動物たちは、タスマニア島に、 どこから渡ってきた?
タスマニアは、オーストラリア東南端に位置する同国最大の島。北海道より一回り大きな島には、太古の姿をそのままに残す原生林が広がっている。
「ここには、ウォンヴァットやハリモグラ、肉食獣の有袋類タスマニア・デビルや、もっとも原始的な哺乳類といわれプラタポスなど、世界的にみて珍しい動物が棲息している。
タスマニアが珍しい動物の宝庫となったのは、獰猛な肉食獣が存在しなかったことが最大の理由とされる。また、オーストラリア本島には人類が犬を持ち込んだが、タスマニアには長く犬がいなかったことも大きい。
いまから3万7000年前の更新世の氷河期には、タスマニア島沿岸の海面は、いまよりも120メートルも低かった。しかも、海水の大部分が凍って氷の塊となり、島の北部とオーストラリア大陸の南端を結んでいた。珍動物たちは、その時期に氷の橋を渡ってやってきたのではないかと考えられている。「その後、温暖化によって氷が溶けると、海面が上昇。オーストラリア大陸と切り離されてしまったため特有の種が生き延びてきたと考えられている。
シャーク湾には、どんなサメがいるのか?
西オーストラリア西部の都市パースから、北へ約830キロ、1991年に世界自然遺産に指定されたシャーク湾は、 インド洋に面して広がっている。
地名の「シャーク」とは、もちろんサメのこと。といえば、人喰いザメが湾内にウヨウヨと泳いでいるような光景をイメージするかもしれないが、地名の由来になったのは、人喰いザメではなく、プランクトンを主食とするジンベイザメである。
このサメは、体長10メートル以上に成長し、現生の魚類では最大の体格を誇るが、性格はいたっておとなしく、むしろ臆病といえる。動きも緩慢で、泳ぐ速度も通常は時速5キロ程度である。
シャーク湾には、このジンベイザメの他、人魚のモデルとなったジュゴンが約1万頭棲息している。これは、世界全体の約8分の1にあたる数字だ。さらに、世界的には絶滅の危機に瀕しているアオウミガメやザトウクジラの貴重な繁殖地となっているなど、300種の魚類が棲息するとみられている。
ただし、このシャーク湾が世界遺産に登録された最大の理由は、サメやジュゴンの多さではなく、地球最古の生命体といわれるストロマトライトの群生地だからである。ストロマトライトは、ラン藻などの微生物が粘液を分泌して、海中の砂粒などを固めてできたもの。一見すると岩のように見えるが、表面部分の微生物が光合成によって酸素を放出している。最古のものは、なんと35億年の歴史をもち、そのため、ストロマトライトの放出した酸素が、太古の地球生命の進化に大きな役割を果たしたのではないかと見られている。
ポンペイ島の水上都市 ナン・マードルとは?
ポンペイ島は、ミクロネシアに浮かぶ 直径わずか20キロほどの小さな島。この小さな島に「太平洋のベニス」といわれるナン・マドール遺跡がある。
ナン・マドールは、大小92の人工島からなる水上都市。柱状の玄武岩を交互に積み上げてつくられた“手作り"の島で、それぞれの島は、王の墓、宗教的な儀式を行う場所、集会所、倉庫などの目的別につくられている。
もっとも大きな島はナントワスと呼ば れ、60メートル×65メートル、周囲を高さ4メートルの石垣で囲んである。そこは、神や精霊に祈りを捧げる儀式を行った神殿島だとみられる。貢ぎ物を持ってきた者が槍を置く場所、捕虜をとらえる穴、拷問台などがあり、多くの人骨が出土した。昔から、島民が恐れて近寄らないところだ。
ところで、このナン・マドール、いつ、 誰が、何のためにつくったのか、はっきりしたことはわかっていない。この島には文字というものがなく、記録が残っていないからだ。ただ、口承の伝説は残っている。
その昔、カヌーでこの島にやってきたオロシーパとオロソーパという兄弟が、都を築こうと考えた。その場所を探して、山の上から眺めていたら、水中に、“神の 都"が沈んでいるのが見える。そこで、ここに都をつくることにした。二人が神に祈りを捧げると、島の反対側から玄武岩が飛んできて、みるみる積み上げられていった。そして、いくつもの島ができた、ということだ。
リン鉱石で豊かになった ナウルのその後とは?
