「読書をしない子は成績が悪い」を東北大の大規模アンケートが立証

最近の子どもたちの手には常にスマートフォンが握られ、暇を見つけてはSNSやゲームに興じています。親としてはなるべく読書など有意義なことに時間を使ってほしいものですし、読書が学校の成績に大きな影響を与えるとすればなおさらです。東北大学加齢研究所の川島隆太先生に、子どもの読書と学力の関係についての研究結果を教えてもらいます。

「一日10分未満」の子どもは成績最下層

読者の皆さんも何となく「読書をする子は頭がいい」というイメージを持っているかもしれません。実際、子どもの頃に親や先生から「読書をしなさい」と言われながら育った方も多いでしょう。でも、「本当に読書する子は頭がいいのだろうか?」という素朴な疑問を抱いていたのではないでしょうか。

私たち東北大学加齢医学研究所の研究チームは、仙台市教育委員会が毎年度4月に実施している「標準学力調査」に合わせて、子ども達の生活習慣、学習意欲、学習習慣、家族とのコミュニケーションなどを多角的な視点から問う大規模アンケート調査を実施しております。この調査は仙台市内の公立小学校、中学校に通う全児童、生徒を対象として、平成22年度から毎年約7万人のデータを収集してきました。

そのうち、平成29年度の小学校5年生から中学校3年生までの子ども達約4万人の「平日の一日あたりの読書時間(雑誌・漫画などを除く)」と「4教科(国語・算数/数学・理科・社会)の平均偏差値」を調べたところ、まず、読書を「全くしない」子ども達の成績が最も低いことが分かりました。

読書時間と成績の関係

読書時間と成績の関係

そこから、「1~2時間」読書をする子ども達に至るまで、読書時間が長くなるほど成績が高くなり、読書を「全くしない」子ども達と読書時間「10分未満」の子ども達は成績下位層に含まれていました。つまり、成績上位層に行くためには、少なくとも1日10分以上の読書が必要だと言えるのです。

長時間読書している子ほど成績が高い

さらにこの調査からもう一つ面白い結果が読み取れました。「2時間以上」読書をする子ども達は「1~2時間」読書をする子ども達よりも成績が落ち込んでいたのです。当初、私たち研究者は、読書はすればするほど学力によい影響を与えるはずだと予想していましたが、その仮説は覆され、私たちにとっても意外で興味深い結果となりました。

なぜ「2時間以上」読書をする子ども達の成績が落ち込んでいたのでしょうか? 私たちは読書の時間と引き換えに、その他の活動時間が削られているのではないかと考えました。

読書時間を確保するということは、成績へよい影響があることが知られる、勉強や睡眠など別の活動時間を間接的に奪ってしまうということにつながる恐れが生じます。そうすると、読書が学力に与えるよい影響と、別の活動時間が削られるといった間接的な悪い影響を足し合わせた結果、悪影響が勝ち残ってしまう可能性があると考えられるからです。

この仮説を検証するために、今度は勉強時間が「30分~2時間」、睡眠時間は「6~8時間」という勉強時間も睡眠時間もきちんと確保している子ども達だけに絞って、読書時間と成績の関係を検証してみました。すると、今度は読書を長時間している子どもほど成績が高いという「単調増加の関係」が表れました。

読書時間と成績の関係(勉強・睡眠時間中間層)

読書時間と成績の関係(勉強・睡眠時間中間層)


この結果から、読書をしすぎること自体が何か脳に悪い影響を及ぼしているわけではなく、読書時間を確保するために勉強や睡眠の時間を削ってしまうことが間接的に成績低下につながっているという可能性が示唆されました。

「読書のしすぎ」に悪影響があるか

読書のしすぎが間接的に成績低下につながるということは、言い換えると一日の読書時間には最適な時間が存在すると言えます。もしも最適な時間があるとするならば、それは小学生と中学生で異なるのでしょうか。

小学生、中学生共に最も高い成績を上げているのは一日「1~2時間」読書をする子ども達でした。一方で、中学生の方が、小学生よりも、読書「2時間以上」の子ども達の成績の落ち込みが大きいように見えたのです。なぜ、このような発達による違いが生じるのでしょうか? 理由は2つ考えられます。

