家庭で中華鍋を振るう人が知らない「弱火料理」のすごいメリット

野菜いため

家で野菜いためをつくると、ビチャッと水っぽくなってしまう……。シェフ・料理科学研究家の水島弘史先生は、その原因は「強すぎる火加減」にあると断言します。どんな方法でつくると野菜いためは美味しくなるのか、秘訣を教えてもらいました!

あなたの「弱火」、じつは強火です!

私が主宰している料理教室で、生徒さんに「弱火にしてください」と言うと、「それ、どうみても強火!」という火加減の方が多くいます。コンロのつまみの「弱、中、強」という文字だけ見て、炎の様子はまったく見ていないのでしょう。

最初によーく知っておいていただきたいのは、「家庭のコンロは火力が強すぎる」という事実です。ほとんどの人はビックリすると思います。これまで、「プロ用と違って、家庭のコンロは火力が弱いから肉が上手に焼けない」といったことを聞かされているからです。

そもそも、料理における「強火」というのは、フライパンや鍋の底に当たる熱の量のこと。コンロの炎を最大にして、どれだけ高くあがるかということではありません。たしかにレストランの厨房にあるガスコンロをもっとも強くすると、家庭のコンロより高く盛大な炎があがります。

でも、ちょっと注意して見るとすぐわかりますが、プロのコンロは火口(炎が噴き出す部分)と鍋の底の距離が家庭のものよりずっと離れていて、「遠火」になっている。要するに「五徳」の高さが違うのです。

火力が勝負といわれる中華料理にしても、火口の上に鍋をずっと乗せて加熱するわけではありません。すばやく混ぜ、フライパンをあおって食材を浮かせることで火口から遠くなるようにして、輻射熱で調理しているのです。

家庭のコンロは五徳がとても低いので、強火にしてフライパンを置くと、フライパンのふちからはみ出すほど炎があがります。だから中火くらいで調理しているつもりでも、フライパンをコンロにのせたままでは火力が強すぎるのです。

弱火

真横から見て、炎の先端が鍋底にまったく当たらない状態

弱い中火

炎の先端が、鍋底にわずかに当たるか当たらないか、という状態

中火

炎の先端がちょうど鍋底に当たっている状態

強火

炎が鍋底全体に当たっていて、しかも鍋の周囲にはみ出していない状態

なべ底と炎が近い家庭のコンロで調理する場合、「強火」にする必要はほとんどありません。プロと同じように仕上げたければ、とにかく強火をやめること。お湯をわかすとき以外、家庭のコンロに強火の出番はほとんどない、と思ってください。

「弱火で料理すると、時間がかかるんじゃないの?」 と思われるかもしれません。たしかに時間はかかりますが、弱火であれば“放置”しておけるので、その間にもう一品つくってしまえばいいのです。

弱火でつくると料理は急に簡単になる

野菜いためは「強火でつくればシャキシャキになる」と思っている人が多いと思いますが、これは強い火力の業務用コンロ、中華鍋、そして鍋をあおれる腕がそろっていないと上手にできません。

普通のフライパンを強火で加熱して野菜いためをつくろうとすると、もやしだけ焦げたり、ニンジンが固かったり、水っぽくなったりと失敗しがちです。

僕がオススメしているのは、冷たいフライパンに野菜を入れて弱火で時間をかけていためる方法。「弱火で長時間」というと、野菜の食感が失われてびしゃびしゃになりそうな気がするかもしれませんが、絶対にそうはなりません。

材料はなんでもかまいません。今回は豚肉を少しと、ピーマン、キャベツ、もやし、ナスなど冷蔵庫にある定番残り野菜でつくってみます。肉抜きの野菜だけでももちろんかまいません。野菜1種類だけでもいいでしょう。

材料の下ごしらえは、全部の大きさをそろえて切っておくだけ。どの料理でも同じですが、とにかく材料を全部切って調味料もあらかじめはかっておきましょう。火を使う前にできることは、全部やっておくわけです。

きちんと切ってバットなどに並べておくと、あとからの調理がラクというだけでなく、「分量」が目ではっきりわかるようになります。それがわかって初めて、「目分量」もわかるようになります。

野菜いためを調理するときは、冷たいフライパンに切った野菜を全部入れ、油を上からかけて両手でまんべんなく混ぜます。あえる、といってもいいでしょう。冷たいフライパンの上に、油をまぶした冷たい野菜の山がのっているわけです。あまり見たことがない光景だと思うので、ちょっとびっくりするかもしれません。

火は肉を焼くとき(弱めの中火)よりさらに弱い「弱火」。炎の大きさは、コンロのガス穴からフライパンの底までの半分くらいになるようにします。かたい野菜から先に入れる、なんてこともしなくてもOK。

あとは2、3分に一度、下と上をざっとひっくり返すくらい混ぜて、8分ぐらいそのまま。ニンジンなどが多い場合は8分では足りないかもしれませんが、一番かたそうな素材に合わせれば大丈夫です。

弱火で野菜の温度をゆっくり上げると、内部の水分が急激に失われることはありません。この方法だと、時間がたってもシャッキリしているはずです。

味つけは、「塩としょう油に含まれる塩分量の合計」を全材料の重さ0.8%にします。豚肉を入れる場合はあらかじめ火を通しておき、最後に合わせます。

この方法だと野菜の食感がしっかり残り、冷めてもお皿に水分が出てくることはありません。電子レンジで温め直してもおいしくいただけます。

 

[レシピ]野菜いため

材料
豚ロース
60g
ニンジン
60g
もやし
120g
キャベツ
60g
パプリカ
60g
ピーマン
20g
キクラゲ
30g
日本酒
8g
2g
しょうゆ
1g
コショウ
(好みで)
サラダオイル
ごま油
5g (小さじ1)

 

つくり方

1. すべての野菜をもやしの太さに合わせて、細切りにする

材料

2. 豚肉は2センチ程度に切る

3. フライパンにサラダオイルを少量ひき、温度の確認のため豚の小片をのせて弱い中火で加熱。小片に焼き色がついたら全部の豚肉を広げて入れる

4. 全体の色が変わったらキッチンペーパーに上げ、フライパンの油、水分もふきとる

5. 冷たいフライパンに野菜をすべて入れ、サラダオイルを回しかけて全体にからめる

油を回しかける

6. 弱火にかける。ときどき箸で上下を返すようにして8分いためる。ニンジンがかたいようなら、さらに少しいためる

7. とり出しておいた豚肉を加え、日本酒、塩を加えて弱火で2分いためる

8. いため香を出すため、最後に火を中火程度にしてしょうゆとごま油を加えて20秒

中火にする

9. コショウをふったら盛りつけて完成

 

 

seishun.jp

seishun.jp

seishun.jp

PROFILE
水島弘史

フランス料理シェフ、料理科学研究家。1967年、福岡県に生まれる。大阪あべの辻調理師専門学校および同校フランス校卒業後、フランスの三つ星レストラン「ジョルジュ・ブラン」で研修。帰国後、渋谷区恵比寿のフレンチレストラン「ラブレー」に勤務、1994年より3年間シェフを務める。2000年7月に恵比寿にフレンチレストラン「サントゥール」を開店。後に「エムズキッチンサントゥール」と改め、2009年4月まで営業。現在は、麻布十番にて水島弘史の調理・料理研究所を主宰し、すべての料理に通じるプロのルールを伝えている