50歳からはあえて“アウェー”に飛び込む――本田直之の人生観

雪山登山

いつも同じコミュニティの仲間と一緒にいると、新しい価値観を教えてくれる人、あなたの古い考えを否定してくれる人とのコミュニケーションが減ってしまいがちです。一歩先行くライフスタイルを実践してきた本田直之さんが、変化の時代に対応し、自分の人生を充実させる考え方を教えてくれます。

パターン化された毎日が頭を固くする

わたしはこれまでリセットする生き方を大切にしてきました。根底にあるのは、自分の頭が固くなっていくことを避けたいという気持ちです。

その実践として、人生の節目節目で強制的に今までの快適な生き方、楽な生き方をリセットして、わざわざやりにくい方向へ持っていくようにしてきました。2011年にハワイの家、東京の家とオフィスという3つの拠点で一気に引っ越しをしたのもゼロ・リセットの実践です。

長く住んだ家、使い慣れたオフィスは居心地のいいものになっていました。しかし、居心地の良さというのは危ういものです。快適な環境は、生活も、考え方もパターン化させていきます。安定しているなら、あえて何かを変える必要がないからです。

だからこそ、わたしは学生時代から「変化のない生き方をしているな」と気づいたら、環境をリセットする面倒くさい人生を歩んできました。

パターン化された自分を壊し、やわらかい思考でいたい。頭が固くなるのは避けたい。そのために、引っ越しをする、運動を始める、勉強をするなど、日常を変える小さな実験を繰り返し、生活全般をパターン化しないよう心がけてきました。

本田直之さん

あえてアウェーに飛び込むことで得られるもの

「自分は会社員だから、環境を大きく変えるのは難しい」と感じる方が多いかもしれません。しかし、転職、退職、リストラなどで、会社員はいつの日か会社から離れる日がやってきます。

そのとき、会社の外の世界を知らずに生きてきた人は変化に対応できず、右往左往することになります。

社内でどれだけの仕事ぶりを見せていたとしても、それがそのまま外の世界で評価されるわけではありません。重要な役職に就いていたとしても、外の世界で通用するかどうかは定かではないのです。

20代、30代ならばまだしも、50代、60代で井の中の蛙のまま会社の外の世界に出てしまうと、その落差に驚き、落ち込むことになります。それは定年後の悲哀を題材にした小説や映画、ノンフィクションで何度となく描かれてきた情景です。

そうした状況に陥るのを避けるためには、ともかくアウェーに出て疑似サバイバル体験をすること。すると、変化に対応する力を鍛えることができます。

一番のアウェー体験は外国での生活ですが、普段付き合っていない層の人たちと一緒に過ごすだけでも十分なアウェー体験になります。

50歳からは教えるのではなく、教わる

たとえば若い人とつながることは、手っ取り早いアウェー体験です。わたしは大学で講義をすることもあって、定期的に若い人たちと接しています。学生たちとの付き合いはいつも刺激になり、気持ちをリフレッシュさせてくれます。彼らと話していて感じるのは、本当に興味の幅が広く、優秀な人が多いということ。

同世代のおじさんたちが読むメディアは、「今の若い子たちは草食系だ」「物を買わない」と批判します。しかし、実際に話してみると、むしろメディア側のほうがわかっていないなと思います。若い子たちの生きている時代は、今の50代の若い頃とは違います。

同じような物欲がないのは当たり前で、車が必要なときはカーシェアを利用し、ブランド物よりも自分の納得する逸品を探すことのほうに情熱を傾ける。あるいは、同じ額のお金を使うなら物よりも新しい体験を選ぶ。

彼らのほうがおじさん世代よりも本質的な方向を見ているし、価値観を進化させていると感じています。

ただし、コミュニティを飛び越えて若い人とコミュニケーションを取るときには注意が必要です。50代は人生経験でマウントしようとしがちだからです。

アドバイスと称して「俺の話を聞け」と今では通用しないような経験談を話し始める。時代の変化が想像できずに、「僕が君くらいの頃は……」と上から目線で語りかける。

それで、食事代や飲み代をおごって「若者と交流した」と思っていると、若い人たちは潮が引くように離れていきます。彼らも暇ではありませんから、興味もない経験談、上からのマウントに付き合う義理はないからです。

自分に置き換えて、70代になった会社の元上司や先輩から「飲みに行こうよ」と誘われたら、どうでしょう? 行きたいと思えるのは、話を聞きたくなるような興味深い情報をくれる人だったり、自分では選ばないようなおもしろい店に連れて行ってくれる人だったり、何らかの気づきを与えてくれる先輩からの誘いのはずです。

教えるのではなく、教わる。語るのではなく、聞く。あなたが若い人と付き合うときも、聞き手に回ること。そして、提供できるバリューはどんどん与えていくことを心がけるべきでしょう。

50歳を超えたら、新入社員になったくらいの気持ちで、自らアウェー体験をして学び直す意識を持つことです。

若い人の聞き役になることは、明日から心がければすぐにできます。中間管理職として、上からの指示やノルマを優先するのが当たり前だと思っていたのなら、一呼吸おいて若手の声を聞いてみましょう。

教えてもらう気持ちを持って、聞いてみよう、吸収しよう、学んでいこうというスタンスで話を聞く。言いたいことがあっても、まずはぐっと我慢して、余計なことを言って話を遮らない。

その意識を持つだけで、コミュニケーションの質がみるみる変わっていきます。

 

seishun.jp

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PROFILE
本田直之

レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役。シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役としてJASDAQ上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資育成事業を行う。ハワイ、東京に拠点を構え、年の5ヶ月をハワイ、3ヶ月を東京、2ヶ月を日本の地域、2ヶ月をヨーロッパを中心にオセアニア・アジア等の国々を旅しながら、仕事と遊びの垣根のないライフスタイルを送る。(社)日本ソムリエ協会認定ソムリエ。アカデミー・デュ・ヴァン講師。明治大学・上智大学非常勤講師。