四角い書類カバンは「アタッシェケース」9割が間違えている日本語

正しいと信じて使っていた言葉。じつは間違った使い方をしているかもしれません。中には誤用率7割というものもあります、はたしてあなたは正しい言葉の使い方ができているでしょうか? ぜひ2択にチャレンジしてみてください!

正しいのはどっち?

以下の言葉について、あなたは正しく使い分けできるでしょうか?
(それぞれの単語をクリックすると、解説が表示されます)

「声をあららげる」or「声をあらげる」
解説

相手の理不尽な対応にカッとなり、「思わず声をあららげちゃった」ということは誰でも多少はあるだろう。

「声をあらげた」もよく使われるが、伝統的な言い方は、「ら」が一つ多い「あららげる」で、漢字で書くと「荒らげる」。意味は、声を荒立てること、激しい言葉で感情をあらわすこと。

ただ、「あららげる」より「あらげる」の方が発音しやすいし、「荒ら」の送り仮名も誤りやすいため、「あらげる」の使用が多数派になっている。放送では使用を認めているというが、一般には「荒げる(あらげる)は、俗な言い方」と捉えられていることは知っておきたい。

「あり得る」は「ありうる」or「ありえる」
解説

「それ、ありえない!」「ありえな〜い!」

この表現は日常会話でよく使われる。その対義語の肯定形は「あり得る」で、「そうなる可能性がある」といった意味だ。では、その読み方は?

「ありうる」が〇で、「ありえる」が△。

ただし、しゃべるときは、ややくだけた「ありえる」を使う人が増え辞書によっては見出し語に「ありえる」を加えるなど変化が見られる。いずれにしても、「ありうる」「ありえる」どちらも否定形にすると「ありえない」になることは同じだ。

「しかめつらしい」or「しかつめらしい」
解説

先に正しい言い方だが、「しかつめらしい」が〇。

「しかめ面」と音が似ているので、何となく混ざって「しかめつらしい」と言う人も少なくないが、まったくの誤用だ。

「しかつめらしい=鹿爪らしい」と書くのは当て字で、鹿や爪とはまったくの無関係。「真面目くさった堅苦しい様子」をあらわす言葉で、いかにも堅いカチカチの表情を浮かべていたら「あの人、しかつめらしい顔してる」のように用いる。一方、誤用されやすい「しかめ面」は、眉間にシワを寄せたような苦々しい表情のこと。

なぜ「しかつめ」かといえば、もともとは複雑な古語の音が変化して、「しかつべらしい→しかつめらしい」になったという。

まずは簡単に「鹿+爪」と覚えておけば誤用が減りそうだ。

「采配を振る」or「采配を振るう」
解説

「チームの監督が采配を……」のあとに続く言葉とは?

答は二派に分かれ、本来は「采配を振る」が〇だが、「采配を振るう」の言い方もかなり定着している。

そもそも「采配」とは、昔、戦場で兵を率いるために使った道具で、木や竹の柄にふさをつけたもの。これを大将が手に持って〝振った〟ことが語源だが、「振る・振るう」は音も意味も似ているので混同してしまったようだ。

文化庁が行った調査では、過半数が「振るう」を使っていることがわかり、もはや誤用と言い切れなくなっている。新聞社や通信社の用語集でも両方の使い方を載せるなど対策しているが、本来の正解は「振る」であることは覚えておきたい。

「二の舞を踏む」or「二の舞を演じる」
解説

「これじゃ、〇〇の二の舞だ」「〇〇の二の舞にはなりたくない」

では、正しい言い方は?「すみません」が〇。

など、会話だと「二の舞」だけ使うことも多く、あとの言葉がうやむやになりやすいが、正しくは「二の舞を演じる」で、「二の舞を踏む」は誤用だ。

「二の舞」とは、雅楽の演目の一つ「安摩(あま)」という舞のあと、それを真似た別の二人がわざと滑稽に演じる舞のこと。それが転じて、人の真似をしたり、同じ失敗を繰り返すという意味で使われるようになった。

言葉の由来を知れば、納得。舞は「演じる」もので「踏む」ものではないとわかるだろう。これまでずっと誤った使い方をしていたら、「二の足を踏む(しりごみする意)」と混同していた可能性がある。

「的を得る」or「的を射る」
解説

会議中など、鋭い意見が出たら、

「おっ、〇〇さんは、いつも的を〇〇ことを言うな」

のように使われるが、この「〇〇」の二文字とは?

