シニアの再就職で履歴書に書くべきこと・絶対書くべきでないこと

60歳で定年リタイアできるのは今や一握り。むしろ、長すぎる老後を少しでも充実したものにするために、60歳を超えてからも転職してバリバリ働きたいという人が増えています。でも、そこで自分の経歴をアピールしようと履歴書にいろいろ書き込んでしまうと……。人材紹介のプロとして、これまでに3000人以上の転職・再就職をサポートしてきた郡山史郎さんが、若いころの就職とは少し違うコツやノウハウを教えてくれます。

安易に再雇用を選ぶと損をする

2018年10月の第19回未来投資会議にて、安倍首相が「生涯現役社会の実現に向け、意欲ある高齢者に働く場を準備するため、65歳以上への継続雇用年齢の引上げに向けた検討を開始する」と述べた。

実際、定年後も会社で働くシニアは年々増えている。厚生労働省が発表した最新の調査データによると、まず60歳以上の常用労働者数(期間を定めず雇われている者、1ヵ月を超える期間を定めて雇われている者、それ以外の者で前2ヵ月にそれぞれ18日以上雇われた者のこと)は、2009年は約216万人だったのが、9年後の2018年には約363万人となっており、9年間で1.7倍、実に約150万人も増えている(31人以上規模企業)。

これだけでも大変な増え方だが、実は70歳以上を見るともっと伸びは大きく、5年間で2.6倍も増えているのだ。同様に65歳以上も79万人から156万人へと倍増している。

このように、シニアの雇用は年々着実に増加しているが、こうしたシニアの就業率の拡大は、年金受給年齢の段階的な引き上げが今後も避けられないという見通しのなかで起きている現象だ。したがって、そのほとんどは定年後の再雇用であり、働きがいや処遇に大きな課題を抱えていることはご存じの通りである。

特に、「新しいことをやりたい!」という貴重な人材の意欲を奪ってしまうのは問題だ。新しい仕事をしたいと思っても、今の日本では60歳を過ぎてからの再就職市場は少ないのである。したがって、ほとんどのビジネスマンが定年後に再雇用されたら数年間、元いた職場でくすぶり続けることになってしまうのだ。

しかしこれからの時代は、再雇用であれ再就職であれ、定年後も仕事を続けた方がよい。そして、どうせ働くなら楽しく働きたいものである。だからこそ私はさっさと再就職することをすすめたい。

そのためには、ずるずると再雇用を選ぶのではなく、「人生の後半戦は自分の好きな生き方をするのだ」という強い意志をもって、前もって準備をしておく必要があるのだ。

準備は40代のうちにはじめておく

では、実際に定年前後を迎えた際にどのように行動すれば、希望通りの仕事が見つかり、定年後も満足して働けるのか。そこには、いくつかの行動原則や基本となるものの考え方が必要になる。そこで、人生の後半戦に入るにあたって身につけておくべき「習慣」をできるだけ具体的に紹介していきたい。

まず、定年が迫った50代に入ってから、慌てて定年後の仕事を探しはじめる人は多い。しかし準備は早いに越したことはない。

私は、「人生100年時代」の生き方を、ちょうど50歳で区切って、それ以前を「前半戦」、以降を「後半戦」と呼んでいるが、できることならば40代、遅くとも50歳くらいの、まだ「前半戦」からの折り返し点にいる頃に、定年後の準備をはじめたほうがいいだろう。

準備とは、定年後にどう生きていくか、綿密な計画を立てることである。「60歳になったら…」「70歳になったら…」とイメージを働かせて、将来どんなことをしたいかを考えておく。こうした準備を40代のうちにはじめてほしい。

生活についてでもいいし、仕事についてでもいい。楽しんで生きていくためには、趣味も重要だ。定年後に起こるあらゆることを、可能な範囲でシミュレーションしておくと、後半戦に入ってから慌てなくてすむだろう。

また、後半戦に入ってからもゆとりを持つためには、40代後半あるいは50代前半から定年後の再就職活動をはじめてみてはいかがだろうか。「僕が60歳になったらあなたのところで働かせてください」と聞いて回って、定年後の仕事に当たりをつけておくのだ。

