“最強のフリーランス”がやっている仕事を途切れさせないコツ

「海の真ん中で、穴あき屋根なしの1人用ボートを漕いでいる状態」。これがフリーランスのイメージだというのは日本史のカリスマ講師、伊藤賀一先生。こんなシビアな状況下でも、数々のメディア出演、プロレスのリングアナウンサー、ラジオパーソナリティーも務めるなど、18年間フリーでありながら仕事が絶えません。特別な資格やスキル、人脈がなくても、「わらしべ長者」のように仕事が途切れさせない方法とは?

仕事が途切れない人が「初対面の打合せ」でしていること

僕は、徹底的な単独フリーランスを売りにしていますが、5年前に、半年だけマネジャーさんと契約したことがあります。気乗りしなかったのですが、「マネジャーさんがいたことがある」というのも1つの経験だと思い、仕事は1人で頂けている状態のまま、とりあえずスタートしました。

僕のマネジメントをしてくれたのは、誰でも知っている俳優さんのマネジャー経験もあるTさんです。結論からいえば、僕の未熟さから申し訳ないことをしました。現在も付き合いは残っており、普通に会ったりして人間関係としては良好です。単に、僕がマネジメントされることに向いていなかったのです。

まず納得いかなかったのが、僕の名前だけで入ってくる仕事が、他人に管理されてしまうこと。

僕は「交渉事を楽しむ」ところがあるらしく、自分で行きたくてしょうがない。せっかく相手方の事務所や、知らないカフェや、普段降りない駅などに行けるチャンスなのに……。大人の社会見学の機会を奪われて、つまらない!

さて、契約を解除するきっかけは、僕が取ってきた仕事の打ち合わせに行ったTさんが、その仕事の打ち合わせだけをして帰ってこられたことでした。

「信じられない」と思い、一発で解除……なぜだと思われますか?

初対面の打ち合わせは、「次の仕事の話をする」場所だからです。

依頼が来た仕事は、すでに決まっている仕事です。わざわざ出かけていくならば、なぜ次の仕事を決めてこないのか? きつい言い方かもしれませんが、「ガキの使いやあらへんで」と思ったわけです。

『会社を離れても仕事が途切れない7つのツボ』は、青春出版社の村松さんから僕の公式HPに頂いた、全く別の一般書の依頼がきっかけで生まれたものです。

僕はやる気マンマンで、打ち合わせに向かいました(タクシー車内からよく見かけていたので、入りたかった建物なのです)。

お会いして、しばらくはその書籍の話など様々な話をしながら、ふとアイデアが浮かびました。完全単独フリーランスの僕が、なぜここまで大量に仕事を抱え、気絶寸前に追い込まれているのか。仕事の依頼が毎日のように来て、その関連のメール返信だけでも大変なのです……。

話をしていて、非常にフィーリングが合うというか、話せば話すほど思考が整理されていくタイプのお相手でした。思いつくまま、仕事が途切れない秘訣を話していくと、熱心にメモを取られています。どんどん話しているうち、どちらからともなく、

「あの……こっちを先に書いたほうが良さそうじゃないですか?」

となりました。

その後、新書として企画を通して頂き現在に至ります。

これは自分にとってそう珍しいことではありません。

確かに、順番まで逆転するのはまれですが、初回の打ち合わせで「次の仕事」の話をして、最初に受けた仕事に取りかかる前に「次の仕事の企画」が社内で通っているのは普通です。このほうが精神的に落ち着きます。

常にワンチャンスではなくツーチャンス。

次の打席が保障されているからこそ、思い切りフルスイングできる。

これが「仕事が途切れない」最大のメリットなのです。

帰りのエレベーターホールや玄関で一息ついてはいけない

「いいですね、チャンスが多くて」と言われることが多いです。

確かにそうですが、言ってくれる人にチャンスが少ない理由は手に取るように分かります。せっかく打席に立っているのにバットを振らないから、です。

ライターさんを例にとりましょう。出版社の中なんて、素人がそうそう入れるわけではありません。打ち合わせで入れるのは大チャンスです!

なので、せめて3回はバットを振ってください。出場できなくて(出版社に立ち入れなくて)、共同オフィスや自宅でバットを振ってる人は星の数ほどいるんですから。

1球目は、打ち合わせで訪れた際の玄関です。

玄関は、出版社の関係者が、日中ならたくさん通ります。何度も行っているのなら、以前仕事を振ってくれたが最近音沙汰のない編集者、一緒に仕事したことのあるデザイナーさん等、いくらでも「顔見知り」という球が飛んでくるのです。

2球目は、帰りのエレベーターホールです。

偉い人の見送りはエレベーターまでが普通です。その瞬間が勝負!

「編集長、そのネクタイ、ブルックスブラザーズですね。僕も色違い持ってます。でも、そっち買ったほうが良かったか……」

「おお、よく気づいたねえ。僕は昔から好きでね。最近してなかったけど……」

ファウルチップ。しかしよく当てた。次回はもっといい球が飛んでくるかも?

3球目は、帰りの玄関で振り返りながら。

「今日はありがとうございました。また何かあったら言ってくださいね」

「ああ、そうそう、そういえばこういう企画が動き出してて……」

カッキーン! これで仕事は途切れません。

 

PROFILE
伊藤賀一

1972 年、京都生まれ。リクルート「スタディサプリ」で日本史・倫理・政治経済・現代社会・中学地理・中学歴史・中学公民の7科目を担当する「日本一生徒数の多い社会講師」。43歳で一般受験し、早稲田大学教育学部生涯教育学専修に在学中。法政大学文学部史学科卒業後、東進ハイスクールの最年少講師となる。30歳から教壇を一旦離れ、全国を住み込みで働き見聞を広める(20以上の職種を経験)。四国遍路を含む4年のブランクを経て秀英予備校で復帰。著書・監修書は『47都道府県の歴史と地理がわかる事典』(幻冬舎新書)、『「90秒スタディ」ですぐわかる!日本史速習講義』(PHP研究所)など累計55万部。辰已法律研究所(司法試験予備校)・東急ホームクレール(シニア施設)・京急COTONOWA・池袋コミュニティカレッジ(学生・社会人向けスクール)等にも出講中。数々のTV・新聞などメディア出演、プロレスのリングアナウンサーやラジオパーソナリティーも務める。