「がんばらない」のに成果10倍! グーグル流働き方の極意とは 

「がんばります!」が仕事における口ぐせになってはいませんか? グーグルのように‟新しい未来”を創るニューエリートは、あれもこれもこなそうとするのではなく、「ムダを捨てること」をもっとも大切にしています。つまり「がんばらない」のです。どうして「がんばらない」ことが生産性を高めることになるのか、元グーグル人材育成統括部長のピョートル・フェリクス・グジバチ氏が解説します。

グーグルの急成長は仕事を「捨てた」から!?

よく言われている通り、日本人は忙しすぎます。僕はグーグルを独立してからいろいろな会社の経営や組織を日々見ていますが、その中でも日本人は群を抜いて働いています。「疲れ切っている」といって差し支えないでしょう。

しかし、そこまで働いているのに給料は上がらず、残業の多さも解決していないのはなぜなのでしょう。

生産性の低さもしばしば指摘されている問題です。日本生産性本部の「労働生産性の国際比較2017年版」によると、日本の時間あたり労働生産性はOECD加盟35カ国中20位。1位のアイルランドの半分程度しかない、といいます。

こうしたデータは、日本人は「がんばっている」のに、結果的にとても非効率な働き方になっていることを示しています。

日本人が忙しいのは、不要な仕事までがんばってしまっているから。そのせいで疲れてしまい、大きなアウトプットを出しにくくなっている、ということです。

では仕事を、「がんばらない」、「捨てる」という方向へ変えようと言うと、「捨てて楽になる」というストーリーを想像する人も、多いかもしれません。

ムダな仕事を減らせば楽になれる。残業せずに家に帰り、家族とゆっくり過ごせる。好きな趣味に打ち込む時間も作れる……。もちろんそれは素晴らしいことで、すぐにでも実践して頂きたいことの1つです。

捨てるのは、楽になるため。最初はそんな動機でいいと思います。でも、それだけだとちょっともったいないと、僕は思います。

本当に「楽になる」だけでいいのか、考えてみたことはありませんか?

捨てる目的は、別のところにあります。まずは不要な仕事を減らし、楽になり、頭を整理すること。そうしてより効率的に、より価値の高い仕事に時間を投下することで、生産性を爆発的に高めること。より多くの人の役に立ち、自己実現を果たしていくこと。

それが「捨てる」本来の目的なのです。

僕が以前働いていたグーグルは、常に「10x(テンエックス)」、つまり「今の10倍の成果をあげよう」としている企業でした。1割、2割の生産性アップではなく、いきなり10倍なのです。

それが絵に描いた餅に終わらなかったのは、グーグルの社員たちが、誰よりも効率的に、つまり「楽に」働けるよう、工夫をこらしていたからです。

それも、作業を1分1秒短縮するといったレベルの工夫ではありません。10倍の飛躍を目指すからには、過去の延長線上の発想では全く足りません。仕事の仕方そのものを見直す必要があるのです。

その結果としてのグーグルの急成長と、世界にもたらしているインパクトの大きさは、まさに劇的なものです。

グーグルは、1998年にラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンの手によって創業されました。それからわずか20年足らずのうちに、企業価値は15兆円を超えました。年間の生産性は、従業員ひとりあたり1259万円。ちなみに同じ計算をすると、日本の大手企業であるパナソニックの生産性は300万円、日立製作所は311万円です。

がんばらず、不要なものは捨てて効率よく働いて4倍もの生産性。

「捨てる」は、これほどの生産性を実現するための、カギとなるものにほかなりません。

不要な仕事を捨て、やるべき仕事にフォーカスできれば、誰でもグーグルのように「世界にインパクトを与える」仕事ができるのです。

「フロー」で課題解決能力は4倍に

そもそも、ただ楽になっただけでは「つまらない」うえに、仕事に集中できず、したがって、生産性も発揮できません。

先ほど、グーグルで働く人たちはがんばらないのに生産性が高いと言いました。どうしたらそんなことができるのでしょうか。

1つの答えは、ごくシンプルに「集中しているから」です。

心理学でいう「フロー状態」をご存じでしょうか。趣味でも仕事でも、時間を忘れてしまうほど何かに没頭しているときに、しばしば生じる精神状態のことです。

フロー状態に入ると、最高のパフォーマンスを発揮できると同時に、心にも余裕ができ、充実を感じられます。どんな難しい課題も解決できるという自信が生まれます。

同じことはビジネスパーソンにも起こります。職場に「あの人はいつでもエネルギッシュに動き回っていて、まるで疲れ知らずだ」と感心してしまうような人がいませんか? その人は、フロー状態に入っている可能性が高いといえます。

