敏感すぎる人(HSP)が人間関係でひそかに困っている6つのこと

敏感すぎるため傷つきやすく、疲れやすいHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)の人は、人間関係でも苦労が絶えません。日常生活の中で悩むことが多いであろう6つのシーンを想定し、その対処法について、日本におけるHSP研究の第一人者である長沼睦雄先生に教えてもらいました。

[シーン1]人の気分に左右されやすい

自分と他人を区別する境界線が薄いのが、多くのHSPの特徴です。そのせいで、まわりの人の気分が自分の中に入ってきて、影響されやすくなります。そばにいる人が落ち込んでいると、その影響を受けて、関係ないはずの自分まで落ち込んでしまい、その日1日、気分が沈んだままになってしまうこともあるのです。

[どうすればいい?]

落ち込んでいる人には近づかないようにするなど、極力、接触を避けましょう。どうしてもそばに行かなければならないときには、用件や話などに意識を集中して、相手のマイナスの感情に心を引っ張られないようにすることが重要です。心の持ちようを変えて、他人のマイナスの感情をブロックするのです。

会った人がたまたま落ち込んでいた場合には、その人のマイナスの感情をモロに受けてしまうでしょう。このような場合は、その人と別れたあと、1人になれる場所へ行き、その嫌な気分を架空のゴミ箱に吐き出すのがおすすめです。これは「ライオンの吐き出し」という心理技法の1つです。

まず、目の前に架空のゴミ箱があるとイメージし、前屈みになります。そしてライオンが吠えるときのように、思いきり舌を前に突き出し、マイナスの感情を一気に腹の底からウエーと声を出して、吐き出します。マイナスの気分が実際に吐き出されていくさまをしっかりとイメージしながら行うのがコツです。この方法は、マイナス感情の解消にとても効果があります。

また、人のマイナス感情に影響されるのは、境界線が薄いためです。境界線の強化のためのイメージトレーニングを毎日5分ずつでも行いましょう。目をつぶり、自分のまわりに境界線がめぐらされている場面をイメージし、その存在が感じられるようになるまで、練習をくりかえすのです。

しだいに境界線を強く意識できるようになり、人と会っていても、強固な境界線で守られているのを感じられ、相手のマイナス感情をブロックできるようになります。これはアーロン博士おすすめの方法です。

[シーン2]大人数の飲み会や会合で、気おくれする

多くの内向型のHSPは、大人数の飲み会や会合のような場が大の苦手です。会場に入っただけで圧倒されて、たちまち敏感なセンサーがより過敏に反応し出します。よく知らない人と軽い世間話などをするのはもともと不得意なうえに、神経が高ぶっているので、よけいに頭がまわらず、黙りがちになります。

結局は、隅のほうで1人ぽつんと、ぎこちなく立っていたりするのです。

 [どうすればいい?]

まず、どうしても行かなくてはいけない会合以外は、遠慮するというのも手です。HSPがラクに生きていくためにやめなければならないのは「頑張りすぎること」「合わない環境に身をおくこと」「たくさんのことを抱え込むこと」。自分を消耗させるとわかっていて、断っても問題ないような会であれば、行かないという選択肢もあることを認識しておきましょう。

そうはいっても、すべての会合や飲み会などを断ることはなかなかできません。そのような場合は、話す内容をあらかじめ準備し、練習しておくのとよいでしょう。天気の話でも、世間を騒がせている話題でも構いません。

話のきっかけとなりそうなネタをしっかりと準備していき、当日、沈黙に陥りそうなときには、その話題を振ってみるのです。話のネタをきちんと準備できていれば、それを支えに、初対面の人とも落ち着いて話すことができるでしょう。

また、無理して「話さない」という選択肢もあります。HSPにはもともと聞き上手の人が多いので、にこやかな笑顔を浮かべ、相手の話にじっくり耳を傾けていれば、いつの間にか、まわりには多くの人が集まっているかもしれません。

苦手な会合のあとは、自分の安心できる場所で自分の心と体を休めることを忘れないようにしましょう。無理をしたと思ったら、それを取り返すようにしっかり休みを取ること。こうして、敏感すぎる自分のバランスを保つことが重要なのです。

[シーン3]急な予定変更でパニックになる

予定を急に変更されたり、直前にキャンセルされたり、出かける前によりによって子どもが駄々をこねたり……。HSPは、予定外の出来事が苦手です。繊細な神経が異常に高ぶり、脳の血流が増え、頭がうまくまわらなくなってしまうからです。

[どうすればいい?]

