中学受験における親の仕事は“問題の取捨選択”と“スケジューリング”

親がスケジュールを管理

親が積極的に子どもの勉強に関わってきた記憶がないという世代の人は、最近の中学受験の常識を知るとビックリするかもしれません。今の中学受験では膨大な量の勉強をしなければならないため、宿題の取捨選択をしたりスケジューリングをしたりするのが親の“当たり前”の、重要な仕事になっているのです。その具体的な方法を、5,000組の家庭を見てきた中学受験指導の第一人者である西村則康先生に教えてもらいます。

「○△×法」で問題を仕分けする

真面目な親御さんほど、塾から出される宿題と復習をすべてこなそうとします。しかし、まず大切なのは宿題より復習。それも、塾で習った問題を、答えを見ずにもう一度解いただけでは意味がありません。単に解答欄に書いた数字を覚えていただけでは、復習にならないからです。

復習というのは、塾の授業で習ってきたことをしっかり定着させて、類題や発展問題にも使える状態にするためのものです。基本的なやり方は全教科同じ。こうした復習の時間にとても役立つのが、私が考案した「◯△×法」です。

これは、塾で授業を受けているとき、すべての問題に「◯」か「△」か「×」のマークをつけて分類してしまう、という簡単な方法です。大問ではなく、小問ごとにつけさせてください。

○=同じような問題が出ても必ず解けるという自信があるもの
△=そこまでは自信がないもの
×=さっぱり理解できなかったもの

基準はこれだけです。塾の復習の基本はその日授業でやった問題を全部もう一度解き直すことですが、集中的に取り組むべきなのは「△」がついている問題です。

お母さんは、子どもが「△」をつけてきたところをもう一度やり直させ、子どもに先生になってもらって、説明させてみてください。

この「ミニ授業」は大変効果的です。お母さんは、子どもが説明しているときに口をはさまず、たどたどしい説明でも一生懸命生徒として聞いてください。お母さんに「教える」ことによって、あやふやだった部分がはっきりわかり、自信をもつことができます。

「◯」の問題は時間がなければやり直さなくてもいいですし、「×」の問題のほとんどは、今はやらなくてもいい問題、またはやれない問題と考えてください。教えるプロである塾の先生が一生懸命説明したにもかかわらずわからなかったのですから、自力でわかるようになるのはほぼ不可能です。次によく似た単元を学習するときにはわかるようになっていることを期待して、その問題には手をつけないのが正解です。

実は大切な「できなくてもいい問題」の見きわめ

「×」の問題については、場合によっては「やる必要がない」と言いました。塾で学習する問題には、以下の4つがあります。

①今解けて当然の問題
②今解けるようにすべき問題
③今は解けなくてもいずれ解けるようにすべき問題
④最後まで解けなくてもいい問題

1日の授業や宿題に、これが全部含まれていることもあります。毎日の学習で一番必要なのは①と②です。「×」だったものが①か②だったら、必ずできるようにしておく必要がありますが、③や④が「×」だったら、実はほうっておいてかまわないのです。

この判断は難しいかもしれませんが、塾のテストが終わってからもらってくる「正答率」を参考にしてください。つまり、正答率が非常に低いものは、超難関校を目指すわけではないのなら、最後まで解けなくてもかまわないということになります。

おおまかに言うと、超難関校以外の難関校を志望するなら、「正答率30%以下」のものは解けないままでかまいません。超難関校を目指すなら、20%以上30%以下も「いずれ解けるようにすべき問題」に分類されます。

また正答率20%以下の問題の解法を無理に教え込んで解けるようになっても、それだけで超難関校に合格できるわけではありません。

今現在の子どものレベルや志望校などによって、①と②を集中的に学習することがもっとも効率よく力を伸ばす方法です。

◯△×法は、宿題やテスト直しでも使えますから。ぜひやってみてください。時期によりますが、「×」にばかりとらわれていると時間をムダにしてしまうからです。

また、お母さんが「うちの子は簡単な問題は解けるけど、難しい問題が解けなくて困っています」という場合、実は難しい問題以前に、テキストの「例題」がきちんと解けていないことが非常に多いのです。

ある問題で「難しい」とつまずいているようだったら、試しに塾のテキストの例題を解かせ、「お母さんに教えて」と説明させてみてください。

例題が解けていない状態で次のレベルの問題をいくらやっても、解けない問題がどんどん増えていくばかりで、時間も体力も気力も失われてしまいます。

難しい問題を「頑張れ」と無理強いせず、まず例題をしっかり理解させるようサポートしてあげてください。

「目的」から逆算してスケジュールを立てる

また、中学受験では先の予定を見据えておき、そこから逆算したスケジュールを立てることも親の大切な仕事です。たとえば、2月からのクラスが1月のテストで決まるなら、前年11月から準備をする必要があります。

それとは別に、受験日から逆算した準備も必要です。逆算のテクニックは、あらゆる局面で大切だということを忘れないようにしてください。

たとえばある塾では、6年生の7月から「志望校別特訓クラス」が始まります。志望校がもう決まっている段階で、対象の中学向け対策クラスがあるなら絶対に受講すべきです。

しかしここでも「受講資格」は限られます。この塾では6年生の5月、6月の学力テストのどちらかで「指定偏差値」をクリアすれば志望校別特訓クラスに入ることができます。最終目標は志望校への合格ですが、まずはこのクラスに入るほうが先決です。

5月と6月、チャンスは2回あるとは言うものの、5、6月は学校行事が多く準備に集中できない時期。つまりもっと早い時期から準備して、5月のテストをクリアしてしまったほうがいいということになります。

この塾の学力テストは、6年生の4月からレベルがぐんと上がります。5年生までのテストのつもりで4月のテストを受けると、戸惑うことがあるでしょう。

そこで、まずは4月のテストを5月のテストの予行演習と考えます。つまり3月から準備を始めて4月のテストを受け、結果がよければ大きな修正なしに5月のテストに臨めます。そして、もしそこで指定偏差値に届かなくても、もう1カ月猶予はあるわけです。

そう考えると、6年生7月からの「志望校別特訓」を受けるのにもっとも大切な時期は3月だということがわかるでしょう。これが、「逆算」の大切さなのです。

塾のシステムやテストの意味、受講資格などを知ったうえで常に逆算し、子どもに「今何をすればいいか」を伝えていくのです。中学受験で親がすべき最大の「仕事」とは、スケジュール管理に他なりません。

1日、1週間、1カ月、1学期、そして1年、3年というそれぞれのスパンでのスケジュール管理をやり抜いた親子が、受験の勝者になるといえるでしょう。

 

PROFILE
西村則康

30年以上、難関中学・高校受験指導一筋のカリスマ家庭教師。日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から、「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。また、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイス。これまで開成中、麻布中、武蔵中、桜蔭中、女子学院中、雙葉中、灘中、洛南高附属中、東大寺学園中などの最難関校に2500人以上を合格させてきた実績を持つ。テレビや教育雑誌、新聞でも積極的に情報発信を行っており、保護者の悩みに誠実に回答する姿勢から熱い支持を集めている。また、中学受験情報サイト『かしこい塾の使い方』は16万人のお母さんが参考にしている。

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