「栄養療法」を取り入れている人は、なぜウイルスに強いのか?

「私たちの体を守る免疫の力は、『防御』と『攻撃』の2段階から成り立っています。いずれも大事ですが、ウィズコロナの時代に特に必要なのは、『防御』の力です」。そう語るのは、日本初の栄養療法専門クリニックを開設した医師の溝口徹先生。私たちの体に備わる「防御」のしくみについて解説いただきました。

「バランスのいい食事」だけでは、新型コロナは防げない!?

2020年、新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるい、私たちは不安のなかで今まで経験したことのない自粛生活を送りました。日本中、いや世界中が改めて感染症の怖さ、そして健康の大切さを痛感したのではないでしょうか。

私は「オーソモレキュラー栄養療法(分子整合栄養療法)」と呼ばれる方法で、20年以上にわたり、さまざまな病気の治療をおこなってきました。一般的にはあまり聞きなれない治療法かもしれませんが、文字通り「栄養」がカギとなる治療法です。

オーソモレキュラー栄養療法をひとことで説明すると、「その人にとって最適な状態を保つために必要な栄養素を補う治療法」です。具体的には食事の改善と、必要に応じて積極的にサプリメントで栄養素の補充をおこないます。

人間の体は、頭の先から足の先まで、食べたものからできています。そして体の不調を起こしたり、病気になったりするのには、何らかの原因があります。

オーソモレキュラー栄養療法では、その原因は理想的な状態から見たときの栄養素の不足にあると考えます。

私たちの体は、37兆個ともいわれる細胞からできています。その細胞の1つひとつに十分な栄養が行き渡ることで、健康な体を維持することができます。つまり、さまざまな不調や病気を改善し、免疫力の高い健康な体を手に入れるためには、必要となる栄養素を意図的に補う必要があるのです。

オーソモレキュラー栄養療法は、うつやパニック障害、発達障害、皮膚トラブル、不妊、糖尿病、がんなど、精神疾患から内科系疾患まで、幅広い不調や病気に治療効果があります。私もこれまで多くの治療効果を実感し、さまざまな学会やメディアで発表し、本も出版してきました。

そして、実はオーソモレキュラー栄養療法を実践している人には、「風邪をひかなくなった」「今年はインフルエンザにかからなかった」などの共通点があります。オーソモレキュラー栄養療法は、困っている症状や病気を治療する過程の結果として免疫が向上し、感染症のような外からやってくる〝外敵〟に対しても強くなるのです。

例えば、冬場に学校などでインフルエンザが大流行することがありますね。このとき、小さな教室で毎日一緒に過ごしているのに、インフルエンザを発症する子どもとしない子どもがいるのはなぜでしょうか。

私は、この差は「栄養」にあると考えています。オーソモレキュラー栄養療法を実践しているお子さんは、あらゆる感染症にかかりにくくなるのです。

ひどいアレルギー体質だった子どもが、皆勤賞を得るまでに改善

私の息子にも幼い頃からオーソモレキュラー栄養療法を実践してきましたが、小学校4年生から大学を卒業するまで、1日も学校を休んだことがありません。

息子はもともとひどいアレルギー体質で、毎朝大量のティッシュで鼻をかみ、目をかきむしっていました。風邪をひくことも多く、学校を休むこともたびたびありました。

それが、小学校2年生からこの治療法をはじめたところ、すっかり丈夫になり、それ以降は大学卒業まで皆勤賞、というわけです(この間、インフルエンザの予防接種も受けていません)。

私自身も年に数回風邪症状に悩まされていましたが、オーソモレキュラー栄養療法に出会ってからは、インフルエンザにかかったことがなく、いたって健康です。

このような家族や私自身の経験からも、栄養が免疫に深くかかわっていることを実感しています。

そもそもオーソモレキュラー栄養療法を実践している人は、精神疾患や内科系疾患などの治療のために栄養をとっているわけですが、この治療法を続けていると、免疫力アップという嬉しい〝おまけ〟がもれなくついてくるのです。

