中学受験の大敵! 「否定の言葉」は子どものやる気を急激に下げる

否定の言葉をかけられる子ども

中学受験を始めてすぐ、ほとんどの親は「順位や点数が思うように上がらない」ことに悩みます。中学受験をするのはほとんどが「よくできる子」なので当然ですが、そこで子どもを追い詰めるようなことを言うと、事態はますます悪い方向に行きかねません。5,000組の家庭を見てきたカリスマ塾ソムリエである西村則康先生に、親が持つべき考え方について教えてもらいます。

「否定の言葉」は子どものやる気を失わせる

中学受験をするとなったら、3年生の2月から塾に行き始めるのが一般的ですが、子どもが塾に行くようになってから、親子の会話がそれまでとはまったく変わってしまうことがあります。それもいい方向ではなく、悪いほうに変わってしまう場合がしばしばあるのです。

その原因のほとんどは、「順位や点数が思うように上がらない」こと。中学受験のための進学塾に通い始めた子どもは、小学校では「よくできる子」である場合が多く、親も子どもの学力に自信があり、期待もかけてきているでしょう。

ところが、親が思っているように成績が伸びないと、だんだんに不安や焦り、さらには怒りが出てきてしまうこともあるのです。

しかし落ちついて考えてみれば、中学受験をしようと集まってきている子はみんなそれなりに頑張っており、親も子どもに頑張らせようと努力しているのですから、わが子だけがスムーズに成績が伸び続けていくわけがないのです。伸びていけるのはほんのひと握りの子どもだけで、「成績が思うように上がらない」という子どもの方が多いのです。

そこを誤解して「うちの子の成績が上がらないのは、よその子より怠けているからだ」とハッパをかけたり、叱ったりする場合があります。その挙げ句、親子げんかばかりが増えていくようになってしまうのです。

お母さんが言うのは、「今日は塾どうだった?」「テストは返ってきたの?」「早く見せなさい!」「早く復習と宿題をやって、あとは社会の暗記でしょ!」と、そんなことばかり。子どもは笑顔も見せなくなってしまうでしょう。

どうか、こんなふうに子どもを責めたり叱ったりしないでください。

「あれをすべきだ」「これをしなくてはならない」というような、子どもの義務感にばかり訴えようとする話し方をすべきではないのです。

「あなたはここがダメなんだからこうしなくちゃ」「この前のテストの結果が悪かったのだから」「この問題は前もできなかったから」と、なにかにつけて「否定」から話を始め、「だからこうしなさい」という言い方ばかりのお母さんもいます。

しかし「こうしなさい」の以前に、否定された段階で子どもはすでに聞く耳を失っています。否定の言葉というのは、大人でも子どもでも、とてもイヤな気持ちになるものです。

お母さんがイライラする気持ちもよくわかります。でもそういうときこそ、深呼吸して「塾の成績は伸びないほうが普通」「ウチの子も頑張っているんだ」と自分に言い聞かせ、まず子どもを肯定する言葉を増やしましょう。

たとえば、「ここはすごくできているのだから、もうちょっとここを頑張ろうよ」「あなたはサッカーだといろんな作戦を考えられるでしょ? それは算数の解き方をいろいろ考える力にもつながるんだよ」「水泳だって最初はダメだったのにすごく上手になったじゃない。同じ気持ちで毎日少しずつでも続けてごらん」。

こういう言い方なら、きっと子どもの心にも届くのではないでしょうか。

合格へは「スモールステップ」で導く

もう一つ、大切な言い方のコツがあります。それは、子どものやる気を引き出すために、「少しずつ」「小さな階段(スモールステップ)」を意識して声がけしてあげるということです。

子どもに「何々をすべきだ」と言ったとしましょう。その内容が親からすれば正当なものであっても、途方もない努力を要求されることだったり、永遠に続く苦難を予感させることだったりすると、やる気はまったく起きません。

子どもは(大人でもそうだと思いますが)、「もうちょっと頑張ればなんとかなりそう」と思うことに対しては、すぐに努力を開始することができます。そして努力を始めてしまえば、「今よりもうちょっと多く頑張れそう」と感じることもできるのです。

スモールステップ

この「もうちょっと頑張れば何とかなりそう」と思えることは、実はすでに〝成功の予感〟を含んでいます。「もうちょっと〇〇を頑張れば、こんないいことが起きそう」という成功の予感です。

