「大丈夫」はイエス? ノー? 外国人が混乱してしまう日本語

誘いを断る

いつも使っているのに、なぜそう言うのか聞かれると「?」となってしまう日本語、けっこうあるものです。日本語講師の岩田亮子さんが、外国人の生徒さんの「素朴で鋭い」質問から得た気づきを教えてくれます!

「ごはん、一緒に食べていく?」の「大丈夫です」はイエス? ノー?

「大丈夫」のもともとの意味は、「立派な男」。その語源は、古代中国・周の時代にまでさかのぼります。成人した男性のことを、背丈が「一丈」(約170〜180センチメートル)くらいあったことから「丈夫(じょうふ・じょうぶ)」と呼び、その中でも特に大きく立派な男性を「大丈夫(だいじょうふ・だいじょうぶ)」と言いました。

そこから、「強くてしっかりしているさま」や「あぶなげがなく、安心できる様子」、「間違いや問題がなく、確実な様子」を「大丈夫」と表現するようになったのです。「この建物は地震にも大丈夫だ」、「あの人に任せておけば大丈夫」、「時間は、まだ大丈夫だ」というように使います。

ところが、この「大丈夫」、普段の会話の中では、別の使い方も多くされています。「コーヒーのおかわり、いかがですか?」「大丈夫です」、「重そうな荷物ですね、持ちましょうか」「大丈夫です」というように、「やんわりと断る」使い方です。

意味合いとしては、「そんなお気遣いをしていただかなくても、大丈夫です」といったところ。「コーヒーのおかわり、いかがですか?」「いりません」と、きっぱりと断ってしまうのは、どうも気がひけるという場合に使われます。
せっかく声をかけてくれた相手を傷つけないようにという、日本人らしい気遣いとも言えるでしょう。

ただ、この日本人らしい気遣いによる使い方が、特に外国人に対する場合、相手を混乱させてしまうことにもつながりかねません。

例えば、「ごはんでも、食べていこうか?」「大丈夫です」という会話。「いいえ、食べなくて大丈夫です」なのか「はい、食べていきましょう」なのか、一瞬、戸惑いませんか。

こうした場合には、「はい、大丈夫です」「いいえ、大丈夫です」というように、イエスかノーかを明確にするようにするといいでしょう。

「赤い」「青い」って言うのに「緑い」「水色い」って言わないのはなぜ?

もう一つ、外国人の方が混乱してしまう日本語の表現に、「色」に関するものがあります。

現在、日本語で表現できる色の数は、どれくらいあるのでしょうか。
すぐに思いつくのは、赤、青、黄色などでしょう。日本工業規格では、じつに269色の色名が規定されていますが、一説には、日本語で表現できる色の数は500以上とも1000以上ともいわれています。

こんなにも多くの色名があるのですが、前述のようにもともと日本語には「赤」、「青」、「白」、「黒」しか色の名前がなかったそうです。そして、この4色に「黄色」と「茶色」の2色を合わせた6色が、古くから日本語で使われていた伝統的な色名とされています。

さて、これら伝統的な6色は、いずれも「色名+い」で形容詞となり、モノの色を表現できます。「赤い」、「青い」、「白い」、「黒い」、そして、「黄色い」と「茶色い」です。

じつは、この6色以外の色、例えば「緑」や「水色」などは、「い」をつけて「緑い」や「水色い」と表現することはできません。つまり、「色名+い」が使えるのはたった6色しかないのです。

色の表現は、日常生活でも仕事でもよく使います。色の表現に悩む外国人の生徒さんは、「ドンナ ルール デスカ?」と聞いてきます。そこで、まずは、「色名+い」が使えるのは「たった6色」ということを説明します。そして、さらに細分化して「〇+い」は「赤、青、白、黒の4色に使い」、「〇色+い」は「黄色と茶色の2色に使う」ことを理解してもらいます。

それでは、その他の色の場合は、どう表現したらいいのでしょうか。残りの色は、まとめて「〇色+の」で表現します。「緑」の場合は、「緑色のカーテン」といった表現、水色の場合は「水色のパラソル」といった表現になります。

ただし、「赤」や「青」、「黄色」でも、「赤色のマフラー」や「青色の手袋」、「黄色のシャツ」など「〇色+の」という表現で使うこともあります。

 

PROFILE
岩田亮子

日本語講師。大学卒業後、産業・経済専門紙記者を経て、2003年から現職。現在、外資系自動車会社をはじめIT部品メーカーなどのビジネスパーソンや外国人研修生を対象とした日本語研修、日本語学校での授業を担当。初めて日本語と日本文化に触れる外国人から、大学や大学院への留学を目指す外国人まで、「誰もが楽しく学べる」をモットーに日本語のレッスンを実施。外国人の生徒さんから寄せられる素朴な「日本語の大疑問」に日々新たな発見をしている。