マッキンゼー流! 混乱した思考をシンプルに整理する5つの方法

外国のビジネスパーソン

ビジネスに求められるスキルはいろいろあるが、そのベースとなる最も大切なものが「感情コントロール」の技術だ。マッキンゼーでは問題解決のスキルをそのまま感情コントロールに応用し、メンタルの安定に大きく貢献している。マッキンゼーをはじめとした外資系コンサルティングファームで活躍した大嶋祥誉氏に、そのエッセンスを解説してもらった。

感情が乱れてもすぐに冷静になるには

前回の記事では、感情の乱れを感情の問題として扱わず、解決可能なロジカルな問題として扱うことこそが感情コントロールの極意と説明しました。ロジカルシンキングの基本として物事を2つに分けることで思考をクリアにするという分解思考があります。

思考が混乱し、モヤモヤした感情をさらに複雑化させるのは、この分解思考ができていなかったり、不十分であることが多いのです。以下、分解思考の代表例を、5つだけ挙げます。

1.「自他の問題」を分ける(課題の分離)

本来は相手の問題にもかかわらず、自分の問題として捉えてしまい、エネルギーを浪費してしまう場合があります。たとえば、上司が何かとイライラしているとします。それを自分のせいだと考えると「どうしよう?」とか、「何とかしなければ」と思ってしまいます。しかし、そのイライラはもしかすると上司とその奥さんの関係がうまくいっていないとか、上司の体調のせいだとか、必ずしもあなたのせいではないかもしれません。

私自身、いつもイライラしている上司に、どう対応していいか分からず、かえって関係性がぎくしゃくしてしまった経験があります。あるとき、それはもう上司のクセで、いたずらに反応しないほうがいいと気づいたのです。「イライラしているのは相手の問題だ」と。そうやって切り離したことで、上司の感情に振り回されなくなり、結果、関係性がよくなりました。

相手の判断や感情は、最後は相手の問題であるということ。「自他の問題を分ける」ということが、自分の感情を乱さないための秘訣なのです。つい感情に流され、悶々としたり爆発したりする人は、この自他の問題を分けるということを意識するだけでも、冷静になれるきっかけになります。

2.「コントロール可能なこと」と「不可能なこと」を分ける

どんなに悩み、思い煩っても、どうすることもできないことがあります。それを何とかしようとして気をもんだり、感情を乱してしまうのは無駄なことです。感情コントロールの上手な人は、自分の力が及ばないことに対して思い煩いません。

たとえば、自分の上司が嫌いだからといって、上司が別の部署に行ってほしいと思ってもどうすることもできません。上司は部下を選べることはあっても、部下は上司を選べないというのが、ほとんどの組織の原則だと思います。

ならば、思い悩む前にできることは何か? その上司と何とかやっていく方法を探すことです。そのために何をすればいいか、具体的な方法を考える。その上司をよく観察して、上司の地雷を見極め、それを踏まないようにする。挨拶をきちんとすると機嫌がよくなると分かったら、挨拶を心がける。事前連絡や確認を求める上司なら、それをはずさないように気をつける……etc.

「嫌だ、嫌だ」と感情的になったところで、決してその感情から解放されることはありません。ならば、少しでも気持ちが楽になるように、具体的な行動を取るべきです。コントロール不可能なものを、思い煩うことをやめるだけで、仕事も人生もずいぶんスッキリするのです。

3.不安な事態が起きる確率と起きたときのダメージを判断する

感情には、イライラや怒りとともに、不安や恐れがあります。むしろ一見、怒りと思える感情も、そのじつ、不安や恐れが原因となっている場合もあります。不安や恐れは生きていく上で大切な感情です。不安や恐れを感じることで、危険を察知したり回避したりできるからです。

ただし、それが過剰になると問題です。集中力がなくなり、仕事が手につかなくなってしまいます。悪化すると、不安神経症のような心の病にまでつながっていきます。このような過剰な不安や恐れにとらわれないために、どうすればいいでしょうか? まずは、その不安な事態が起きる確率を考えてみることです。

一つの例として、航空機による死亡事故を考えてみましょう。航空機事故は、墜落事故が起きてしまえば乗客の大半が命を落としてしまう大事故になります。ただし、航空機による死亡事故発生は、東京-ニューヨークを12万5000回往復して1回遭う確率でしかありません。と考えると、飛行機に乗ることに対して、過剰に恐れる必要はないということが分かります。