まずは、爆発しそうな感情や行動を抑える「タイムアウト法」と呼ばれる方法を実践しましょう。これは、自分の中で生まれる突発的な怒りの噴出を抑える方法として知られているのですが、動揺したときや混乱してしまって、心の中がパニック状態になりそうなときにも使うことができます。

突発的な興奮や動揺は、6秒間あれば収まるとされています。カッと頭に血が上ったら、深呼吸をしたり、その場から離れてトイレへ行くなどして、とにかく6秒間それを抑えるのです。これで心はしだいに落ち着いてきます。

また、より根本的な方法としては、感情の記録を取ることがおすすめです。いつ、どのようなきっかけでパニックになってしまったか、どのような感情がわき上がったかなどを書き出すのです。記録をつけているうちに、自分の心のパターンがわかり、自分の心の混乱の多くが、心の中にしみついた「べき思考」から生まれていることに気づくかもしれません。約束や予定は守るべき、といった考えが「べき思考」です。

心の中からわき出してくる「べき思考」を意識的にはずすようにふだんから心がけてみれば、「予定通り、約束通りにはいかないこともあるよね」といった柔軟で、寛容な見方もできるようになり、時間はかかるかもしれませんが、予定外の事態が起きても落ち着いて対応できるようになるでしょう。

ただ、パニック状態になりそうなときに「べき思考」をはずせと言われても無理な相談。そうしたときはまずはタイムアウト法で突発的な感情の乱れを抑え、そのあとで「ライオンの吐き出し」で、マイナスの感情を吐き出しましょう。

[シーン4]まわりの人にHSPを理解されない

HSPは敏感すぎるゆえに疲れやすく、仕事でもプライベートでも無理がきかないことが多々あります。また、1人で静かに過ごす時間を確保しないと、具合が悪くなることも。

しかし、HSPの認知度が低い日本では、親しい家族や恋人、親友にさえも、その症状やつらさを理解してもらえず、怠け者だとか、つき合いが悪いとか思われてしまうことが多いようです。このことが、HSPの悩みをさらに深刻にしています。

 [どうすればいい?]

家族や恋人、親友など自分にとって大切な人には、自分がHSPであることを打ち明けるとよいでしょう。大事な人との関係をよりよいものにするためにも、私はカミングアウトは大切だと考えています。カミングアウトを受けてはじめて、相手はあなたのふるまいがHSPのためだったと知ることができるのです。

よりスムーズに理解してもらうためには、自分についての「取扱説明書(トリセツ)」を作成することがおすすめです。トリセツには、HSPとはどのようなものかを端的かつ、わかりやすくまとめておき、さらに自分の現状を踏まえた次の3つの要素をリストにします。

①自分が困っていること
②それに対して自分が行っていること
③相手に行ってほしいこと

③だけでなく②があることで、相手にお願いするだけでなく、自分が状況改善のために努力していることも自然に伝えられます。

職場などでも、自分の敏感さゆえに体調を崩したり、仕事がうまく回らないようになっているときは、信頼できる上司や同僚にHSPについて伝えるのがよいでしょう。

そのときも、うまく伝えられるように自分のトリセツをつくってみます。全員に理解される必要はありません。プライベートでも仕事でも、1人でも周囲に理解者がいるだけで、状況は大きく変わるはずです。

[シーン5]職場でまわりの目が気になる

HSPはだれもいない場所で、1人黙々と仕事をするのは得意ですが、神経が敏感なこともあって、職場などでは音や人の話し声などが気になって集中できないことが多く、だれかに自分の仕事ぶりを見られていると、必要以上に緊張してしまいます。
その結果、ミスが増え、仕事がなかなか片づかないまま、本来の力を発揮できずに「無能な人」という烙印を押されかねません。

[どうすればいい?]

