お母さんにとって男の子はモンスター!? やってはいけない10の育て方

変顔の男の子

「やんちゃなのに繊細」「あきっぽいのに変なことにのめり込む……」。異性であるお母さんにとって、男の子は理解を超えた存在です。でも「やってはいけないタブー」を理解してあげさえすれば、あとはいつの間にか大きく育ってくれるのも男の子なのです。大学で27年間、私立中高一貫男子校で9年間、のべ4000人の男子学生と面談をし、彼らの成長を逆からたどって調査してきた獨協医科大学名誉教授の永井伸一先生が、男の子の子育てにおけるタブーについて解説します。

男の子の育て方は女の子とはぜんぜん違います

私は大学で27年間、その後は私立中高一貫男子校で11年間、実にさまざまな学生たちと面談をし、彼らの成長を逆からたどってきました。そのなかで、子育てにおけるいくつかの事実が見えてきたわけですが、ここで注意したいのは「男の子と女の子の育て方は、まったく違う」という点です。

もちろん、“人間を育てる”という点では男女共に大きな違いはありません。しかし親として実際にどう接するか、どんな点に注意すべきかは少し変わってきます。

男の子というのは、女の子とは違ったさまざまな特徴や問題を抱えています。たとえば、「やんちゃ」「いたずらやおふざけ、悪さばかりする」「放っておけばいつまでも遊んでいる」「集中力に乏しく気が散りやすい」「先を見すえた行動ができない」「物事の整理が苦手で、順序立てた思考や行動ができない」「きちんとすることが難しく、ズッコケることが多い」「妙なところで繊細」――。

男の子をもつ親なら、タメ息をついて同意していただけるのではないでしょうか。「規則正しい生活を送る」「自分のことは自分でする」「年齢に応じて勉強する」などなど、大人へと成長していくなかで身につけなければならない習慣は数多くあります。でも、約8割の男の子は自分から率先してこれらをやることは、まずありません。

やるべきことを自分から進んでこなすのは、ごく一部の子だけ。大多数の男の子たちは、親がきちんと導いてやらない限り、ただ毎日を楽しくすごすだけの生活になってしまいます。これが女の子とは最も違う点です。

特にお母さんにとって男の子は異性であり、「自分が子供のころはこうだった」が通用しません。男の子の考え方や行動についてわからない点が多く、日々とまどいと心配を抱えているお母さんも少なくないはずです。

もちろん、男の子には女の子にないよいところもたくさんあります。一度興味をもったらとことんのめり込む点や、キッカケさえ与えられれば驚くほど成長するのも男の子ならではの長所。
まずここでは、うっかりすると手に負えない存在になりかねない男の子に対して、どこか間違った接し方、育て方をしてしまった親の実例を見ていきます。

男の子を育てるうえでの10のタブー

「ダメな子はいない。でも、ダメな育て方はある」
これこそが私の持論ですが、男の子を育てるうえで、これから述べる“10のタブー”はぜひ心得ておいてください。

1. いたずら放題でも「小言をいわない」

男の子を育てるうえで細かい小言というのはタブーです。もちろん、きちんとした生活習慣をつけるには小言もある程度必要ですが、年がら年中小言ばかりでは、“なにも考えられない無気力な子”“卑屈な子”になってしまいます。そうならないよう、親は“必ず守るべき最低限のライン”を設定し、あとは大目に見る、というスタンスをとるようにしたいものです。

その“必ず守るべき最低限のライン”とは、「きちんとした日常生活を送ること」と「自分のことは自分ですること」。このふたつの事柄は、「幸せな人生を歩める大人」になるのに非常に大切な要素です。これらの習慣だけは、子供のうちからきちんと根づかせておく必要があるので、必ず守らせるようにしてください。

2. 「マイナスの言葉」はNGワード

親から「だからおまえはダメなんだ」「なぜ、こんな成績しかとれないんだ、バカ」と責めたてられて育ってきた学生たちを、私は過去に何人も見てきました。世間では“立派”とされる職業に就いていたり、社会的地位の高いお父さんほど、こうした言葉で奮起させようとする例が目立ちました。かつては自分にできたことがわが子にはできないという事実が、歯がゆさを感じさせるのでしょう。

しかし、そうした言葉で子供が“奮起”する例はほとんどなく、そうした学生の誰もが、必ずなんらかの問題行動を起こしていました。勉強に集中してとり組むことができなかったり、なにに対しても興味をもてなかったり、表情に生気がなかったり……。

そして、そんな学生たちでも、実際に親と面談して“ダメ”“バカ”という無神経な言葉をやめてもらうことができたケースでは、ほぼすべての子が明るい表情と気力をとり戻していったのです。「ダメだ」「バカだ」の叱り文句は子供に悪い影響しか与えないばかりか、本来はいい資質をもっているはずの子でも、“ダメ”“バカ”に育ってしまいます。