さらに、転職先の1つとして考えたいのは、「定年の廃止・延長制度」がある会社である。厚生労働省の平成30年「高年齢者の雇用状況集計結果」(従業員31人以上の企業15万6989社の状況をまとめたもの)では、定年制を廃止した企業は2.6%、65歳以上定年の企業は18.1%と合わせて20.7%であった。

まだまだ多くはないが、そうした会社に移れば定年後も長く勤められる。今の職場環境が気に入っていたとしても先々の働き口のことを考えるなら、後半戦を迎えてすぐに転職するのも選択肢の1つである。

私は、会社に定年という制度があるのはいいことだと思っているが、その理由は、定年のことを考えるときが、その後の人生の計画を立てる絶好の機会になるからである。無理なく持続可能な定年後を実現するために、何が必要で、自分は何をすべきなのか。その答えをできるだけ早く見つけ出すことが、納得のいく後半戦にするためには、とても大切なのだ。

履歴書はどのような内容にすべきか

いざ行きたい会社に応募する際の履歴書や職務経歴書にもポイントがある。中には、前職の功績を考えつく限り書いてくる人がいるが、そういう場合、自分の価値をすべて知ってもらいたいと思うあまり、「社長賞を何度ももらった」「売り上げトップを維持し続けた」など過去の栄光でいっぱいの履歴書になってしまうのだ。

少しでも自分をアピールしたい気持ちは痛いほどわかるが、過去のことはあまり書かないようおすすめする。ほとんど無視されるか、ネガティブに受け止められてしまうからだ。

シニアの就職活動においては、過去の経歴がどれほど輝かしくても、単なる自慢話としか受け止められない。それどころか、「実績を上げたのは前の会社での話で、前の会社の商品を売っていたときのことではないか。きっと部下や上司、そして商品に恵まれていたから達成できただけだろう。うちに来て同じ業績が出せるのか?」と、採用担当者の反感を買う可能性すらあるのだ。

では、履歴書や職務経歴書はどのような内容にすればよいのか。基本は、単純明快に書くことだ。前の会社の業種と担当業務内容を伝えれば、大まかな能力は判断できる。書くことはせいぜい名前、住所、学歴、職歴などの情報と簡潔な自己アピール。あとは資格くらいに留めるべきだ。

自己アピールは、自慢話にならないように書くこと。「どこで、何を、何年やっていたか」がわかるくらいで十分だ。分量は欄の大きさに合わせて、長すぎず短すぎずで調節するといいだろう。

また、私の経験上、趣味や特技を書いてプラスになることはない。それでもよかれと思って、趣味や特技を長々と書いてくる人、さらにははるか昔の学生時代の思い出まで書いてくる人がいる。

元気が売りだった新入社員時代には役に立ったかもしれないが、シニアになった今、がむしゃらさや頑張りがプラスに働くことはない。さらに、特筆事項として書くべきは、新しい仕事で有用な資格だけだ。それも「簿記2級」「TOEIC800点以上」など、実務で使えるレベルの高度さが最低限必要である。

一方、資格ではないが、書いておくほうがいいと思うのが、扶養家族についてだ。家族は今すぐ用意できる類のものではないし、採用の条件にもならない。しかし応募者の生活が安定しているかどうかの指標にされる場合がある。

経理などの仕事は、シニアで独身だと責任感がないのでは、と思われ、採用されにくいケースもあるようだ。職種によっては「扶養家族がある」と書けば、雇う側に安心感を与えることができる。

シニアの労働は、若手社員や中堅社員のようなプレッシャーから解放されて、人のため、社会のために働けるのだ。会社のために血眼になって業績を上げるような仕事ではなく、自分が必要とされる仕事を探せばそれでよい。そう気持ちを切り替えると、仕事探しも楽に思えてくるはずである。

 

PROFILE
郡山史郎

1935年生まれ。株式会社CEAFOM代表取締役社長。一橋大学経済学部卒業後、伊藤忠商事を経て、1959年ソニー入社。73年米国のシンガー社に転職後、81年ソニーに再入社、85年取締役、90年常務取締役、95年ソニーPCL社長、2000年同社会長、02年ソニー顧問を歴任。04年、プロ経営幹部の紹介をおこなう株式会社CEAFOMを設立し、代表取締役に就任。人材紹介のプロとして、これまでに3000人以上の転職・再就職をサポート。

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