一流ほど仕事が早い秘密! マッキンゼー流「悩まない」行動原則

マッキンゼー流悩まない行動原則

ビジネスに求められるスキルはいろいろあるが、そのベースとなる最も大切なものが「感情コントロール」の技術だ。マッキンゼーでは問題解決のスキルをそのまま感情コントロールに応用し、メンタルの安定に大きく貢献している。マッキンゼーをはじめとした外資系コンサルティングファームで活躍した大嶋祥誉氏に、そのエッセンスを解説してもらった。

尊敬する上司に見た感情コントロールの奥義

マッキンゼーの先輩、コンサルティングやエグゼクティブコーチングのクライアントの方々や、ビジネスパートナーなど、これまで「仕事ができ、かつ人柄も素晴らしい」と感じる人が、何人かいました。彼らはバイタリティに溢れ、分析力や判断力、決断力にも秀ひいでている。しかも上司や部下、同僚からも信用されている──。

このような人物は、例外なく感情が安定し、穏やかでありながら、内には熱い情熱や強い気持ちを持っていました。なぜ彼らはいつも感情が安定しているのだろう? 若い頃の私は、自分の仕事をこなすのに精いっぱい。彼らとは真逆で、不測の事態が起きたり、上司に注意されたり、叱られたりするたび、感情は乱れっぱなしでした。

「いつも穏やかで心乱れず仕事ができる秘訣は何ですか?」

あるとき自分の仕事のお手本であり、メンターとして尊敬していた上司に、尋ねたことがあります。その上司は即座に答えました。

「感情的になっても、悩んで思い煩っていても、仕事がうまく進むわけではないだろう。どうしたら問題を解決し、目標達成できるか? それだけを考え、ひたすら実行するだけだよ」

それまでの私は、自分の思い通りに仕事が進まないと、焦ったりイライラしたりしていました。イライラしても、仕事がはかどるわけではありません。ビジネスパーソンにとって、やるべき仕事は本来明確に決まっているはずです。

些細な問題で「悩まない」ためのシンプルな行動原則

営業成績を上げる、新企画を考え実行する、人材育成をする……それぞれの役割と目標がある。目標を達成するために、最善の判断と行動を取る。仕事ができ、人柄もすばらしい人たちの行動原則はじつにシンプルなのです。とくに、彼らは負の感情にとらわれることが、ほとんどありません。

ところが、そこに感情を持ち込むと、途端に仕事が複雑で面倒なものに変わってくる。仕事ができない人、遅い人は、自分の感情の乱れをそのまま仕事に持ち込み、思い悩み、逡巡し、どんどん仕事を複雑にしていくのです。

逆に尊敬できるビジネスパーソンの仕事の仕方は明瞭です。彼らは割り切りが早い。たとえば自分がやるべきこととやらなくてよいこと、自分がコントロールできることとできないこと、目標達成に必要なこととその優先順位……。

そして、やるべきこと、やれることはすぐに手をつける。悩んでも仕方ないものは悩まずスルーする

仕事ができる人の特徴の一つは「悩まない」ということです。悩んだり、感情にとらわれている状態というのは、思考が混乱し、一種のパニックを起こしている状態だと言っていいかもしれません。

「悩まない」で仕事をするなんて自分にはできない──。そんな声が聞こえてきそうです。でも大丈夫。なぜなら、心乱れ、悩みまくっていた私自身も変わることができたのですから。

隠されている問題を明確にすることがポイント

マッキンゼーで叩き込まれたコンサルティングの究極の目的は、隠れている真の問題を見える化させるというもの。たとえば売り上げが伸び悩み、営業を改善したいという依頼が来たとします。

その際、新規獲得を狙うか、既存顧客のフォローに力を入れるのか? 販促活動をどうすればいいか? など営業戦略に目を奪われがちです。しかし、よく話を聞き、現場を見ていると、問題は営業戦略ではなく、組織内、組織間の意思伝達がうまくいっていないということだと分かってくる。