3. 成績の上下に一喜一憂しない

こと学習面においては、小学校6年生ごろまでは女子のほうが早熟。成績もこの年ごろまでは一般に女子のほうが上の傾向があり、男の子は勉強に興味がある一部のタイプを除いて、大多数は上がったり下がったりで成績は安定しない、と考えたほうがいいでしょう。

コツコツと勉強をこなすことに比較的向いている女子に比べて、気が散りやすく興味がないことには意識がまったく向かない、というのが男の子。そのため、一部の子をのぞいては、少なくとも小学生のうちはまだ自らすすんで地道に勉強することは難しいのです。そんな特性ゆえ、成績が上下したり振るわないのは仕方がない、と親としてある程度は腹をくくりましょう。

小学生のうちの成績に関しては、親は冷静でゆったりとした態度を保持します。成績が急降下してもカッとなったりせず、変化に一喜一憂しないようにしたいものです。 また、男の子を育てるうえでなにより大切なのは「ほめる」こと。

成績に関してももちろんそうで、子供が「25点」などという、親からすると腰が抜けそうな点数をとってきたとしても、「なんだ、この点数は!」と怒鳴るのではなく、「前回よりも5点上がったじゃないか。その調子だ」「この問題は結構難しいのによく解けたわね」と、いい面をなんとか見つけてほめてあげるようにしてください。

勉強する親子

4. 子供に期待を寄せない親はダメ

子供というのはよくも悪くも、両親の遺伝子を受け継ぐ存在です。こう聞くと、「それじゃあんまり期待できないわね……」などとタメ息をつく方がいるかもしれません。

しかし、言い換えると子供は両親がもっているいい性質を必ずもっている、ということでもあります。自分とパートナーがもっているいい性質を、あらためて思い浮かべてみてください。几帳面なところや、なにに対しても前向きなところ、あるいは頭のいいところや社交的なところ……。きっとたくさん浮かんでくるはずです。これらのいい性質は、必ず子供にも受け継がれています。

「そんなことないわよ。私は人づきあいに関しては積極的で社交家タイプだけど、子供はおとなしくて人見知りするタイプだもの」などという声も聞こえてきそうですが、それはあなたの遺伝子がまだ、子供の中で目覚めていないだけのこと。あなたのもつそのいい“積極性”は、きっと形を変えて子供にもいつか発現するはずなのです。

5. 子供に期待しすぎてもダメ

前項では子供に期待を寄せたほうがいいと説明しましたが、この期待が必要以上に大きすぎると逆効果になってしまいます。親の期待が子供にとって大きなプレッシャーになるようでは、能力が伸びないばかりかつぶれてしまいかねません。

日本に“長男が家を継ぐ”という考えがまだ根強かった時代、親の期待が大きすぎたためにつぶれてしまった長男の話はそこかしこに転がっていたものです。現在でも、親が子供の能力や向き不向きを考えることなく、むやみやたらと大きな期待を寄せたことで、子供がそのプレッシャーに負けてしまったケースを何度となく見てきました。

「親の期待に沿って、なにがなんでもいい成績をとらなければ」「将来、親の跡を継いで医師にならなくては親がガッカリしてしまう」という重いプレッシャーを感じてしまうようでは、いずれ子供は必ずつぶれてしまいます。

6. しからない育児”を見直そう

昨今の子育て事情を見ると、“叱らない育児”“強制しない教育”がもてはやされていて、「しつけ」はさほど重要視されていません。そればかりか、子供へのしつけは「子供の自主性をつぶす」として、一部ではすこぶる評判が悪いようです。

しかし、少々乱暴な物言いですが、こうした“しからない育児”“強制しない教育”は、子育てを放棄しているに等しい、と私は思っています。そうした教育をとなえる人たちは、子供たちの心を尊重し、子供たちが成長していくなかで自分を律するようになるのを待つ、と主張しているようです。

ですが、手厳しいことを言わせていただくと、ほとんどの場合は知識や経験が乏しい子供を、ただ放置しているだけです。日本の伝統的な子育ては「ダメなものは理屈抜きでダメ」としてきたはずです。子供が人の物を盗んだら、理由にかかわらず“盗みは悪いこと”としてしかりつけていました。

わが子を他人とコミュニケーションがとれない人間、規則正しい生活を送ることができない怠け者、そしてガマンのきかない人間に育てたくないと思うなら、まず子供を甘やかすことをやめ、子供の心を尊重するという“しからない育児”“強制しない教育”を、今一度見直してみてはいかがでしょうか。

7. 手をかけすぎない、溺愛しない

男の子の場合、親(特に母親)から溺愛され、なんでも与えられ、面倒なことはすべて親が先回りして手をかけられて育ってきた男の子は、まず“人に頼るのが当然”という意識になってしまいます。また、親が手をかけすぎることで、自らなにかをやろうとする力が備わらず、自分自身で考えて動くことのできない、根っこのない人間になってしまいかねないのです。