「射る」と「得る」の2通りが使われているが、本来の言い方は「射る」。

「的を射る」とは「的のど真ん中を衝くように、的確に要点を捉えて、お見事!」といった意味だ。

誤用の「的を得る」は「当を得る(道理にかなっている)」との混同とも言われるが、本当は誤りではないとする説も。「得る」は「手に入れる」の他、「捉える」の意味もあり、「的を上手く捉える」と考えれば不自然ではない。

現時点で、確実な正解は「射る」だが、「どっちもあり」とする考えも広まっているので、「得る」の使用も柔軟に考えてよさそうだ。言葉の常識は時代と共に移ろう。呼び方で優勢なのは圧倒的に「関西」で、「関西人」「関西弁」などの言葉は親しまれていても「近畿人」や「近畿弁」とは言わない。ただし「近畿」の分類は主に公的機関や教科書などでは優勢で、学校では2府5県で習った人がほとんどだろう。

「押しも押されぬ」or「押しも押されもせぬ」
解説

A「彼は、今や押しも押されぬ大スターだ」

B「彼は、今や押しも押されもせぬ大スターだ」

どちらの表現が正しいかというと、答えは、B。「押しも押されもせぬ」とは、押しても引いても揺らぐことなく、実力があって堂々としていること。

Aの「押しも押されぬ」は、明らかな誤用だが、間違えやすい表現の代表で、若い層を中心によく使われている。本来の「押しも押されもせぬ」に、ほぼ同義の「押すに押されぬ(押しても押せない)」という言葉が混同して広まったらしい。実際に声に出して言ってみると発音しやすいし、耳触りも自然なので、誤りに気づかずに使ってしまうのだろう。まずは正解を発音して慣れることから始めよう。

「貯金を切り崩す」or「貯金を取り崩す」
解説

「休職中で、今は貯金を切り崩す生活だよ」

「学費がかかるし、貯金を取り崩す一方だ」

など、お金の話題でよく使う表現だが、正しい言い方は「貯金を取り崩す」の方。「えっ、勘違いしてた!」という方、国語の意味をおさらいすると、

「取り崩す」とはまとまったものから少しずつ取ること。

「切り崩す」とはものを切ったりけずり取ったりして元の形でなくすること。

なので、今ある貯金を少しずつ取って生活費などに充てる場合、「貯金を取り崩す」が適切で、多くの辞書で「取り崩す」の項目に「貯金を〜す」と用例を示している。ただ、「切り崩す」も普通に使われ、若い世代ほど誤用が多いことは見逃せない。ここで、本来の言い方「取り崩す」に、知識の入れ替えを。

「極めつけ」or「極めつき」
解説

演劇などの舞台を見て「極きわめつけの演技だ!」と言うことがあるが、この表現は誤り。

耳慣れた言葉だが、本当は「極めつけ」は×で、「極めつき」が〇。

よく使われるので何となく「極め……つけ」と言いがちだが、言葉の成り立ちを理解すれば修正しやすいだろう。

「極め」とは「極書(きわめがき)」のことで、書画や骨董品などの鑑定証明書をあらわす。転じて、定評のある確かなもの、高く評価されたすぐれたものを指して「極めつき」に。別の言い方「折り紙つき」と同意だが、「折り紙つけ」とは言わないように「極めつけ」もないと考えれば覚えやすいだろう。ただし、一部の辞書に、両方を同じ意味として掲載しているものもある。

「間が持たない」or「間が持てない」
解説

たとえば、無口な上司と二人で食事中、会話がとぎれて気まずい雰囲気になったとき、あるいは、次の約束まで時間があるのに、暇つぶしの場所がないとき、「困ったな、間が〇〇〇〇」という心境になることがある。この四文字は誤りやすく、以前、国語辞典『大辞泉』(小学館)が行った調査では、「言い間違いされる言葉ランキング」で堂々1位に。なんと7割近くが間違えていたという。文化庁の調査でも、誤用が61・3%と圧倒的多数で、要注意の言葉だ。

正解は、「間が持てない」が〇で、「間が持たない」は×。

誤りに気づいたら、さっそく「て」と「た」を入れ替えて修正を。

 