(1) 若い年齢ほど読書の効果が大きい

ヒトは高度に進化した脳を収容する大きな頭を持つため、他の動物に比べ未熟な状態で産まれます。そして生後間もなく、身体も脳も急激な発達を遂げます。

なかでも言語機能の発達のピークは8~10歳と言われています。つまり、読書を通して得られる言語機能の発達という側面から見た効果は、中学生よりも小学生の方が大きいと考えられるのです。

(2) 学年が上がるにつれて忙しくなる

学年が上がると、単純に授業のコマ数や科目数も増えますし、学習する量も増え、難易度も上がってきます。さらに中学生になると、本格的に部活動に打ち込んだり、学習塾や習い事に取り組んだりする子ども達も増えてきます。このように学年が上がるほど、子ども達が自由に使える時間が少なくなります。

つまり、読書時間を確保するために勉強や睡眠など別の活動時間が削られてしまう可能性が高くなります。そうすると、読書が学力に与えるよい影響が、別の活動時間が削られる間接的な悪い影響に押されて負けてしまう可能性も必然的に高まってしまうと言えます。

読書は最大で2時間の学習効果がある

「読書をたくさんする子どもは、勉強もたくさんしているから成績がいいだけじゃないの?」

こんな疑問が思い浮かぶかもしれません。そこで、同じくらい勉強をしている子ども達を集めて読書時間と成績の関係を再度確かめました。

中学生を平日の勉強時間別に3つのグループ(「30分未満」「30分~2時間」「2時間以上」)に分けて調べてみました。すると、「勉強2時間以上・読書全くしない」子ども達の平均偏差値は50.4でした。つまり、どんなに勉強を頑張っても、読書をしないとほぼ平均点までしか届かないという見方もできます。

一方、「勉強2時間以上・読書10~30分」群の子ども達の平均偏差値は53.6。勉強に加えて1日たった30分の読書を取り入れるだけで、偏差値が約3もアップする可能性があります。一日30分であれば、例えば学校の昼休み、家で夕食ができ上がるのを待っている時間、食後の休憩時間などに10分ずつでも本を読めばすぐに達成できる簡単な目標ですよね。

また、「勉強30分~2時間・読書10~30分」群の子ども達の平均偏差値は51.3です。これは、「勉強2時間・読書全くしない」群の子ども達の平均偏差値を超えています。一日2時間以上も勉強している子が、それ以下しか勉強していない子より成績が悪いという結果になっているのです。

例えば、平日は部活動や習い事に一生懸命取り組んでいて時間が取れない子ども達は、勉強と読書をそれぞれ毎日30分だけでもする習慣をつけるといいでしょう。読書と勉強を合計1時間頑張るだけでも、最低限、平均点の偏差値50以上の成績を収められる可能性が出てくるからです。

さらに言えば、「勉強2時間・読書全くしない」の平均偏差値は、「勉強30分未満・読書1~2時間」とほぼ同じ。たとえ2時間以上勉強しても、ほとんど勉強しないが読書はする子ども達と同じ成績になってしまうのです。ここだけを取り上げれば、読書は最大で2時間の学習効果があるとも言えます。読書習慣がいかに学力に強い影響を与えるか、おわかりいただけたことと思います。

 

PROFILE
川島隆太

東北大学加齢医学研究所教授。医学博士。1959年、千葉県生まれ。東北大学医学部卒。同大学大学院医学研究科修了。ニンテンドーDS「脳トレ」シリーズ監修。日本における脳機能イメージング研究の第一人者として著書多数。

松崎泰

東北大学加齢医学研究所助教。東北大学教育学部卒。同大学大学院教育学研究科修了。博士(教育学)。小児の脳形態、脳機能データと、認知発達データから、子どもの認知機能の発達を明らかにする研究を行っている。

榊浩平

東北大学大学院医学系研究科博士課程、東北大学学際高等研究教育院博士研究教育院生、日本学術振興会特別研究員(DC2)。東北大学理学部卒。同大学大学院医学系研究科修士課程修了。修士(医科学)。認知機能、対人関係能力、精神衛生を向上させる脳科学的な教育法の開発を目指した研究を行っている。