり取りの中にあるものとして捉えるべきだ。

初めからすべてを語ろうとすると長くなり、余計な要素が入り込む。なるべくシンプルに説明することを心がけ、質問があったら次にその質問に答える。

的確な説明をするには、区切りごとに聞いている人の表情に気をつけなければならない。気をつけてさえいれば、表情を読むのにテクニックは必要ない。理解できずにいると、納得できない表情をする。目が泳いでいたり、「ここまでよろしいですか」と尋ねたときに、即座に答えなかったりする。

もちろん、説明をそもそも完結したものと考えるべきではない。説明の仕方は相手の理解度によっても変化する。周囲の環境によっても変化する。説明者と聞いている人の関係性によっても変化する。一律にとらえることはできない。

 

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PROFILE
樋口裕一

1951年大分県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、立教大学大学院博士課程満期退学。フランス文学、アフリカ文学の翻訳家として活動するかたわら、受験小論文指導の第一人者として活躍。現在、多摩大学名誉教授、東進ハイスクール客員講師(小論文)。通信添削による作文・小論文の専門塾「白藍塾」塾長。MJ日本語教育学院学院長。250万部の大ベストセラーとなった『頭がいい人、悪い人の話し方』(PHP研究所)のほか、『バカに見える日本語』『この一冊で芸術通になる大人の教養力』(以上、小社刊)、『頭の整理がヘタな人、うまい人』(大和書房)、『「頭がいい」の正体は読解力』(幻冬舎)など著書多数。