隠れていた真の問題を顕在化させ、解決すべき課題にすること──。これこそが経営コンサルタントの仕事であり、マッキンゼーで私が学んだことなのです。クライアントには見えないものを見える化する。問題が見えてくれば、それだけですでに問題解決への一歩を踏み出したことになるのです。

そのために、対象をロジカルに分析することが大前提となります。固定概念を捨て、情報を収集し、ロジカルに分析して問題点を探り出す。

感情コントロールも、まさに同じ構図が当てはまります。イライラしたり怒ったり、不安になって落ち込んだり……。感情の乱れは、内在している問題を明確にすることができていないために生まれるのです。

問題がわからないから、解決することもできない。モヤモヤした中で、悩みや葛藤が生まれ、イライラや怒りなどの感情がうごめき出す。逆に言うなら、感情の乱れの背後にある問題を明確にし、意識化すれば、感情に流されず問題解決に向かうことができるのです

「悩みにせずに問題にする」と表現すると、分かりやすいかもしれません。「悩み」というのは、何か事が起きたときに、その問題の解決策が浮かばず、どう対応すればよいか分からない場合に、生まれるものです。つまり、思考がフリーズした状態です。

悩みを「解決すべき問題」にしてしまえば、後はそれをどう解決していくか、という必然的な流れになります。ですから、悩まずにどんどん仕事を進めていく人は、「問題化する力が高い」人ということもできるでしょう。

 

感情は悩みにするのではなく問題化する

パニックになってしまう人の特徴とは?

たとえば、仕事量が多くてどうしたらいいかと悩んでいるAさんが、いたとしましょう。一種のパニック状態でストレスがたまり、しかも、自分には能力がないのだと自らを責めています。

ここで、冷静に自分のすべての仕事を見渡してみましょう。すべての仕事を、同じ日時に仕上げなければいけないわけではないはずです。納期や締め切りによって、まずすぐに手をつけなければいけない仕事、後回しにしていい仕事があるはずです。

次に自分でやるべき仕事と、自分でなくてもできる仕事に仕分けしてみましょう。資料を集めたり、コピーを取ったりする仕事は人に振れるのなら、できる限り振ってしまいます。

自分がやるべき仕事の中で、優先順位の高いものから取りかかります。その際、悩んでも仕方がないこと、自分のコントロール不可能なことについては、一切思い悩んだりしないようにしましょう。

たとえば、企画案の内容のブラッシュアップを上司に頼んだとして、もはや頼んだ以上は「上司はあの企画書をどう評価しているだろうか?」「こうすればよかったかもしれない……」などと、悩んだところでどうなるものでもありません。

自分のコントロール不可能なものに対して思い煩い、時間やエネルギーを消費するのは無駄です。上司から企画書に対して何か言われたら、そのときに対処すればいい。

こうして目の前のやるべき仕事を、粛々とこなしていけば、最初に対応不可能だと思われた仕事の山も少しずつ切り崩されていき、やがて先が見通せるようになります。私の知る限り、仕事のできる人たちはみな、このような手順でやるべきことを着実にこなしています。そこで、余計な感情を差しはさむことも、感情に流されることもありません。

 

仕事の優先度を判断するマトリックス

 

PROFILE
大嶋祥誉

センジュヒューマンデザインワークス代表取締役。エグゼクティブコーチ、人材戦略コンサルタント。米国デューク大学Fuqua School of Business MBA取得。シカゴ大学大学院修了(MA)。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ワトソンワイアットなどの外資系コンサルティング会社や日系シンクタンクなどで経営、人材戦略へのコンサルティングに携わる。2002年に独立し、2000チーム以上のチームビルディング、組織変革コンサルティング、経営者や役員へのエグゼクティブコーチングを行う。また、世界のエグゼクティブが学ぶ「TM瞑想」を20年以上実践、TM瞑想インストラクターの資格も持ち、多くの経営者やビジネスパーソンに瞑想や感情コントロール、休息法を指導、彼らのパフォーマンスアップのサポートをしている。

マッキンゼーで学んだ感情コントロールの技術

マッキンゼーで学んだ感情コントロールの技術

  • 作者:大嶋 祥誉
  • 発売日: 2018/10/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)