太平洋の赤道直下に、ナウルという国がある。伊豆大島の4分の1にも満たない小さく平たい島国で、島の最高地点でも標高65メートルしかない。
そのナウルの成り立ちは、じつに変わっている。ナウルは「ウンチでできた国」なのだ。
その「ウンチ」は、人間のものではなく、アホウドリの糞である。かつて、現在のナウルがある地域には、珊瑚礁が広がるばかりで、陸地はなかった。珊瑚礁はアホウドリにとって格好の羽休めの場であり、アホウドリは珊瑚礁に大量の糞を落としてきた。数万年の間に、その糞が堆積し、珊瑚礁を埋め、陸地が形成された。
それが現在のナウルであり、やがてアホウドリの糞でできた島とは知らずに、人間が棲みついたのだ。そのナウルは、約1世紀前に、世界的な注目を浴びる。リン鉱石の産地としてスポットライトを浴びたのだ。世界の工業国は希少なリン鉱石を求めていた。ナウルはそのリン鉱石の宝庫だったので、一時は産油国並みに儲かるようになったのだ。
ナウルがリン鉱石の宝庫となったのは、むろんアホウドリの糞でできた島だから。リン鉱石は古代生物の化石からできるか、地殻変動から鉱床ができるケースが多いが、もう一つ、鳥の糞からもできる。
ナウルは、アホウドリの糞でできた島だったため、リン鉱石の宝庫にもなったのだ。ただ、ナウルに莫大な富をもたらしたリン鉱石だったが、採掘しすぎたため、現在では枯渇。他に目立った産業もなく、温暖化による海面上昇もあって、この国は現在、先の見えない状態に陥っている。
ポリネシアに 重複語地名、が多いのは?
ボラボラ島は、南太平洋に浮かぶタヒチ島から、北西260キロにある。本島の真ん中にオテマヌ山(727メートル)がそびえ、島の周りを囲むリー(岩礁)には、観光客向けのおしゃれコテージが並んでいる。マリンブルーの海の素晴らしさもあって、ボラボラ島は 「南太平洋の真珠」とも呼ばれている。
この「ボラボラ(BoraBora)」という不思議な島名は、現地の人が「ポラポラ(PoraPora)」と言ったのをイギリスの海洋探検家ジェームズ・クックが聞き間違えたといわれている。
その現地名の「ポラポラ」は、ババウという族長が、初めてこの島を統一したという伝説に由来し、「ババウ」がなまって「ポラポラ」となったと伝えられている。
そういえば、ポリネシアには、「ボラボラ島」以外にも、クック諸島北部の 「プーカプーカ島」や、アメリカ領サモアの中心都市「パゴパゴ」、サモアのサバイイ島にそびえる「シリシリ山」など、 重複語による地名が多い。
また、一般に使われる言葉の中にも重複語が多いが、その理由は、ポリネシア語には子音の数が少なく、発音が限定されているために生じた苦肉の策とみられている。子音数はハワイ語で7種、タヒチ語で8種、サモア語で12種しかないので、重複させることで別の意味を表す単語が増えたというわけである。
しかし、単語の中には、重複しても意味が変わらない言葉もあるところから、 単に口調のよさから繰り返されている言葉もあるようだ。
「地理」の楽しみを知りつくしたメンバーのみによって構成されている研究グループ。日本各地、世界各国を歩き、地図をひろげ、文献にあたり…といった作業を通じて、「地理」に関する様々な謎と秘密を掘り起こすことを無上の喜びとしている。