実際、そうしたタイプの学生が大学で学ぶ講義を自ら考えて組み立てたり、あるいは将来の進路を決めなくてはならないという段になって、「自分はなにをしたいのか、なにをしたらいいのか見当がつかない」と脱落していった例を多く見てきました。

また親に溺愛されて育つと、子供はガマンがきかず遊び好きで、ラクをすることばかり考えるタイプになります。現代の大学には、こういった学生がかなり多いのです。これも少子化により、親が子に間違った愛情の注ぎ方をしているのがひとつの原因ではないでしょうか。

わが子に愛情を注ぐのはいたって自然なことで、それ自体に問題があるわけではありません。それどころか、母親の愛情こそが子育てにはなにより大切だといえます。しかし、その“愛”が“溺愛”になってしまうと、子供は自分の頭で考えて行動を起こす力のない人間、ガマンがきかずラクをすることばかり考える人間になってしまうのです。

8. 気ままに子供を振り回さない

自分の都合第一で子供を振り回したり、子供が同じことをしても自分の感情次第で対応がコロコロ変わる、というのも絶対にタブーです。毎日が忙しく子供に関心が向かない親、学歴さえ得られればと子供の気持ちに無頓着な親、子供をペットのようにかわいがりなんでも与える親、親子共に楽しい生活さえ送れればいいと、しつけをまったくしない親─。こうしたタイプも、“子供を振り回す親”と考えた方がいいでしょう。

親の思うままに子供を振り回すような対応を続けていると、子供の気もちはいつも不安定になり、絶えずイライラした状態に。その結果、物事に落ち着いてとり組むことが難しくなるばかりか、他人への信頼感が育たず、人と上手につきあえなくなってしまうのです。

9. 早期教育は内容をよく考えてから

早期教育には思わぬ弊害があります。まず、幼稚園児のころから反復計算や文字の読み書きを毎日訓練し、ペーパー問題を何枚も流れ作業のようにこなしてきた子は、当然のように小学校では難なく優秀な成績を維持できます。このとき、多くの子供は自分の“反復訓練”などはすっかり忘れ、「自分はなにもしなくても勉強ができるタイプだ」と錯覚してしまうのです。

そういった子が小学生になると、今度は名門中入学を目標とする有名進学塾に通うことになるはずです。最近は小学校2年生ごろから難しい問題をたくさんやらせ、名門中学の試験問題のパターンを覚えさせることで有名中学へ入学する傾向が見られます。

小学校から中学受験突破までは、“解き方のパターン”を暗記するだけでなんとかなるかもしれません。 しかし、問題は中学入学後に起こります。中学、高校になると、“考える力”が必要な科目が少しずつ増えてきて、幼児期の反復学習と進学塾の暗記学習だけで名門中学校にたどり着いたような子は、だんだん歯が立たなくなってきます。

現在お子さんが進学塾に通っている小学生なら、考える力を養わせるためにも、勉強漬けではなく、遊びを中心としたさまざまな体験をなるべく重視してください。それによって、毎日塾に通い詰めの周囲の子と比べると、多少成績が見劣りするという事態を招くかもしれませんが、心配することはありません。

この年代に体験によって培われた“考える力”こそが、中高時代になってからの真の学力へと必ずつながるはずです。

10. 長時間の映像漬けゲームざんまいはNG

一日に2時間以上テレビを見たり、ゲームに長時間のめり込む子に頭のいい子はいません。これは長年学生たちを調査したなかで見えてきた、まぎれもない事実です。

テレビの映像を見たり、ゲームの画面上で遊ぶというのはある意味、心地いいものです。ただ、流れる映像というのは一方的に目に飛び込んでくるだけで、このとき頭はなにも考えず脳はほとんど使われていません。脳にとってはラクチンで、それでいて時間つぶしになる程度には面白いのですから、人間が“心地いい”と感じるわけです。

しかし、テレビの映像やゲームの画面というのは、いわば受け身の情報。それゆえ、ダラダラと映像を見たりゲームで遊んでいてもなんの体験にもならず、ただ時間を浪費しているにすぎません。特にゲームは麻薬のようなもので、いったんのめり込むと後に引けなくなります。

これを続けていると、自発的に頭を働かせることが面倒になってしまい、成長していくうえで最も肝心な“頭を働かせる作業”、つまり読書をしたり人と会話したりといったことが苦手になってしまいます。親はたとえ子供からどんなに強く反発されようと、テレビやゲームは家庭内で時間制限を決め、その約束を厳守させましょう。

 

PROFILE
永井伸一

獨協医科大学名誉教授。東京都出身。1963 年横浜市立大学・生物学科卒業。研究生活に入り、京都大学・水産生物学で学位を取得。獨協医科大学で細胞生物学、分子生物学、行動学を通じて、地球環境と人類、哲学と医学等の人間教育に力を入れ、人間学をライフワークとする。

男の子のお母さんがやってはいけない10の習慣

男の子のお母さんがやってはいけない10の習慣

  • 作者:永井 伸一
  • 発売日: 2013/05/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)