フローにどれほどの効果があるかというと、フローを研究しているシンギュラリティ・ユニバーシティの Flow Genome Project は、次のように発表しています。

・創造性・課題解決能力が4倍になる

・新しいスキルの学習スピードが2倍になる

・モチベーションを高める5つの脳内物質(ノルアドレナリン、ドーパミン、エンドルフィン、アナンダミド、オキシトシン)が放出される

・痛みや疲労を感じなくなる

これほどに、フローの威力は絶大です。

しかも、望めば誰でもフロー状態に入ることができるのです。

これを仕事に応用できれば、疲れずに短時間で、高いアウトプットを得られるのは間違いありません。

ただし、フロー状態に入るにはいくつかの条件が整う必要があります。 みなさんも、経験的に「そんなに長い時間、集中できるのかな……」と感じているのではないでしょうか。

Flow Genome Project のスティーブン・コトラー教授によると、現実的には、平均的なビジネスパーソンだと8時間労働のうち30分、つまり1日のうち5%しかフロー状態に入れないと言われています。それ以外の時間は集中できず、なんだかダラダラしてしまうというわけです。

裏を返せば、フロー状態に入る時間が長くなるよう、意識的に集中力をコントロールできれば、生産性をアップさせる効果が大きいということになります。前出のスティーブン・コトラー教授も、「1日のうち1時間半程度でもフロー状態に入れたら、生産性は2倍になる」と述べています。

では、どうしたらフロー状態に入れるのでしょう? 「捨てる」というキーワードに絡めて、ぜひ紹介したいポイントがあります。

1つは、仕事の難易度(チャレンジの有無)とスキルとのバランスです。

ベストなバランスは、「少し手を伸ばせば届く」ぐらいの、高めの目標設定です。スキルが高い人が楽な仕事ばかりしていても、集中力は高まりません。もっというと、退屈で苦痛です。フロー状態にはなれません。

反対に、スキルがないのに難度が高い仕事をすると「失敗するのではないか」という恐怖を感じます。ここでもフロー状態には入れません。

ほかにも、ハイリスク・ハイリターンの仕事に挑戦する、ルーティンの仕事ばかりでなく、新しくて予想がつかない仕事や複雑な仕事をする、などのポイントがあります。

いずれにせよ、「楽」であることが集中力の妨げになるということがわかると思います。

難易度とスキルのバランス

理想は「忙しいけれど仕事を楽しんでいる状態」をつくることです。

あるいは、忙しいけれど学んでいる、忙しいけれど好奇心をもって仕事をしている状態をつくることです。

こうしたバランスのとれた状態をつくると、フロー状態に入りやすくなります。仕事に集中し、高いパフォーマンスを発揮すると同時に、仕事を楽しみ、仕事を通じて自己実現できているという感覚を得られるのです。

余計な仕事を「捨てる」のは、こうしたバランスのいい状態をつくるためのファーストステップだと考えてください。「がんばる」とはベクトルが違うことがご理解頂けると思います。

「がんばる」のではなく、まずは楽になり余裕をつくること。それから仕事内容を見直し、自分にとってより価値の高い仕事にフォーカスできるようにすることが大切なのです。

 

seishun.jp

PROFILE
ピョートル・フェリクス・グジバチ
プロノイア・グループ株式会社代表取締役/モティファイ株式会社取締役チーフサイエンティスト。プロノイア・グループにて、企業がイノベーションを起こすため組織文化の変革コンサルティングを行い、その知見・メソッドをモティファイにてテクノロジー化。2社の経営を通じ、変革コンサルティングをAIに置き換える挑戦をする。 ポーランド生まれ。2000年に来日し、ベルリッツ、モルガン・スタンレーを経て、2011年、Googleに入社。アジア・パシフィック地域におけるピープル・ディベロップメント(人材開発)に携わったのち、2014年からはグローバル・ラーニング・ストラテジー(グローバル人材の育成戦略)の作成に携わり、人材育成と組織開発、リーダーシップ開発の分野で活躍。2015年に独立し現職。 著書に『リラックスイングリッシュ』(KADOKAWA)『日本人の知らない会議の鉄則』(ダイヤモンド社)、『世界最高のチーム』(朝日新聞出版)等がある。