外部の刺激を遮断する工夫をします。パーテーションで自分のデスクのまわりを囲んだり、デスクのまわりに観葉植物などを並べたり、好きな言葉をデスクまわりに貼りつけてみましょう。物理的にも精神的にも他人が侵入できない「安全で安心できる空間」を、自分のやり方でつくり出すのです。

耳からの刺激をシャットアウトするには、耳栓やイヤホンなどが効果的です。職場によってはむずかしいかもしれませんが、イヤホンなどで集中できる音楽を聞きながら仕事を行えば、外からの音をシャットアウトするのと同時に、集中力を高めることもできます。

また、自分の好きな感覚を取り入れることも、気持ちを落ち着かせ、集中力を高めるのには効果的です。たとえば、やわらかな触感が好きな人であれば、ストレスボールなどと呼ばれるウレタン製のやさしい触り心地のボールを持ち歩くのもよいでしょう。自分の好きな触感のものを握れば、気持ちが落ち着いてくるはずです。

さらに、集中力がなくなって、仕事ができなくなるのは、神経が過敏なHSPに特有の、脳の疲労が関係している可能性もあります。そこで、脳の疲労を解消して、集中力を高めるサプリメントの助けを借りるのもおすすめです。コエンザイムQ10、マルチビタミン、DHA、EPAなどは脳に働きかけ、その疲労を和らげる効果が認められています。これらを試すのもよいでしょう。

[シーン6]人混みで疲労困憊する

騒音、不快なにおい、人いきれなど、五感への刺激で充満している雑踏は、敏感なHSPにとって苦手な場所の1つです。雑踏にいるだけで、ぐったり疲れて、体調を崩してしまったりします。雑踏から受ける刺激やストレスが、HSPの体に負担をかけることで、自律神経のバランスが崩れ、免疫力が低下することもあります。

[どうすればいい?]

まずは、自分が人混みでは人一倍疲れやすい体質であることを自覚しましょう。そして、混雑している場所をなるべく避けるようにします。やむをえず出かけなければならないときには、雑踏が発する刺激を遮断する「お守り」を用意するのです。

お守りは、なんでも構いません。神社で購入したお守りでも、好きな本や写真でも、自分が納得できるものならいいのです。そして、それを持って出かけ、人混みの中では、「この写真が雑踏の刺激から自分を守ってくれているんだ」などと、自己暗示をかけるのです。

もう少し高度なのが、お守りを使って行う「カプセル化」です。お守りに触ると、カプセルに入った自分の姿が浮かぶように、イメージトレーニングをします。これができるようになれば、雑踏の中でも、想像上のカプセルが不快な刺激からあなたを守ってくれるでしょう。

ラグビーの五郎丸選手ですっかりおなじみになった「ルーティン」もあなたを守ってくれるかもしれません。五郎丸選手は大変なプレッシャーの中で、ルーティンを行うことで安心感が得られ、いつも通りの動きができたのです。

まず、どんな動作でもいいので動きを決めます。胸に手をあてるなど簡単なものがよいでしょう。そして、「マイ・ルーティン」が決まったら、毎日かならず、たとえば、出かける前にその動作を行いながら、「これで私は守られる」などと唱えます。ルーティンとしてあなたの中で確立されるまで、最低でも3週間は続けましょう。

自分のルーティンが確立できたら、雑踏だけでなく、苦手な人に会うときなどにも、それを行います。安心感が広がり、動揺も抑えられるでしょう。

 

seishun.jp

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PROFILE
長沼睦雄

北海道立緑ヶ丘病院精神科医長。日本では数少ないHSPの臨床医。平成12年よりHSPに注目し研究。北海道大学医学部卒業。脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。平成20年より道立緑ヶ丘病院精神科に勤務し、小児と成人の診療を行っている。発達障害、発達性トラウマ、愛着障害などの診断治療に専念し、脳と心(魂)と体の統合的医療を目指している。

「敏感すぎる自分」を好きになれる本

「敏感すぎる自分」を好きになれる本

  • 作者:長沼 睦雄
  • 発売日: 2016/04/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)