「お金が増える」を子どもにイメージさせる
質問です。あなたはお金が好きですか?
私は、はっきり「お金が大好き」と言い切れます。でも「お金が大好き」と聞くと、欲深そうだという印象を持たれるかもしれません。
日本では、親子でお金の使い方を話すことにも、どこか遠慮がちという家庭が多いようです。ましてや「投資」となると、「子どもに投資の話をするのは早すぎるのでは……」「楽に稼げると勘違いして悪影響を与えるのでは……」と不安に感じられてしまうかもしれません。
しかし、お金は私たちが生きるため、学ぶため、いろいろなことを実現していくために必要なものです。そのお金を好きでいるのは、誰に迷惑をかけるわけでもなく、むしろいい効果しかもたらさないのではないかと思っています。
ですから、いつも私は子どもたちとお金の話をたくさんしています。その効果もあって、6人の子どもたちはそれぞれにお金のことを好きになり、理解して育っていると感じています。
お金のことが好きで、お金についてたくさん話をすると、子どもたちがこれからの人生で借金をつくってしまったり、クレジットカードを使いすぎてしまったりするという、お金の「しなくていい苦労」をする可能性を大きく減らしてくれます。
投資とはお金に働いてもらうこと
そのうえで、一歩進んでお金を増やす方法の一つである「投資」についても早くから学ばせていくべきです。実は、私たちがお金を増やすためにできることは、大きく分けて次の三つしかありません。
1 毎月の収入を増やすこと
2 毎月の支出額を減らすこと
3 運用などで手持ちのお金を増やすこと
お金は勝手に生まれるわけでも、増えてくれるわけでもありませんから、まずは「収入を得る」ことがすべての始まりになります。働いて、その対価として収入を得る。何を当たり前のことを……と思われるかもしれませんが、どのような働き方であれ、働かなければ得られないのがお金というものです。
次にできるのは「支出を抑える」こと。お金の使い方を見直し、必要ではない支出を減らしていきます。ここではすでに紹介した「消費」「浪費」「投資」の支出管理が役立ちます。うまく節約できれば、働いて得た収入が多く手元に残るようになるわけです。
お金を増やす方法の三つ目が「投資」です。
投資とは、利益を得る目的で金融商品や事業などに資金を投下すること。投資をお子さんたちに説明するなら、「お金に働いてもらって、増えてもらうこと」と説明してもいいでしょう。広い意味では銀行口座に貯金しておくことも運用の一種ですが、金利が非常に低い昨今では、預金していてもお金はほとんど増えません。
そこで、よりよいリターン(利回り)が期待できる投資先を選び、お金に働いてもらい、少しずつ増えていくようにしましょう。
子どもは“時間”という武器を持っている
運用は、少額からでも「始めてみる」ことが大切です。
これまで投資をしたことのない人ほど尻込みしがちですが、日本ではここ数年「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「つみたてNISA」など、長期分散投資ができて税制面でも優遇される制度が登場しています。子どもにも「ジュニアNISA」という制度が用意されています。
もちろん、投資には違いないのでまったくリスクがないとは言えませんが、長期的に見れば預貯金よりはるかに大きな利回りが期待できます。
たとえば、iDeCoを利用すると元本確保型の商品で積み立てをしながら、所得控除を受けて税金を安くすることができます。投資にどうしても抵抗があるという人は、検討する価値があります。
これからの人生100年時代、現役時代が終了したあとの30〜40年を年金などの国の保障だけでしのぐことは難しく、かといって自分の資産だけでなんとかなる人もほとんどいません。それはお子さんたちの世代にも言えることです。
私たちが確実にできるのは、気がついたときから可能な範囲で「お金に働いてもらう」というとり組みを始めること。老後2000万円問題が大きな話題になったのは、それだけの額を急につくることはできないからです。
しかし、コツコツと時間をかけてとり組めば、お金は増えていってくれます。子ども世代は「時間」という武器を豊富に持っているので、若いうちから投資を始めることの効果は絶大です。
「分散」「積立」「長期」がキーワード
また、お金に働いてもらうと、投資についてきちんと意識することになるため、資産が増える以上の好影響を家計にもたらします。
毎月、少しずつ投資にお金を回すには、お金の使い方を見直す必要があります。節約に興味を持ち、いろいろな節約法を学び、試すことが、投資の原資となるお金をつくる行動につながるわけです。
そうやって苦労してつくった大切なお金を投資するので、投資先への関心も自然と高まります。しかも、そこでじわじわと成果が出てくると、ますます家計全般が気になるようになってきます。
つまり、投資を始めることが日ごろのお金の使い方を見直すターニングポイントとなり、家計の無駄を省き、働いてもらうためのお金を捻出するサイクルが生まれるのです。
ただし、このサイクルは正しい投資を始めた場合にしか起こりません。正しくない投資をしてしまうと、家計のバランスを崩すおかしな循環が始まってしまいます。
では、これからお子さんたちと投資について話していくことを前提に考えたとき、正しい投資とはどのようなものでしょうか。
完璧な正解はありませんが、私が家計相談を通じて見てきた正しいお金の働き先は、リスクが低く、複数の商品を運用できる投資信託を積み立てていくような投資です。投資をこれから始めようと考えている初心者の方には、最適なやり方になります。
キーワードは「分散」「積立」「長期」で、これを一つで実現してくれるのが前述した「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「つみたてNISA」、「ジュニアNISA」です。
買ってはいけない金融商品もある
逆に、あまりおすすめできない金融商品もあります。それが金融機関や証券会社がすすめてくる毎月分配型の投資信託。「毎月、少しずつ配当がもらえますよ」というのが売り文句です。
毎月分配型の投資信託は、おトクに見えて本当は損ということもあります。というのも、分配金には税金がかかります。本来は年に一度の分配金が毎月入ってくるとなると、税金面でのコストは増大し、投資効率が悪くなります。
また、投資環境が良好で収益を上げられているときならいいですが、相場が不調で投資信託が収益を十分に出せていないと、分配金を毎月出すのが重荷になります。
すると、運用の収益から分配金を出すのではなく、元本を削って分配金を捻出することになります。元本をとり崩してしまうようでは、積立投資の意味がありません。どの商品に投資するかは、慎重に検討しましょう。
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表。お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の問題の抜本的解決、確実な再生を目指し、これまでの相談者数は2万3千人を突破。各種メディアへの執筆・講演も多数。個人のお金の悩みを解決したいと奔走するファイナンシャルプランナー。

- 作者:横山 光昭
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