 

 

「〇〇した矢先」or「〇〇する矢先」
解説

まず用例から正誤をチェックしてみると、

A「会議を始めた矢先に、停電になった」は×

B「出かけようする矢先に、電話が鳴った」は〇

時間のタイミングとしては似た印象だが、Aは「会議の開始後」、Bは「出かける前」という前後の違いがある。

つまり、「矢先」とは、「何かをしようとする、ちょうどそのとき(直前)」をあらわす言葉だ。そこで、「〜する矢先」のように使うのが正しい。

昨今はAの「〜した矢先」のように、「直後」の意味で使われがちだが、本来は誤り。新聞や放送、ほとんどの辞書でも直後の意味で使うことを不適切としているが、一部で容認する辞書もあり、今後の扱い方が気になるところ。時間の感覚をより正確に伝えるには、従来通り「直前」の意味だけで使うのがよさそうだ。

 

 

 

「足をすくわれる」or「足元をすくわれる」
解説

卑怯なやり方で隙をつかれ、失敗させられることを何というか?

A「足元をすくわれる」

B「足をすくわれる」

この質問をすると、二人に一人以上が間違えるという調査報告もあるが、正解はB。「油断してると足をすくわれちゃうぞ!」のように使う。

「すくわれる」の「すくう」は、「払いのける」という意味で、立っているとき足を払われたら、支えを失って一瞬でへなっと体勢がくずれてしまう。不意打ちを食らうわけで、確かにとても卑怯で危険な手口だ。

「足元」はくるぶしから下なので、払いのける動作はしづらいが、間違えて使う人が多いのは、「足元を見られる(相手の弱みにつけこむ意)」と混同するためとも言われる。すくわれるのは「足」、見られるのは「足元」と区別して覚えよう。

 

 

 

「後ろ足で砂をかける」or「後足で砂をかける」
解説

世話になった人の恩に報いるどころか、去り際に迷惑までかけて、「アイツはとんでもない裏切り者だ!」「(類語では)恩をあだで返す気か!」と言うときのたとえが「──で砂をかける」。

有名なことわざだが、この言葉は、もともと犬や馬が駆け出すとき、後ろの足で土や砂をぱっぱっと蹴散らすことが由来。

本来は「後足(あとあし)で砂をかける」だが、俗に「後ろ足で〜」ともいう

 

 

 

「上には上がいる」or「上には上がある」
解説

スポーツの大会で世界記録が更新されたときなど、「上には上が〇〇ものだ」と感心するが、この「〇〇」を間違えて使っている人が多い。

正解は「上には上がある」で、「上には上がいる」は誤り。

「これこそが最上と思っても、必ずそれ以上にすぐれたものがある」という意味で、自分を戒めるときにもよく使われる。「すぐれたもの」は、「すぐれた人」を指して言うことが多いので、「(人が)いる」と言いがちだが、この言葉は、実はもっと奥が深い。すぐれた人から生み出される才能や能力にフォーカスしているので、「ある」が適切なのだ。「いる」というと、比較する対象が人に限られるが、「ある」を使えば、より広い視点ですぐれた何かについて言及できるわけだ。

 

 

 

「ギブス」or「ギプス」
解説

骨折したときなど、患部を固定するために用いるのが石膏で固めた包帯。ぐるぐる巻きにして使うので、治療中の人には「〇〇〇が取れるまで、がんばって」と励ましたりする。さて、この包帯の名前は?

「ギブス」と「ギプス」、二通りの読み方があり、正解は「ギプス」。

「えっ、ずっとギブスだと思ってた!」という人、少なくないかもしれない。 。

ドイツ語の「Gips」が由来なので、正しくは「ギプス」で、本来は「石膏」の意。「プ」は日本人には発音しづらかったため、少しなまって「ブ」が定着したとも言われる。

 

 

 

「アタッシェケース」or「アタッシュケース」
解説

間違いやすいカタカナ語についての調査では、必ず上位にランキングされる言葉だが、正解は「アタッシェケース」で、「アタッシュケース」は×。

「四角い薄型の書類カバン」を指す言葉で、「アタッシェ(attaché)」とはフランス語で「大使館や公使館で、軍事や経済の仕事をする職員」のこと。語源から、重要な書類が入った頑丈そうなカバンがイメージできる。

これまでずっと「アタッシュ」と言っていたら戸惑うかもしれないが、この言い方が広まったのは、英語の発音に近いため。そこで、まったく間違いではないが、原語に近い「アタッシェ」の言い方もここで身に着けておこう。

 

 

 

「エンターテイメント」or「エンターテインメント」 」
解説

「entertainment」には、「人を楽しませる娯楽、余興、楽しみ、気分転換」といった意味があり、よく使われる言葉だ。

など、アスリートもよく使う表現だが、「〇〇〇」の三文字は?