もう一つはリスクが起きたときのマイナス、ダメージがどれくらいなのかを、冷静に判断することです。不安や恐れに押し潰されがちな人は、得てしてマイナス、ダメージを過大に想定しがちです。

私自身、上司から注意されたり怒られたり、あるいは機嫌が悪かったりするととても不安になり、動揺し、何とかしなければと焦っていました。なぜ、私はそれほどまで上司の言動に反応したのか? それは上司から睨まれ、嫌われたら、まっとうな仕事ができなくなるのではないか? 職場の居場所がなくなるのではないか? という恐れがあったからです。

しかし、よくよく考えてみれば、その上司に嫌われ、疎まれたからといって、職場に居場所がなくなるわけではありません。給料がゼロになるわけでもない。多少嫌われたからといって、すべてを失うわけではないということに気がつきました。

不安や恐れは誰もが持っている感情です。大事なことは、それをいたずらに膨らませないこと。そのためには冷静にリスクが起こる確率と、起こったときのダメージを想定することです。すると意外に今恐れていたことが、根拠のない、妄想を恐れていたということが分かると思います。

4.「事実」と「意見」を分ける

問題を複雑化し、難しくする一つの原因に、事実と意見を混同してしまうということがあります。たとえば、あなた自身が「うちの会社の朝礼はつまらないし、時間も長いからやめるべきだ」と腹が立ったとしましょう。

ただし、それは客観的な事実であると言えるでしょうか? 「つまらない」というのも「時間が長い」というのも、それはあなたの感覚であり、意見かもしれません。他の人にとっては、つまらなくもなければ、長いとも感じないかもしれないのです。怒りやイライラが起きたり、不安や恐れを感じたときには、それを感じた理由が、はたして客観的な事実か、自分の感覚や意見なのかを見極める必要があります。

5.「問題」と「感情」を分ける

「事実と意見の分離」を発展させたものが「問題と感情の分離」です。たとえば部下の仕事が遅くて締め切りを守れなかったとします。「締め切りを守らないなんて社会人として失格だ!」と怒るのは感情です。

そうではなく、「締め切りを守らなかった」という問題と、「そのことが許せない」という感情に分けて、問題は問題として、「なぜ彼は締め切りが守れなかったのか?」と冷静に対処する。感情が湧き起こるのは致し方ないのですが、それによって大事な「問題」を見過ごすことがないようにすべきです。

「事実と意見」を混同しない、さらに「問題と感情」を混同しない。それらを分離することで、感情コントロールの回路が次第にできあがってくるのです。

優秀なビジネスパーソンほど「原則」に立ち返れる

感情コントロールで必要なのがロジカルな思考です。それによって目の前の一見混とんとしている問題を仕分けて、スッキリとクリアにすること。問題を見える化することが第一歩です。マッキンゼーでもどこでも、本当にこの人は仕事がよくできるなと思える人は、ロジカルに問題を設定し、解決することができる人たちでした。

この記事ではロジカル思考の具体的な方法として、「問題を分ける」方法の一部を解説しました。すなわち「自他の問題を分ける」「事実と意見を分ける」「コントロール可能な問題と不可能な問題を分ける」……。

それらをひと言で言うなら、「思考をシンプルにする」ということ。ビジネスエグゼクティブと呼ばれる人たちは、まず例外なく思考がシンプルです。思考をシンプルにすることで、物事はクリアになっていく。それによって、何をどうすべきかがスーッと見えてくる。それができれば、一見ゴタゴタした感情問題も、驚くほど簡単に解決することができるのです。

 

PROFILE
大嶋祥誉

センジュヒューマンデザインワークス代表取締役。エグゼクティブコーチ、人材戦略コンサルタント。米国デューク大学Fuqua School of Business MBA取得。シカゴ大学大学院修了(MA)。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ワトソンワイアットなどの外資系コンサルティング会社や日系シンクタンクなどで経営、人材戦略へのコンサルティングに携わる。2002年に独立し、2000チーム以上のチームビルディング、組織変革コンサルティング、経営者や役員へのエグゼクティブコーチングを行う。また、世界のエグゼクティブが学ぶ「TM瞑想」を20年以上実践、TM瞑想インストラクターの資格も持ち、多くの経営者やビジネスパーソンに瞑想や感情コントロール、休息法を指導、彼らのパフォーマンスアップのサポートをしている。

マッキンゼーで学んだ感情コントロールの技術

マッキンゼーで学んだ感情コントロールの技術

  • 作者:大嶋 祥誉
  • 発売日: 2018/10/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)