この成功の予感に導かれて努力した結果、なんらかの成果を味わうことが成功体験です。この成功体験が自信につながっていきます。

算数の偏差値をあと15上げないと志望校に届かないという場合、いきなり、「塾の復習を2回やり、計算練習を毎日、基本問題を3回、練習問題を週テスト前に2回やらないと、とても合格できないぞ」などと説教口調で言うのはよくありません。

目標の「偏差値15アップ」はそのままでいいのですが、そこに向かうための「低い階段」を何段もつくってあげてほしいのです。たとえば、

母「マンスリーテストの大問2の小問で8割正解できれば、どう?」
子「うん、だいぶ上がりそう」
母「どうしたらそうできそう?」
子「マンスリーの前に、4回分Cランクを解き直そうかな」
母「それいいかも。でもちょっと多くない、Cの△だけでもいいんじゃない」
子「そうかな? じゃあ、BとCの△をやってみるよ」
母「えらいわね。それができて大問2で正解が3つ増えれば、15上がるかもしれないわ。あなただったらできそうね」
子「うん、やってみる」

 例をもう一つ挙げておきましょう。

母「テストが終わって家でやるとできるのに、テストの時にできないのはなぜかしら」
子「テストの時は、どうしても焦っちゃって思い出せないんだ」
母「そうね。がんばって勉強しているから学力はついてるとお母さんも思うわ。得点が上がるまでほんの少しのところまできてると思うけど」
子「どうしたらいいんだろう」
母「そうね。いきなり宿題をやるんじゃなくて、復習から始めたらどうかしら」
子「でも、そんなことしてると宿題が終わらないよ」
母「そうね、宿題が多いものね。あっそうだ、塾から帰ってきてすぐに復習するのはどうかしら、20分だけ。特に算数の授業があった日は」
子「う〜ん、できるかな」
母「家に帰ってきてから、少し難しく感じた問題の解き方を2〜3問だけお母さんに教えてくれるだけでもいいわ」
子「そのぐらいならできそう」
母「お母さんがわかるように説明できれば、その問題は完璧に解けるはずだもの。週2回として、1カ月で8回、20問ぐらいが完璧になったらテストの点数も上がりそうね」
子「じゃあ、やってみようかな」

このような会話の中で「階段」をつくりながら、子ども自身ができることを見つけてあげてください。それとともに、もし実行できたら起こりうる嬉しいことも想像させてあげてください。

中学受験は、家族が一致団結して子どもを支えていく時間です。その時間には「合格」以上に大きな意味があります。合否を超えて、その時間が子どもの将来にとって大きな力になり、同時に家族の絆を強くするもの。そうであってはじめて、「中学受験は成功だった」と言えるのです。

中学受験の学習期間は、子どもが一歩一歩階段を登っていくのを家族全員で喜び合える貴重な時間です。「こうあるべき」という状態にほど遠いからと、叱咤したり罵倒すべきではありません。

自分なりに頑張れることを見つけさせて、ちょっと頑張れるように仕向けてみる。その頑張りに応じて、子どもにとってちょっと嬉しいことが起きる。その嬉しさに励まされて、子どもがもうちょっと頑張ってみるようになる。このような子どもの成長こそが、家族の喜びにつながっていくのだと考えています。

目標の中学合格という高い目標に向けて、子どもが一段一段階段を登っていく喜び、これが家族全員の、そして子ども自身の楽しさです。この楽しさの経験が、子どもの将来を力強く励まし続けていってくれます。

お子さんの中学受験の勉強が家族全員にとって実り多いものになることを、心から祈っています。

 

seishun.jp

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PROFILE
西村則康

30年以上、難関中学・高校受験指導一筋のカリスマ家庭教師。日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から、「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。また、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイス。これまで開成中、麻布中、武蔵中、桜蔭中、女子学院中、雙葉中、灘中、洛南高附属中、東大寺学園中などの最難関校に2500人以上を合格させてきた実績を持つ。テレビや教育雑誌、新聞でも積極的に情報発信を行っており、保護者の悩みに誠実に回答する姿勢から熱い支持を集めている。また、中学受験情報サイト『かしこい塾の使い方』は16万人のお母さんが参考にしている。

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