資産のはずが不良債権…「住まない実家」はいつ売るのがベストか

相続をすればお金が入って得をする――。そう考えている方が多いでしょう。かつては相続する財産のために、子どもたちが骨肉の争いをするという話があちこちにありました。しかし、最近は相続することで「厄介なもの」を押しつけられるのを嫌い、きょうだいで「実家」を押し付け合うというケースも増えています。相続案件実績で日本一を誇る税理士法人レガシィに、実情を教えてもらいました。

空き家を維持するにはさまざまなコストがかかる

親から資産を相続したとき、預貯金なら現金が入ってきて、株券や有価証券も少なくとも財産はプラスとなります。借金の相続という特殊なケースは別として、こうした相続は、少なくとも損にはなりません。

ところが、土地や家屋のような不動産を相続したとなると話は違ってきます。場合によっては、厄介なものを背負いこむことになりかねないのです。

もちろん、相続した家に住むのなら問題はありません。多少の相続税がかかるかもしれませんが、自分の家に住むという大きなプラスがあります。相続税にしても、相続した家に住む場合には大幅に軽減される措置があります。

問題なのは、すでに子どもたちがみな自宅を持っているのに、亡くなった親がひとりで住んでいた場合です。そうなると、子どもたちは家を相続しても、そこに住む必然性がありません。結果的に、相続した実家が空き家になってしまうのです。

空き家を維持するには、金銭の面でも、さまざまなコストがかかってきます。維持するための労力や時間もばかになりません。こうして、「住まない実家」を相続したことで、かえって“相続貧乏”になるというケースが増えてきたのです。

きょうだいで「実家」の押し付け合いも

今、日本では「空き家」問題が深刻になりつつあります。2014年7月に発表された総務省のデータでは、全国の空き家の数は820万戸。総住宅数に占める割合は13.5%となり、過去最高を更新しました。つまり、ほぼ7軒に1軒が空き家になっている計算です。野村総研の試算では、2040年にはなんと全体の4割が空き家になるといわれています。

昔は、相続して実家を手に入れれば万々歳でした。バブル崩壊前は、「土地とお金どっちがいい?」といわれれば、誰もが「土地」と答えていました。土地の価格は常に右肩上がりだという「土地神話」が信じられていたからです。

ところがバブルがはじけるとともに、そうした土地神話も崩れました。所有する土地の価格は、時間がたっても上がらないどころか、下がることも珍しくなくなったのです。しかも、土地や家屋は、固定資産税をはじめ、維持のコストがかかります。

相続で現金をもらえれば、処分する(つまり、お金を使う)費用もいりませんし、維持費もかかりません。しかも何に使ってもかまいません。ところが、相続で不動産をもらうと、元本保証がありません。相続した時点より下がるケースもあります。また、売買するときには仲介手数料がかかりますし、名義変更するときにもお金がかかります。

そういう時代になると、「お金がいい? 土地がいい?」と問われると、「お金」と答える人が多くなるのは当然です。しかも、相続した家に住まないのですから、コストがかかるだけ損になってしまいます。そうして、きょうだいで「実家」を押し付け合う時代になったわけです。

実家への思い入れは簡単に消えない

誰も済まなくなった実家を、あなたはすぐに売ることができますか? おそらくほとんどの人は「できない」と答えるでしょう。それが当然の心情だと思います。実家というのは、自分が生まれた家であり、親と一緒に長年過ごした思い出がしみついた家です。それを、親が亡くなって、誰も住む人がいなくなったからといって、すぐに売るという割り切りはできないのが普通の人の考え方です。

ところが、雑誌の相続特集や不動産コンサルタントが著した単行本などでは、「住まない実家はすぐに売ったほうがいい」とよく書かれています。確かに、税制上では早めに売ったほうがいい場合が多いのです。誰も住まなくなっても、不動産を相続した人には固定資産税がかかりますし、維持費もかかります。売ってしまえば、そうした費用はかからず、面倒がありません。

