グーグル流!大きな成果を上げるには「to do リスト」を捨てる

生産性は「何をしないか」で決まるという元グーグル人材育成統括部長のピョートル・フェリクス・グジバチ氏。もしあなたが効率よくタスクを進めるために「to do リスト」を活用しているとしたら、「not to doリスト」、つまり「しないことのリスト」を大事にしてほしいと提言します。果たしてその真意とは?

ズバリ言います。「to do リスト」は捨てましょう!

「to do リスト」といえば一般的に、「目の前にある、今やるべきこと」を列挙するために作成するものです。

to do リストをつくることで、その日のタスクをやり忘れることなく効率よく消化でき、したがって目標達成にも着実に近づいていく。みなさんも、そう考えているのではないでしょうか。

しかし、to do リストには危険な側面があります。

それは「インパクトが小さく、学びも少ない」作業ばかりを書き連ねて、それを「こなそうとがんばってしまう」危険です。

僕が一番お伝えしたいのは、そのような仕事を「捨てる」ことなのです。それこそ、生産性を5倍、10倍に高め、インパクトの大きい仕事を実現するために欠かせないことだからです。

だから、ズバリいいます。to do リストはもう、捨てましょう。

僕はto do リストをつくることはまずありません。起業家ですから、個人としてもチームとしても、生産性を高め、なおかつインパクト(=同じ時間で生み出す価値や、社内での評価)が大きくなるよう意識して仕事をしなければなりません。

そのため、「インパクトが小さく、学びも少ない」仕事は、真っ先にto do リストならぬ「not to do リスト」入りにして、自分ではやらないと決めています。

自分の仕事を、「インパクトの大小」と、「学びの大きさ」でマトリクスにすると、次のように分類できます。

①インパクトが大きく、学びも多い仕事

②インパクトは大きいが、学びは少ない仕事

③インパクトは小さいが、学びは多い仕事

④インパクトが小さく、学びも少ない仕事 

 このうち、最優先したいのは当然、①の「インパクトが大きく、学びも多い仕事」です。

端的にいうと、「自分以外にはできない仕事」がこれです。

今の僕でいうなら、例えば自分の専門と社外のプロフェッショナルの専門を「かけ合わせて」、これまでにない新しい価値を生み出す仕事かもしれません。前例がないために、これからどうなるかわからない、未確定の要素がたくさんありますが、成功すれば見返りも特大。そんな仕事です。

具体的には、HRテックのモティファイの立ち上げ、教育事業の Time Leap の立ち上げ、経産省の支援、投資、スタートアップの顧問がそれです。

②の、インパクトが大きくても自分にとって学びが少ない仕事は、その仕事を学びたいと思っているほかの人たちに回していきます。

僕の会社でいえば、講演会やワークショップ、新規事業の立ち上げなどは、以前なら僕が前面に出ていたところですが、今ではほかのメンバーに任せることが増えてきました。

こうすることで僕は①に注力する余裕が生まれました。また、ほかのメンバーの成長を後押しする機会にもなっています。

また、僕は1つ取材を受けるときに、音声をポッドキャストで、動画をユーチューブなどで配信することがあるのですが、これは、一度の取材でより多くの人たちにメッセージを届ける工夫、つまりインパクトを大きくする工夫として行っています。

③の、インパクトは小さいが、学びは多い仕事は、長期的な投資として行うイメージです。僕の場合だと、たとえば魅力的なスタートアップに関わることや、メディアの取材を受けること、自分の専門以外の領域を勉強すること等です。

すぐにお金にはならないかもしれませんが、仕事の6~7割は将来の土台づくりのためにあてるべきだと僕は考えています。それが未来の①や②の仕事に成長してくれるかもしれないからです。

僕にとっては、語学を学ぶことも③の1つです。いまでも数カ国語を勉強しています。すぐにビジネスに使えるレベルにはなりませんが、言葉を覚えるほど、たくさんの国の人と交流できますし、新しい国の文化や歴史を学ぶことも、刺激的です(僕の語学の学習方法に関して、詳しくは『リラックスイングリッシュ』をご参照ください)。

残るは、④インパクトが小さく、学びも少ない仕事です。これが、もっとも優先度が低い仕事になります。

④は、言い換えると「僕でなくてもできる」仕事です。誰かがやらないといけないことかもしれませんが、誰でもできる仕事です。メールチェックやスケジューリング、資料づくりなどが典型的です。いわゆる「作業」にあたります。

そして多くの場合、to do リストに並ぶ「目の前にある、今やるべきこと」、「その日のタスク」は、④に偏ります。新入社員のように目先の仕事に慣れる段階にある人は、その傾向が強いはずです。 そこが問題なのです。

インパクトが大きい仕事をしたいと願うなら、④は極力、「捨てる」という判断をするべきところです。④を抱え続ける限り、従来の仕事の仕方から抜け出せず、仕事量だけが増えていくことになるでしょう。これだと硬直した「がんばらなきゃ」という思考になりがちなのは、みなさんもよくご存知だと思います。

