「貧乏ゆすり」はストレス鎮静物質を出すための“良いクセ”だった!

貧乏ゆすりをする人

「つい、貧乏ゆすりをしてしまう」「電車に揺られると、いつの間にかうたた寝をしている」―。精巧につくられている人体にも、よく見れば実は残念な現象がいろいろと起こっています。人体にまつわる身近で不思議な現象の仕組みを、テレビでも活躍する工藤孝文先生にやさしく解き明かしてもらいます。

なぜ電車でうたた寝をしてしまうのか?

安全な国ニッポンでは、電車で居眠りしている人をよく見かけます。気がついたら下りる駅を乗り過ごしてしまったという失敗は、多くの人が経験していることでしょう。

私たち人間が電車でつい眠くなってしまうのは、脳の中で平衡感覚を感知する部分と、覚醒に関わる上行性網様体賦活系という神経系統のしくみが大いに関係しています。

私たちの身体は、強く素早く揺れると、その情報が上行性網様体賦活系を活性化し、脳を覚醒させるしくみになっています。しかし、ゆっくり単調なリズムで揺れると、上行性網様体賦活系の働きが弱まり、自然と眠くなるようにできています。

赤ちゃんなどが、ゆりかごで揺らされていたり、お母さんにだっこされてゆっくり揺らされていると眠りにつくのは、実はこうした脳のしくみと関係があったわけです。つまり、電車内は、一日の仕事を終えて帰宅途中の大人たちにとっての“ゆりかご”のようなもの。おまけに疲れていたり、アルコールが入っていたりすれば、ついうとうとしてしまうのは至極当然のことなのです。

とはいえ、車内でぐっすり眠ってしまうのは、防犯上も、健康上も、あまり良いこととはいえません。ガムを噛むなど、自分なりの対策をとることをおすすめしま

“あの残念なクセ”が幸せホルモンを増やす!?

打ち合わせや会議の途中、ふと相手の足元を見たとき、片足がリズミカルに動いているのに気がついて、ちょっと残念な気分になったことはありませんか。このような貧乏ゆすりは、昔から良くないクセや残念なクセとされ、子どもがやっていると大人は「みっともないからやめなさい」と叱ったものです。

ところが、最近になって、貧乏ゆすりに意外な効果があることがわかってきました。実は、貧乏ゆすりをすると、“幸せホルモン”の異名を持つセロトニンの脳内分泌が増えるというのです。

セロトニンとは、私たちの心に安らぎをもたらしたり、ノルアドレナリンやドーパミンといった神経伝達物質の作用をうまく制御したりしてくれる、非常に重要なホルモンのひとつ。ストレスがたまったり、睡眠不足や不規則な生活が続いてセロトニンの分泌が減ると、心身がリラックスできなくなり、気分がうつ的になったりします。

では、どうすれば私たちはセロトニンを増やすことができるのでしょうか。有効なのは、リズム運動です。ウォーキングや音楽に合わせた軽い体操、ダンスなど、規則的なリズムを繰り返す運動をすると、セロトニンの分泌が高まることがわかっています。

そこで、貧乏ゆすりです。足などを小刻みに揺らし続ける貧乏ゆすりをすることでも、こうしたリズム運動と同じような効果が期待できるといわれているのです。また、あえて説明するまでもなく、貧乏ゆすりにはイライラを鎮める効果もあるので、ストレス解消にも役立っていると考えられます。

考えてみれば、私たち人間は、イライラしたり、ストレスを感じているとき、自然と貧乏ゆすりをはじめる傾向があります。これは、リズム運動をすることでセロトニンの分泌を高めて心と身体の状態を落ち着かせるために自然と身についた、“良いクセ”だったのかもしれません。

ただし、貧乏ゆすりを目の前でやられると不快に感じ人は多いので、むやみに人前でやるのは避けておいたほうがいいでしょう。

ある時期、父親が娘から突然嫌われるのはなぜ?

若い娘さんをお持ちの父親の中には経験者が多いと思いますが、女性は思春期になると、突然父親を毛嫌いする傾向にあります。「お父さんは臭い」とか、「お父さんの入ったお風呂には入らない」「お父さんの下着と私のものを一緒に洗わないで」など…。

実はこれも、人間の、ある意味ざんねんな本能のひとつと考えられています。女性は思春期になると、血の繋がりの濃い異性の身体のニオイ(フェロモン)を嫌う習性があるのです。ただし、これは近親配合による奇形児出産などのリスクを減らすための女性の防衛本能だと考えられています。

父親からしてみればざんねんかもしれませんが、むしろ娘さんが健全に成長している証拠なのだと、前向きにとらえましょう。

 

PROFILE
工藤孝文

1983年福岡県生まれ。福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。帰国後、大学病院、地域の基幹病院を経て、現在は、福岡県みやま市の工藤内科で地域医療を行っている。専門は、糖尿病・ダイエット治療・漢方治療。「ガッテン! 」(NHK)、「世界一受けたい授業」(日本テレビ)など、テレビ番組への出演・医療監修のほか、ダイエット関連の著作も多い。日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本抗加齢医学会・日本東洋医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会・小児慢性疾病指定医。