ヨットはなぜ風に向かって進む? 意外に知らない科学知識3選

私たちの身の回りでおこるさまざまな現象には、科学のチカラが働いています。普段は見逃しているけど、あらためて考えると不思議なことがたくさん! 学校では教えてくれなかった“科学の小ネタ”を3つご紹介します。

ヨットはなぜ風に向かって進むことができるの?

風に吹かれて進むヨットはとても優雅。でも、エンジンがないのに風上の目的地点に向かって進むこともできるのは、ちょっと不思議じゃありませんか。

ヨットが風上に向かって進めるのは、帆の形が関係しています。これ、実は飛行機が飛ぶ原理と同じなんです。そこで、まず飛行機が飛ぶ原理から説明しましょう。

飛行機を横から見ると図のようになります。ポイントは翼の形。前方から勢いよく風を受けると、翼にぶつかった空気は、翼の表と裏に分かれます。

ベルヌーイの法則

ベルヌーイの法則

両方の空気が翼のうしろまで流れると、翼の丸い側(表側)に向かって、翼を持ち上げるように力が生じるため、飛行機が飛べるのです。この力を揚力といい、この法則を「ベルヌーイの法則」といいます。

さて、ヨットの帆も同じ形をしているので、帆が受けた風は表と裏に流れ、図のAの方向に揚力が生じます。そうすると、ヨットはAの方向に移動するように思えますが、そうはなりません。

ヨットはなぜ風に向かう?

実は、ヨットの水面下にはセンターボードという長い板がついていて、ヨットが横方向に動かないように抵抗し、Cの方向に力を出します。

ですので、AとCの力が引っ張り合った結果、力の合成でDの力が生じます。それで風の吹いてくる方向に対して、40~45度の方向に進むことができるのです。

これを繰り返してジグザグに進んでいけば、風上の目標地点に到着することができるというわけです。

KEYWORD 力の合成→飛行機が浮く原理と同じ

湿った空気と乾いた空気、重いのはどっち?

日常の経験から、「湿った空気は、乾いた空気よりも重い」と思っている人が多いようです。本当でしょうか。

まず確認しておきますが、湿度の高い空気というのは、乾いた空気の中に、水蒸気が含まれている状態です。

ところで、乾いた空気の約78%は窒素で、約21%が酸素、残りわずかに二酸化炭素などが含まれています。

したがって、湿った空気は図のようなイメージで、水蒸気が空気中の酸素や窒素と「置き換わっている」ということなのです。

湿った空気は乾いた空気より軽い

湿った空気は乾いた空気より軽い

注意しなければいけないのは、酸素や窒素の個数に水蒸気が「足されている」のではありません。

もし「足されている」のであれば、湿った空気のほうが気圧が高いことになります。しかし、広い範囲で考えると、気体は圧力の高いほうから低いほうにすみやかに移動するので、やっぱり圧力が均一になります。これは、水蒸気が窒素、酸素に「置き換わった」状態と同じです。

ということは、問題は酸素、窒素と水蒸気の重さを比較すればいいわけです。分子の重さの比は、分子量でわかります。酸素(O2)の分子量は32、窒素(N2)の分子量は28です。

これに対して水蒸気(H2O)の分子量は18しかありません。ですから、湿った空気のほうが軽いのです。

ただし、水蒸気が液体の水になると、水分子が2~5個ぐらいつながって空気よりも重くなるので、どんどん落ちてきます。

つまり「湿った空気が下にたまる」と思っているのは、水蒸気が水となって落ちてきて、カビや結露になっているのを見ているからなのです。

KEYWORD 分子量を比べる→水蒸気が酸素や窒素と置き換わっている

「音を出して音を消す」イヤホンの原理

うるさい音が聞こえてきたら、あなたはどうしますか? 耳をふさぐ、布団をかぶる、窓を二重サッシにかえるなど、「防御」するというのがこれまでの考え方ですね。

ところが、「毒をもって毒を制す」ではありませんが、根本的に別な方法もあるのです。それは、こちらからも音を出すということ。

そもそも、音は波ですから、2つの波が重なると、干渉して、強めあったり、弱めあったりします。

ですから、図のように騒音をそっくりまねて、波形の正負が逆になるような音(「位相が180度ずれた音」)を瞬時に作り出して、こちら側から騒音を消したい場所に向けて出してやれば、音が干渉して騒音がなくなるのです。

音に音をぶつける

このような方法を、アクティブノイズコントロールといいます。すでに高級車でエンジン音を消したり、冷蔵庫の騒音を消したり、携帯電話で騒音だけを消したり、イヤホンやヘッドホンからもれる音を消したりして実用化されています。

この技術、考え方自体は新しいものではないのですが、最近になって急速に実用化されるようになったのは、「マイクで騒音を拾い、高速演算装置を使って瞬時に逆の波形を作り出す」のに必要な高速デジタル信号処理技術が発達したからです。

KEYWORD 波の干渉→逆の波形を作り出す

 

 
PROFILE
瀧澤美奈子[監修]

社会の未来と関係の深いさまざまな科学について、著作活動等を行う。2005年4月、有人潜水調査船「しんかい6500」に乗船。著作に『日本の深海』(講談社ブルーバックス)、『地球温暖化後の社会』(文春新書)、『アストロバイオロジーとは何か』(ソフトバンク)など。内閣府審議会委員。文部科学省科学技術学術審議会臨時委員。慶應義塾大学大学院非常勤講師。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。

身近な疑問がスッキリわかる理系の知識

身近な疑問がスッキリわかる理系の知識

  • 発売日: 2017/05/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)