仮に、誰かがやらないといけない仕事であっても、外部にアウトソーシングしたり、ITで自動化したり、チームの他のメンバーに任せたりと、できるだけ自分以外の人の力を借りることで「捨てる」ことができます。マネジャーを務めている人ぐらいになれば、さまざまな策を講じられるはずです。

そうして、自分の時間が10あるとしたら、これまでの仕事を5で終える。残りの5を、①や②の仕事に振り分けるのです。

あなたの「がんばり」は必要ながんばりですか?

to do リストをつくり、その日にやるべきことを整理することがいけないとは言いません。しかし同時に「そのタスクは本当に必要か」、疑ってみるべきです。

繰り返しますが、今の世の中、あれもこれも自分1人で抱え込んでがんばるのは現実的に不可能です。④の仕事を捨てない限りは、to do リストは膨らんでいくばかりです。

生産性を高めようと思うなら、to do リストを増やすよりも、思い切って減らすほうが先決です。そうすれば、①や②の仕事にあてる時間を捻出できるのです。

to do リストを減らすということは、イコール「やらないこと」を増やすことでもあります。インパクトのある仕事をしたいのなら、to do リストより「not to do リスト」のほうが大切なのです。

僕にも、not to do リストがあります。いずれも④を捨て、①や②の仕事にフォーカスするために意識していることです。

例えば、メールチェックやスケジューリングは、アシスタントに任せています。to do リストも、つくりません。講演会に必要な資料作りなども、僕はしません。チームのメンバーが担当してくれています。

また、僕は「服を選ぶ」ということをしません。毎日同じ黒いシャツを着ると決めています。

片づけコンサルタントの近藤麻理恵さんの本『人生がときめく片づけの魔法』が面白くて何度も読み返しました。近藤さんの本には「捨てる」ヒントがたくさん詰まっています。

例えば、「クローゼットに詰め込まれているたくさんのシャツも、2年間着ていないなら捨てるか、誰かに寄付すればいい」とありました。するとクローゼットだけでなく、頭のなかもすっきりするというのです。

僕もそうしました。黒以外のシャツは処分してしまったのです。おかげで朝起きてから「今日はどの服を着ようか」と迷うことがなくなりました。

僕とは反対に、毎日のおしゃれを楽しみに生きている人もいるでしょう。僕だっておしゃれをして出かける週末もたまにはあります。でも忙しい平日は毎日、着慣れた黒い服をローテーションするだけです(同じシャツを何枚も持っています)。

それで節約できる時間といってもたった数分のことですが、それだけでも、エネルギーや思考を仕事で成果を出すことに向けたいと思っています。新しいアイデアを生み出したり、問題解決をしたりと、もっと費用対効果の高いことに使いたいのです。

このように「何をやらないか」を決めることで頭を整理し、よりインパクトの大きい仕事に打ち込むことができます。若い頃なら誘われるがまま参加していたさまざまな交流会も、最近ではすっかり行かなくなりました。

といっても、人との出会いは僕の楽しみの1つです。今は、誘われる側ではなく、僕が登壇するイベントに誘う側です。そのほうが、より短時間に、より多くの、しかも僕に興味を持っているとわかっている人と、出会えるからです。

あえて1対1で会うのは、深い対話ができる人、自分に刺激を与えてくれる人に限っています。

グーグル創業者のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンも、スタートアップの聖地シリコンバレーに拠点を置いていながら、他の経営者とほとんど交流しないことで知られています。

「シリコンバレーのスタートアップに投資をする」ことを優先順位の上位に置いているなら、交流したほうがいいに決まっています。しかし彼らにとって、それはもはや意味のあることではないのです。

グーグルが世界を席巻した今となっては「社外活動に熱心になるより、会社に集中したほうが大きな価値を生み出せる」という判断なのです。

 

seishun.jp

PROFILE
ピョートル・フェリクス・グジバチ
プロノイア・グループ株式会社代表取締役/モティファイ株式会社取締役チーフサイエンティスト。プロノイア・グループにて、企業がイノベーションを起こすため組織文化の変革コンサルティングを行い、その知見・メソッドをモティファイにてテクノロジー化。2社の経営を通じ、変革コンサルティングをAIに置き換える挑戦をする。 ポーランド生まれ。2000年に来日し、ベルリッツ、モルガン・スタンレーを経て、2011年、Googleに入社。アジア・パシフィック地域におけるピープル・ディベロップメント(人材開発)に携わったのち、2014年からはグローバル・ラーニング・ストラテジー(グローバル人材の育成戦略)の作成に携わり、人材育成と組織開発、リーダーシップ開発の分野で活躍。2015年に独立し現職。 著書に『リラックスイングリッシュ』(KADOKAWA)『日本人の知らない会議の鉄則』(ダイヤモンド社)、『世界最高のチーム』(朝日新聞出版)等がある。