不本意な仕事で悶々とする人、逆に一生懸命になる人の思考の違い

悩む女性

仕事は思い通りにいかないことの連続。しかし、必ず仕事ぶりを見ている人はいるし、大きなチャンスはやってくる―。30年以上の会社勤め経験のある85歳の現役美容家、小林照子さんはこのように言います。どんな境遇であっても「いい人生」をつくる、シンプルな知恵を聞きました。

会社にはどうでもいい部署、どうでもいい仕事なんてない

いくつになっても、自分の思い通りにならないことはいろいろあるものです。家族関係でも思い通りにならないことはたくさんあります。会社関係でしたら、思い通りにならないことはもっといろいろあるでしょう。

人事異動で、自分では思いもよらないような部署に配属されたり、自分より年下のひとが自分の上司になったり。そんなとき、なんてつまらない人生なんだ、なんて理不尽な人生なんだと思うこともあるでしょう。

でも私は、こう思うのです。

会社は、「会社」というひとつの大きな船で航海している。

この船が安全に海を航海していくためには、多くの人間たちがそれぞれの役割を自覚しそれぞれの役割を滞りなく果たすことが大切だ。もし船の上で、役割を放棄する人間が出れば船は傾き、時には沈没のもとになることもある。

ひとりひとりの力があって、船は無事に港にたどり着く。そのことを忘れてはならない。

会社に、どうでもいい部署など、ないのです。そもそも、どうでもいい部署なら最初から存在しないのです。どうでもいい、意味のない仕事などあり得ないのですよ。

もしいまあなたが、自分の思い通りではない仕事に対して何か思っていらっしゃるのなら、どうぞそのことに気付いていただきたいと思います。私もかつて、考え方の違う上司の元で悶々(もんもん)とした時期がありました。でも「不本意だ」と思うときこそ、自分の目の前の仕事は手を抜かずに仕上げることです。

今日も自分の力があって、船は無事に前に進んでいる。

そのことをアピールするほうが、あなたの人生にプラスになるでしょう。好きな仕事しか一生懸命やらないというひとは、結局、船の中で広く信頼を勝ち取るということはできません。これは、30年以上会社勤めをした経験がある私からのメッセージです。

仕事の目的は「他人の評価」ですか?

いま世の中には「承認欲求」があふれているように思います。

インスタグラム、Twitter、Facebook、YouTube。SNSで誰でも情報を発信できる時代ですから、いつでも皆に注目してほしい。ほめてほしい。そうじゃないと不安だという若い方々にお会いすることが結構多いです。

でも日常生活の中で毎日ほめられることを期待しても、そうそうそんなことはないものです。何事もなく仕事が進んでいくのは、当然と言えば当然のことです。そこでいちいち「誰も何も言ってくれなかった」「なんでほめてくれないのだろう」と考えるのは、ちょっと周囲に甘えすぎな感じもします。

けれど私にも覚えがあるのです。化粧品会社に就職して、23歳のときに山口県の販売店で毎日お客様にメイクをしていたときのことです。私はどんどん自分の技術を磨きたかったので、毎日何十人という女性にメイクをしていました。

時代は昭和30年代。まだ一般の女性たちが毎日普通にお化粧をする時代ではありません。そのため、私のメイクによって顔が変わったとお客様が喜んでくださることもあれば、「え〜っ、なんだか変じゃない?」「恥ずかしいわ。このお化粧」と、お客様がトイレでメイクを落としていらっしゃる……なんてこともありました。

落ち込んだなぁ。自分が精一杯やったことが相手の方に受け入れられないことほど、悲しいことはありません。また時には、まったく無反応のお客様もいらっしゃいました。自分の仕事が相手の方にどう受け止めていただいたのかわからないのも、本当に心配になるものです。

しかしそこで「な〜んだ、皆が私のことをほめてくれないんだったら、や〜めた」と仕事を放り出していたら、何の技術も体得することはできません。

自分が「こうだ」と思い込んでいても、相手が喜んでくれないことがあるのであれば、では相手は何を求めているのか? どういうものが「時代」にマッチしているのかを考えて、自分のやり方を変えていくことも大切です。私が〝ナチュラルメイク〟の先駆者になれたのは、その葛藤をいつも抱えていたからかもしれないと、いまになってみればそんなふうにも思えます。

ほめられなくても、お礼など言われなくても、仕事は自分自身の情熱を忘れずに、淡々と進めること。これはどんな仕事においても、です。

自分は何もほめられないのに、他のひとが華やかな舞台で称賛されているのを見たりすると、もうがんばるのはやめようかなと気持ちがスネてしまうときもあります。

でも、見ているひとは必ずいます。淡々と努力を積み重ね、実力を身に着けていく人間を見逃さないひとは、必ずあなたのまわりにいるのです。

そして大きなチャンスは突然巡ってきます。そのときにそのチャンスをつかんで離さないために、あなたは努力を続けるべきなのです。

私自身、85歳までその繰り返しで生きてきました。

他人に評価されるのを目標にすることはないのです。「こういうものがあったら便利だな」「こういうシステムがあったら、ひとの役に立つかもしれない」「こういうものをつくりたいな」。まずは自分がどうしたいかという気持ちを明確に持って、そこに近づいていくこと。人生の展開は、そこから始まるものです。

 

PROFILE
小林照子

1935年生まれ。美容研究家・メイクアップアーティスト。 化粧品会社コーセーにおいて35年以上にわたり美容について研究、その人らしさを生かした「ナチュラルメイク」を創出。数々のヒット商品を生み出す。また、メイクアップアーティストとしても活躍し、どんな人でもきれいに明るくすることから「魔法の手」を持つ女と評される。 91年、コーセー取締役・総合美容研究所所長を退任後、56歳で会社を創業、美・ファイン研究所を設立する。94年、59歳で、[フロムハンド]小林照子メイクアップアカデミー(現[フロムハンド]メイクアップアカデミー)を開校。2010年、75歳で、青山ビューティ学院高等部を本格スタート。近年は現場力を持った女性リーダーを育成する「アマテラス アカデミア(ATA)」を開講。85歳を迎えたいまなお精力的に活動を続けている。著書多数。

美しく生きるヒント

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  • 作者:小林 照子
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