しかし、実際には少なくとも1年はそのままにしているケースが圧倒的です。もちろん、きょうだいにお金を払うために土地を売らなくてはならないなど、緊急にお金が必要なために、すぐに売る人もいますが、それは全体の2、3割程度です。

相続のスケジュールを考えても、なかなか売る決心がつかないことは、よくわかります。なによりも相続税の申告期限が、亡くなってから10カ月です。長いようでいてあっという間です。多くの場合、10カ月ぎりぎりまでかかりますから、それまでに売る例はあまりありません。

そして、当然ながら、名義変更はきょうだいの間の遺産分割協議が終わってからでなくてはなりません。となると、少なくとも土地や建物の名義が変わるのは、早くて1年近く後になるわけです。結果的に、少なくとも一周忌までは売る余裕もないというのが実情なのです。

もっというと、近隣から苦情をいわれて、どうしても維持できなくなって、やっとあきらめがつくというケースが多いのです。

破損した瓦屋根

「住まない実家」は不良資産

住まない実家を維持するのは、簡単なことではありません。最大の問題点は、「お金を生まない」ことにあります。

売却や賃貸をすれば、相続した土地や建物からはお金が入ります。しかし、そうでなければお金を生むことはありません。それどころか、「住まない実家」は次に示すように、お金がかかる資産なのです。

(1)相続税が割高になる

もし、相続した家に住むということであれば、「小規模住宅の評価減」という制度が適用されます。土地の評価額が8割安くなり、それに応じて相続税も軽減されます。しかし、住まないのであればこの制度は適用されません。

(2)家や庭のメンテナンスに手間や費用がかかる

人が住まない家はすぐに荒れてしまいます。きれいに保とうとするならば、ときどき訪ねては、窓を開けて換気したり、雑草をとったりする必要があります。空き家管理サービスもありますが、それも当然費用がかかります。

(3)実家に通う交通費がかかる

家や庭をメンテナンスする場合、実家が遠距離にあると交通費もばかになりません。時間もかかってしまいます。

(4)解体費がかかる

空き家をそのままにすると、やがて周辺から苦情が持ち込まれるようになります。そうなると最終的には解体するということにならざるをえませんが、その場合には解体のための費用が掛かってしまいます。とくに壁などにアスベストを使っていると、そのコストは大きな負担となります。

以上のように考えると、「住まない実家」は、資産というよりも不良資産といった方が適当かもしれません。思い出の詰まった大切な実家も、経済的に見れば、やはり残念ながら“金食い虫”でしかないのです。

「住まない実家」の売却は3年目までに

「住まない実家」も、いつかは手放すときがやってきます。ひとつは経済上の理由です。実家を維持する費用が、自分の生活を圧迫してしまうようになると、いくら実家や親に対する思いが深くても、手放すよりほかにありません。

あるいは、売ったお金で自宅を新築したい、新しい事業に使いたいというように、具体的な使い道が見えてきたときに手放すことも多いようです。もうひとつのタイミングは、家の手入れができなくなって、近隣に迷惑をかけているときです。

「住まない実家」の売却は、3年目が目安になります。なぜなら、住まなくなってから3年目の年末までに売ると、売買金額にかかる税金が安くなるからです。居住用の特例という制度があって、譲渡益3000万円までは課税されません。それ以後になると、20.315%の税率で譲渡益に課税されます。つまり、手取りは約8割に減るわけです。

3年目というのは、気持ちとしてもちょうどいい区切りかもしれません。もちろん、踏ん切りがつかなければ無理に売る必要はありません。それでも売却価格の8割は手元に残るのですから、拙速に売って後悔するよりはいいでしょう。でも、税金の優遇があるという事実だけは頭の隅に入れておいてください。

 

PROFILE
税理士法人レガシィ

累計相続案件実績日本一であり、専門ノウハウと対応の良さで紹介者から絶大な支持を得ている、相続専門の税理士法人。公認会計士、税理士のほか、宅地建物取引士を含め、グループ総数970名を超えるスタッフが、銀行・不動産の名義変更から相続税申告まで、すべての相続手続きをワンストップで対応する。