ところが、カタカナで書こうとすると、「ン」を入れるか入れないかで悩みがち。

一般には「ン」抜きの「エンターテイメント」が浸透しているが、辞書や新聞は「エンターテインメント」の表記が多く、両方が混在しているのが現状。

そこで、改めて英語のつづりと発音から見ていくと、正確には「エンターテインメント」の表記(「ン」が入った方)が〇ということになる。

口語だと〝ン〟をしっかり言わなかったりしてあいまいになりやすいが、書くときは「ン」を入れる、と覚えておこう。

 

 

 

「ジャンパー」or「ジャンバー」
解説

「今日は現場で作業があるから、ジャンバーを持って行こう」

と言われれば、「ジャンバー=作業用の上着」とわかるだろう。だが、この言い方は誤り。語源の英語表記は「jumper」なので、この発音をそのままカタカナにした「ジャンパー」が正解だ。

ただし、「ジャンバー」も捨てがたく、国語辞典で「ジャンパー」と引くと、「ジャンバーともいう」と言及しているものもある。実際、「ジャンバースカート」をはじめ〝訛った表現〟に耳慣れた日本人は少なくないだろう。

ただ一方で、最近は上着のことをフランス語が語源の「ブルゾン」と言うことが増え、「ジャンパー」「ジャンバー」共に影が薄くなりつつある。

 

 

 

「雪辱を晴らす」or「雪辱を果たす」
解説

「次のオリンピックでは前回の雪辱を〇〇〇」「今度こそ試合で雪辱を〇〇〇」

など、アスリートもよく使う表現だが、「〇〇〇」の三文字は?

正解は「雪辱を果たす」。

意味は、試合などで前に負けた相手に勝つこと、名誉を取り戻すこと。カタカナ語の「リベンジ」のような意味合いの言葉だ。

「雪辱を晴らす」はよくある誤用だが、日本語としてちょっと変。

なぜなら、「雪」は「雪ぐ=そそぐ、すすぐ」とも読み、「雪辱」は「恥(辱め)をすすぎ、清める」こと。二文字だけで「名誉を取り戻す」意味になるので、「晴らす」は不要なのだ。

それでも、間違える人が多いのは、「雪辱を果たす」と「屈辱を晴らす」が混同した結果とも言われる。「晴らすなら、屈辱」、「果たすのは、雪辱」と覚え直そう。

 

 

 

「暗雲が立ち込める」or「暗雲が垂れ込める」
解説

「暗雲」とは、今にもザーッと雨が降り出しそうな雲のことだが、この真っ黒い雲は「立ち込める」ものか、「垂れ込める」ものか? 二つの言葉の意味は、

「立ちこめる」とは煙や霧などがあたり一面をおおうこと。

「垂れこめる」とは雲などが垂れてあたりをおおうこと。

ここからわかる通り、「暗雲が」にふさわしいのは、本来は「垂れ込める」だ。

雲は「上から下」に流れるもので、暗雲はまさに上空から厚く垂れ下がったイメージだ。これに対し、煙のように地表近くに広がるものは「立ち込める」が適切。

ただし、気象以外に「世界情勢に暗雲が〇〇○○○」のような比喩的な表現では「立ち込める」も使われるので、文脈を見て二つの言葉を使い分けることが大事。

 

 

 

 

PROFILE
話題の達人倶楽部

カジュアルな話題から高尚なジャンルまで、あらゆる分野の情報を網羅し、常に話題の中心を追いかける柔軟思考型プロ集団。彼らの提供する話題のクオリティの高さは、業界内外で注目のマトである。

日本人の9割がつまずく日本語 (青春文庫)

日本人の9割がつまずく日本語 (青春文庫)

  • 発売日: 2020/02/08
  • メディア: 文庫