「なんで中学受験しなきゃいけないの?」に親はどう答えるべきか

勉強する子ども

直前期には一日のほとんどの時間を勉強に費やさなければならいないほど過酷な今の中学受験。まして、まわりの友だちがあまり受験をしない場合、「他の子が遊んでいるのになんで自分は勉強なの?」と不満になることもあるでしょう。そんなとき、親はどのように子どもに中学受験の意義を伝えるべきなのでしょうか? 5,000組の家庭を見てきたカリスマ塾ソムリエの西村則康先生に教えてもらいます。

受験勉強させることに罪悪感をもってはいけない

中学受験では志望校に合格することが目標になりますが、合格できなくても、実社会に出てから必要なもの、特にどんな仕事についても必ず役に立つものがたくさん手に入れられます。

社会に出てから必要な力は学校で身につけるべきだと思うかもしれませんが、残念ながら今の学校教育で、本当に仕事に必要なことを教えてはくれません。

目標を持って必死で努力する、計画を立てて実践していく、難問に粘り強く挑戦する、前向きに努力できる気持ちのコントロールを学ぶ―。受験勉強というのは、こうした訓練を続けることでもあるのです。小学校の4年生から6年生にかけて、これらを高密度で続けるのが「受験勉強」というものの本質なのです。

つまり受験勉強をさせるのは、決して「かわいそう」なことではありません。むしろこれらの力を持たず、“なんとなく”社会に出てしまうほうが、ずっと子どもにとってかわいそうなことではないでしょうか。

ですから、中学受験をさせること、塾に通わせることに「罪悪感」をもたないでください。罪悪感をもったままだと、どうしても親の口から「これが終わればラクができるから」「今だけ頑張ればいいから」という言葉が出てきます。

たしかに、今頑張ってさまざまな力を身につけておけば、社会に出てから「ラク」だとは言えます。論理的な思考力や精神的な強さが身についていれば、社会で降りかかってくる数多くのストレスやプレッシャーに苦しむことも、たやすく負けてしまうこともないからです。

しかし、お母さんがよく言う「あとがラク」というのは、「中学に入学すればあとはあまり勉強しないですむ」「付属に入ってしまえば勉強しなくても大学に入れる」というような種類の「ラク」であることが多いのです。

レベルの高い中学・高校に入れば、レベルの高い子どもたちに囲まれてレベルの高い授業を受けるのですから、そこで力を発揮するためには、さらに努力を続ける必要があります。それができる子どもたちが多く集まるからこそ、「難関校」は結果的に難関大学への進学率も高いわけです。

中学受験というのは、そうした力の「土台」をつくるものなのです。

中学受験を通して“一生モノ”の力を与えられる

高校入試や大学入試と大きく違うのは、それが子どもの力だけではできないという点。親のサポートがあってはじめてうまくいくというのが、中学受験の最大の特徴です。

たとえばスケジュール管理は入試の基本ですが、入試当日まであと何日ということだけでなく、入塾テスト、毎月の塾のテストへの準備、翌週の授業のための準備、その日の授業の復習、テストが終わればテスト直し、教科ごとの宿題、さらに学校の授業、宿題、行事、夏休みまで把握する必要があります。

1日、1週間、1カ月、1年、3年という単位でスケジュールを立て、実行し、チェックして必要なら修正する作業です。これは、ビジネス用語でいう「PDCAサイクル」(Plan-Do-Check-Action)と同じですが、これを小学生の子どもがひとりで行うのはとても無理でしょう。

子どもと一緒に先の予定を見据え、そこから逆算しながらスケジュールを立てるのは親の役割です。これは仕事のスケジュール管理とまったく変わりません。しかも並みの仕事よりずっと密度が濃く要素が多い。スケジュールを立てるほうも、実行するほうも、仕事以上に大変だと言っていいかもしれません。

こうした3年間を経験することは、子どもの人生にとって大きな糧になります。そして実は、親もまた一緒に成長することができるのです。

「正しい方法」で挑戦すれば、中学受験が子どもにとって決して「かわいそう」なものでないことを、ご理解いただけたでしょうか。

楽しそうに勉強している子ほど成績がいい

ただ、やり方や言い方が間違っていたら、中学受験がときには子どもを押しつぶしてしまうこともありえます。また、親子関係や夫婦関係が険悪になってしまう可能性さえあります。志望校に合格できなかったとき、子どもに不必要な挫折感だけを残すことにもなりかねません。

中学受験のために勉強することが「かわいそうで異常な状態」だと子どもが認識すると、終わったとたん本当に一切の努力をしようとしなくなります。たとえ志望校に合格しても、そこですぐついていけなくなってしまう可能性もあります。

特に付属校だとそれは顕著で、まったく努力をしなかったために、せっかく付属に入ったのに高校、大学に進めなかった子どもをたくさん見てきました。

「今の努力はきっと将来役に立つ。今身につけたものの上に、もっとレベルの高いものを積み重ねていけるんだ」という気持ちを、親も子どもも持っていてください。

私はときどき、受験勉強中の5年生、6年生に「なんのために受験するの?」と問いかけます。だいたいの子どもは「いい大学に行くため」と答えます。そこで、「じゃあ、なぜいい大学に行くの?」と聞くと、楽しそうに学習している子どもほど「ちゃんとした大人になるため」「将来の夢を実現するため」「立派な社会人になるため」と答えます。「お金が稼げるから」なんて答える子どもはごく少ない。

子どもたちは、親以上にちゃんとわかっているのです。子どもは親が思うより強く、また親が心配するより勉強そのものを面白いと思っている。「あとでラクをするため」と頑張っているわけではありません。

もちろん、学習量が子どもの体力や精神力の限界を超えていてSOSを出している場合もあるので、それにはだれより早く親が気づいてあげなければなりません。しかし子どもに「後でラクできるから今は気合いと根性で頑張って」などと言い続けるくらいなら、受験などさせないほうがいいと思います。

子どもが受験を通して今より一段ステージを上げ、人間的に成長することが受験の最大の目的であり「効果」です。学歴にせよ職業にせよ、目的を叶えるために今何が必要なのかを考えて努力できる人間になる。これが一番大事なことを忘れないでください。

小学校低学年のうちは、特に男の子の場合「受験の目的は自分を高めるためだ」と言ってもまずピンとこないでしょう。親の願いと子どもの気持ちの間には、どうしてもギャップがあります。小学2年生くらいの子に「自分を成長させるために中学受験をしてみよう」と話してみても、何がなんだかわからないでしょう。

しかしこうした大切なことは、常に生活の中で話し合いながら、少しずつ理解させるべきなのです。

 

seishun.jp

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PROFILE
西村則康

30年以上、難関中学・高校受験指導一筋のカリスマ家庭教師。日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から、「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。また、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイス。これまで開成中、麻布中、武蔵中、桜蔭中、女子学院中、雙葉中、灘中、洛南高附属中、東大寺学園中などの最難関校に2500人以上を合格させてきた実績を持つ。テレビや教育雑誌、新聞でも積極的に情報発信を行っており、保護者の悩みに誠実に回答する姿勢から熱い支持を集めている。また、中学受験情報サイト『かしこい塾の使い方』は16万人のお母さんが参考にしている。

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