あなたの身近な人が「敏感な人」だったら―HSPとの正しい接し方

小さなことを気にしてしまい、ちょっとしたことにも敏感に反応してしまう人をHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)と呼びます。これは性格の問題ではなく生まれ持った気質で、些細なことによく気がつく半面、周囲の人に振り回されて困惑したり、自分のことを責めたりしています。もし自分の近くにいる人がこうした気質の持ち主だったら、どのように接すればいいのでしょうか? 日本におけるHSP研究の第一人者である長沼睦雄先生に教えてもらいます。

理解と尊重が、よい関係づくりのポイント

HSPは数少ない人と深く、長くつき合うタイプで、幅広い人たちとの浅いつき合いは、基本的に苦手です。相手の心の内を知りたくなくても、敏感なセンサーで、相手の心を読んでしまいます。

次々に入ってくる情報を知らず知らずのうちに分析しているのですから、さまざまな人と会って話をすることで、非HSPの人には想像がつかないほど疲れてしまうのです。

さらに、HSPは他人と自分の境界線の意識が薄いため、他人のマイナスの感情に強く影響されたり、他人に振り回されたりして、つらい思いをしてきた経験が少なからずあります。

相手の気持ちに左右されて落ち込んだり、いじめられたり、頼られたり、利用されたり、裏切られたり……。HSPの大半が、他人に過度に入り込まれたせいで、精神的に疲弊したり、トラブルに巻き込まれた経験を多かれ少なかれ持っています。

敏感で疲れすぎるだけでなく、過去の苦い経験から警戒心が働いて、他者と親密になることへの恐怖心があるのです。友達が多くないのも1つにはそのためでしょう。

HSPとつき合うには、まずHSPのこういった気持ちを理解することが重要です。そして、そのうえでHSPの考えをできるだけ、尊重してあげるとよいでしょう。

このことはどんな人間関係でも大切でしょうが、HSPにとってはとくに重要になります。他者の気持ちを敏感に察知できるHSPは、相手が自分の気持ちを尊重してくれていることを感じられるだけで、安心できるからです。

また、HSPの境界線の中に無理やり介入するような行為は、善意であってもできるだけ避けたほうがいいでしょう。こちらとしては親切のつもりでも、HSPにとっては「おせっかい」となり、負担になってしまうこともあります。

HSPの人は、まだそれほど親しくない関係の人間からいきなり人生論についての話題を向けられたら、それこそ境界線を越えられるような不快感を覚えることもあります。深い話については、親しい友人になってからの楽しみにして、それまでは、あたりさわりのない話題が喜ばれるでしょう。

どうでしょうか。以上のことはHSPとの関係に限ったことではなく、相手がだれであっても、守るべきエチケットでもあります。普通に接する中で、ただ少しだけ、HSPの抱える敏感さを意識するとよいでしょう。

HSPは「楽しくても疲れる」ということを知る

とにかく神経を使いすぎて、疲れてしまうのがHSPの特徴。この特徴に配慮してあげると、HSPの心はかなりラクになるはずです。

ただ、常に「大丈夫? 疲れていない?」などと聞かれると、自分の疲れやすさが相手の負担になっているのではないかと、考えを巡らせてしまいます。そのような質問をしても、おそらくHSPは「大丈夫」と答えて、ニコニコしているでしょう。

ときには言葉で直接聞くことも重要ですが、ふだんはHSPの様子を注意深く見ることで、HSPが疲れていないかを確認し、疲れているようであれば、それとなく休ませてあげるとよいでしょう。

外出先であれば、歩き回るのや、買い物をするのをいったんやめて喫茶店に入ったり、静かな公園などでひと休みする時間を取るのです。一見すると疲れているように見えなくても、疲れやストレスを心の内に溜めてしまうことがあるのは、HSPも非HSPも同様です。

楽しすぎても、HSPは疲れてしまうことがあるということも知っておきましょう。HSPは、旅行や飲み会などを存分に楽しんだあとで、一気に体調を崩すこともあります。

以前、HSPの女性をあるお茶会に誘ったことがありました。仲間内だけの小さな会で、その場にいた人のほとんどがHSP。気が合う仲間での話は盛り上がり、彼女も非常に楽しそうに話していました。

「先生、楽しかった!」と、帰っていったのですが、翌日、診察にやってきません。疲れすぎて、出かけられなくなってしまったというのです。しっかり休んだ翌日以降は疲れもとれて、普通に動くことができるようになったのですが、HSP特有の疲れやすさを強く実感した出来事でした。

また、HSPは外部の刺激だけでなく、内側の刺激にも敏感に反応します。内側から生まれる刺激の中には、過去の記憶や未来の想像にともなう感情も含まれます。

私たちの体からは恐怖を感じたときにも、そして、楽しいときにも、ストレスホルモンのアドレナリンが出ます。ですから、感情に敏感に反応するHSPは、楽しみすぎても、アドレナリンが大量に分泌されて、疲れてしまうのです。

この点を知っておけば、さっきまでとても楽しそうに話をしていたHSPの人が、家に帰って突然元気をなくしたり、寝込んでしまったとしても、「すごく楽しかったからこそ、疲れてしまったんだな」「限界を超えてシャットダウンしたんだな」と、相手の状況を自然に理解することができます。

その理解さえあれば、元気をなくしたHSPの人のことを「気分屋だ」とか「勝手なやつだ」と誤解しなくてすみますし、自分がなにか悪いことをしたのではないかと、気に病んだり、悩むこともなくなり、自分自身もラクになるでしょう。

あえてHSPだと意識しすぎずに接する

ここまで説明してきたとおり、HSPの人は「小さなことを気にしてクヨクヨする自分が嫌いだ」「ちょっとした出来事に過敏に反応してしまい、毎日疲れる」「人の気分の変化に左右されやすく、困っている」という、自分の中の極端な敏感さに悩んでいます。

その多くが、自分のその「敏感さ」を性格のせいだと感じ、自分を責め、苦しんでいるのです。

ただ、家族や友人などまわりの人たちは、「少しでも無神経なふるまいをしたら疲れさせてしまうのではないか」「向かい合って話をすることでなにを考えているのか読まれてしまったらどうしよう…」などと気を使いすぎて、つき合い方がわからなくなってしまった方がいるかもしれません。

HSPの人が体調や気分を崩しやすいことは、最低限、理解しておく必要がありますが、あまりにもそれを意識しすぎるとのびのびと会話を楽しむことができません。

また、HSPの人に気を使いすぎることが当人の負担になったり、悪影響を及ぼしたりすることもあるので、あえて「相手に気を使いすぎない」ように、程度を見極めながら関係を築いていくのがいいでしょう。

「きっとあの人は、HSPだから」と意識しすぎるのではなく、でも、相手の体調や気分を考えながら、相手も自分も心地よいコミュニケーションをとることが、HSPの人とつき合ううえで重要だと、私は考えています。

 

seishun.jp

seishun.jp

PROFILE
長沼睦雄

北海道立緑ヶ丘病院精神科医長。日本では数少ないHSPの臨床医。平成12年よりHSPに注目し研究。北海道大学医学部卒業。脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。平成20年より道立緑ヶ丘病院精神科に勤務し、小児と成人の診療を行っている。発達障害、発達性トラウマ、愛着障害などの診断治療に専念し、脳と心(魂)と体の統合的医療を目指している。

「敏感すぎる自分」を好きになれる本

「敏感すぎる自分」を好きになれる本

  • 作者:長沼 睦雄
  • 発売日: 2016/04/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)