「子育て失敗したかも…」を立て直してくれるメンターという存在

スマホをいじる子供

もう中学生になったのに学習習慣は身につかず、生活もだらしない……。子育てに後悔を感じてしまっている人がいるかもしれませんが、実はまだまだ立て直すことは可能です。それには親の覚悟と、家族の外部にいる「メンター」を活用することが必要になります。のべ4000人の男子学生の成長を見守ってきた獨協医科大学名誉教授の永井伸一先生にうかがいました。

子供も「このままではマズい…」とは思っている

子供に愛情を注ぎ、日常生活においては「自分のことは自分でやる」「けじめのある生活を送らせる」といった正しい習慣を身につけさせる。中高生になるまでの段階で、子供をこのように育ててこられたら理想的です。

しかし、現実はなかなか理想通りにはいかないもの。「わが家の子育ては間違っていたかも。子供が中学生になってしまった今では、もうとり返しがつかない…」と落胆する親御さんがいるかもしれません。

たしかに、だらしない生活習慣がすっかり身についてしまい、さらには自分の意見をもつようになったことで、親のアドバイスに素直に耳を貸せなくなってしまった中学生から立て直しを図るのは、相当に難しいこと。ですが、本気になってわが子をなんとかしたいと思うなら、まだ間に合う可能性はあります。

この時に重要な役割を担うのが「メンター」の存在です。子供がある程度成長すると、親の言葉を素直に聞けなくなってくるもの。特に思春期の子供にとって、親は〝うっとうしい存在〟であるのが自然です。

けじめのある生活を送る習慣もなく中高生まできてしまい、勉強のやり方もわからなければ、自分の頭で考えて行動を起こす力はないはず。そうした子供の意識を劇的に変えることができるのは、もはや親ではありません。

親以外の「心底信頼できて相談できる人物」「自分にとって有益なアドバイスをしてくれる人物」であるメンターの力を借りるのが、最もスムーズというわけです。

たとえば、子供が心を開いている親戚の叔父、相性の合う担任の先生、塾の講師など、まずはメンターとなってくれそうな人物を探してみてください。そのうえで、親御さんがそうした人物に相談をもちかけてみるといいでしょう。

「今のままではいけない」と子供が少しでも考えているなら、メンターからの助言は必ず心に響くはずです。

もちろん、アドバイスですぐ意識が変わるわけではありません。でも、本人と相性の合うメンターからの助言は、必ず頭の片隅に残っているはずです。

その言葉がなにかのキッカケで動き出し「オレも、このままじゃさすがにマズい」と自覚する時が必ずきます。

親としてすべきなのは、メンターからの助言が本人の中で動き出し、意識が変わるのを期待をもって見守りつつ、根気強く子供と接して毎日の生活習慣を立て直すこと。けじめのある正しい習慣をつけさせるよう、一刻も早く生活の軌道修正を図ってください。

「子供の生活をこのままにしておくのはマズい」「子供の性質をなんとかいい方向に変えたい」という、親の危機感と強い覚悟も必要不可欠なのです。

メンターと親の覚悟が子供を変える

実際、大学生まで野放図に育ってきて、もはや修正不可能と思われた学生でも、親の覚悟とメンターのひと言で、いい方向に変わった例は数多く見られます。

親から厳しく抑圧されて育ってきたある男子学生は、メンターからの「君はダメじゃない。君は両親から受けついだいい資質をたくさんもっているんだから、それを生かすことができるはずだよ」という言葉で意識が変わりました。

さらに、彼の両親もメンターの助言をキッカケに接し方をあらためたため、その学生は見違えるように変わって優秀な成績で卒業していきました。

また別の男子学生は、お母さんによって甘やかされつつ親の言いなりで育ち、反抗期を迎えられず大学生まできてしまいました。しかし、メンターからの「いつまでもそのまま、根なし草のようにフワフワしてはいられないぞ」との言葉で、今までの自分の問題点にやっと気づきます。

そこで、親に対して「自分は今までなにも考えず、親の言いなりできてしまった。少し好きにさせてほしい」と、彼にとっては相当思い切った意思表示し、約1年間大学を休学。旅行に行ったり絵を描いたり自分の好きな生活を送ったところ、ふっきれた様子でその後はしっかり勉強するようになりました。

こうした学生たちの例に共通するのは、「メンターの存在」と「親の強い覚悟」です。たとえ、問題を抱えたまま大学まできてしまったとしても、このふたつがあれば軌道修正も不可能ではないというわけです。

子供には「メンターを活かす能力」が備わっている

ただし、メンターの手を借りて立て直しをする場合、本人に「メンターを見つけて活かす能力」が養われているか、という点が極めて重要なポイントです。

まず、子供の周囲に本人と相性の合う適任者がいるのか、そしてその人物のアドバイス
を真摯に受け止められるかどうか。こればかりは、本人の性質次第でしょう。

この事実を聞いて、「あの子にそんな力はなさそう」と肩を落とす親御さんがいるとしたら、ちょっと待ってください。実は「メンターを見つけて活かす力」というのは、日本のほとんどの子供が潜在的にもっている可能性が高いのです。

日本では、親だけでなく周囲の大人も子供に愛情を注ぎ、時には心配をして面倒を見る。日本の子供は、多くの大人たちに見守られて育ちます。それゆえ、問題のある親が子供に不適切な接し方をしていたとしても、どこかで違う大人が親の代わりに愛情を注いでいることが多いのです。

もちろん、こうした周囲の大人からの愛情は、親のそれと比べると種類も熱量も違うかもしれません。とはいえ、小さいころに人から多少でも愛情を注がれた体験があれば、よくない性質を軌道修正するうえでの大きなポイントとなりえます。

人づきあいが苦手で他人と接することを好まない子や、自己中心的でいつも他人を見下している子など、一見すると他人を受け入れられないタイプに見えても、幼少期に大人から少しでも愛情を受けた経験をもっていれば、「他人を受け入れる力」が本人の奥底に眠っている可能性は十分にあります。

親は、子供に対しての期待と希望を絶対に捨ててしまわないこと。小さいころに大人から愛情を受けた体験があるなら、まだ今からでも改善の余地があります。そう信じて、「子供にとってのメンターを見つける」「正しい生活習慣をあらためてつけさせる」のこの二つの事柄について、親として真剣に向き合ってみてください。

 

PROFILE
永井伸一

獨協医科大学名誉教授。東京都出身。1963 年横浜市立大学・生物学科卒業。研究生活に入り、京都大学・水産生物学で学位を取得。獨協医科大学で細胞生物学、分子生物学、行動学を通じて、地球環境と人類、哲学と医学等の人間教育に力を入れ、人間学をライフワークとする。

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