体を「お城」にたとえると、免疫のしくみがよくわかる

「免疫力の大切さ」については至るところで言及されていますが、そもそも免疫とは何でしょうか。

もともとの語源はラテン語で「感染症(疫病)を免れる」という意味で、「免疫」という言葉が使われるようになりました。

古来、感染症は多くの人の命を奪ってきましたが、ある種類の感染症では、一度感染して生き残った人は同じ感染症には二度とかからないということが経験的にわかってきたのです。これが「免疫ができた」という意味になります。

今では当たり前に「免疫」という言葉を使っていますが、考えてみればこの体を守る素晴らしいしくみがあるからこそ、私たち人間は生き延びてきたといえます。

私たちの体が病原体に侵されないように、常に警備し、必要に応じて戦うこのしくみを、わかりやすくたとえて説明してみましょう。

人間の体をお城、お城に攻めてくる敵がウイルスや細菌などの病原体だとしましょう。
お城のまわりには、敵が容易にお城にたどり着けないようにお堀があります。お堀の幅が広く深ければ深いほど、そしてお堀に満々と水が満たされているほど、敵はお城に攻め入ることができなくなります。

私たちの体に備わっている免疫でいうと、お城の周囲を囲み水で満たされているお堀が「粘液」です。

次に敵の侵入を防いでいるのは、高くそびえる急角度の城壁です。免疫では、城壁に当たるものが「粘膜」になります。たとえ敵がお堀から城にたどり着き、城壁を登ろうとしても、丈夫な粘膜があることによって壁を登ることができず、敵を落とそうとします。

それでも、強い敵が城壁を登ってくることもあります。もしも敵が壁を登ってきたら、そのときは場内の警備員や戦闘員が働きます。

場内の警備をしているのが「白血球」です。白血球には好中球(こうちゅうきゅう)やマクロファージなどいろいろな種類があります。これらは免疫担当細胞とも呼ばれます。
まず、見たこともない侵入者を発見すると、とりあえず攻撃するのが、NK(ナチュラルキラー)細胞や好中球、マクロファージなどです。

そして警備員を取りまとめる警備隊長が、樹状(じゅじょう)細胞です。樹状細胞は戦闘員に敵の情報を伝えます。「こういう特徴があるのは××菌」「こういう形をしているのが△△ウイルス」といった情報を提供し、次に同じような敵が来たらやっつけるように戦闘員に伝えるのです。

戦闘員に当たるのが、好中球、ヘルパーT細胞、キラーT細胞などです。戦闘員は、同じ敵が来たとき、その敵の急所を効果的にやっつける武器を準備しておきます。

そして敵が攻め入ったときは、容赦なく戦います。その武器となるのが「抗体」です。

このように私たちは、普段からお城(人体)を守るためのさまざまな防御機能を備えています。もしウイルスや細菌などの敵が侵入してきたら、攻撃に転じるのです。

私はなかでも最初の関門である「粘膜」が大切であると考えています。この段階で〝外敵〟を排除できれば、病気にならないですみます。

ただの免疫ではなく「粘膜免疫力」を高めることが重要です。丈夫な粘膜をつくれば、ウイルスや細菌は私たちの体のなかに侵入しにくくなるからです。

次回は、ウイルス対策のカギとなる栄養素について解説します。

 

PROFILE
溝口徹

1964年神奈川県生まれ。福島県立医科大学卒業。横浜市立大学病院、国立循環器病センターを経て、1996年、痛みや内科系疾患を扱う辻堂クリニックを開設。2003年には日本初の栄養療法専門クリニックである新宿溝口クリニックを開設。オーソモレキュラー(分子整合栄養医学)療法に基づくアプローチで、精神疾患のほか多くの疾患の治療にあたるとともに、患者や医師向けの講演会もおこなっている。