仕事が途切れない人が「語学・金融・デジタル」より重視している事

IT知識やプログラミングの能力などの現代的なスキルが何もなくても、斜陽産業に身を置いていたとしても、それは生き抜くうえで関係はない―。スタディサプリで大人気の“複業先生”こと伊藤賀一先生に、周囲を味方につけ、仕事が途切れさせないためのスキルについて教えてもらいました。

資格よりも、知識よりも、今すぐ役立つビジネススキル

どうやら語学・金融知識・情報スキルが現代の「三種の神器」らしいのですが、今さら言われてもすぐには揃えられないし、僕は現状1つも持っていません。

先日見た記事ではもっと細かく、「英語+1言語、不動産投資・保険・税金の知識、プログラミング、起業経験や人材マネジメント経験」等と書いてありました。 僕は1つもできないです。

中国語の単位を落として早大を今年卒業できず、デジタルに弱すぎて自動洗浄便座すら使ったことがなく、人を雇う起業なんて考えたこともないのです。 1人でいたい。

そんな僕が、「今すぐに」「誰でもできる」術を提示したいと思います。

それが「アウェイをホームにする力」です。どこに行っても、周囲を味方だらけにするコミュニケーション能力のことです。 

「信念と気迫」をあなどってはいけない

まず、あらゆる場面で「タイマンじゃそうそう負けない」という信念と気迫を前面に出してください。

その上で、根性を決めてインファイト(接近戦)に持ち込むのです。

本当に仕事の決定権を持っている「すごい人」の前には、「席次表」や「指定席」はありません。自由席なのです。

自由席は英語で何と言うか、ご存じですか?

答えは「non-resreved seat」で、「free seat」ではありません。

「何をやってもいい席」ではなく、「席が確保されていない」という意味。すなわち「獲ったもの勝ち」なんです。

ならば、行くしかない。それが僕のいるフリーランスの世界の原則です。

「すごい人」を味方につける、ちょっとしたコツ

僕は、仕事を初めて今年で30年になります。

特に、フリーになってからの15年間で、数々の「すごい人」と会う幸運に恵まれてきました。

様々な「すごい人たち」が共通して、僕たちフリーランスに対して期待していることが2つあります。

「何でもいいから笑わせろ」

「この私を失望させるなよ」

です。それだけなんです。忘れないでください。

これに応えればいいわけです。つまり、ヨイショや忖度だろうが、見て見ぬふりや善意からの嘘だろうが、先方は気にしていません。とにかくこの「2つ」を外さないことが大事なのです。

経済的・精神的には余裕があるものの、時間はなく忙しい人だからこそ、

「どうせなら綺麗に騙されたい」

「結果しか見ない」

というタイプが圧倒的に多いです。ある意味、「忙しいのに退屈」なのです。

僕たちフリーランスは、こういう人たちを味方につけなければならないのです。

そのためのコツを、1つ紹介しましょう。

話のついでに軽くであっても、相手が示してくれた「お勧め」をすぐに実行することです。

「この本、読むといいよ」

「あの映画は良かった」

と、聞いてしまったなら、すぐさま読む。観る。分かっていても、「しない人」が多いからこそ、「する人」は目に留まります。

相手は心を開いているからこそ、勧めてくれたのです。

「しない」なら、何のために接近したのか分かりません。

大切なのは、「するか、しないか」です。

口下手で気まずい…は変えられる

インファイト(接近戦)状態となり、仕事相手と会った時に何を話せばいいかに悩む人もいらっしゃいますよね。

鳥山明先生の漫画・アニメ『ドラゴンボール』を御存じの方なら通じると思いますが、普段から頭に「スカウター(架空の戦闘力測定器)」をつけてください。

相手のパワーはいくつで、自分はいくつなのか。

どの話題に関しては相手のほうが上か、それもどのくらい上か。

様々な話題を振ったり振られたりすると、1度会えばほぼ正確な数値が判明します。

コミュニケーションが苦手な人が、無理に「振る」側になる必要はありません。

「振られた」時にこちらがどう答えるか、それに対して相手が「どう返すか」というやり取りの中で、相手の戦闘力は分かるからです。

なんかケンカみたいだな……と思われたかもしれません。そう、顔合わせはケンカであり勝負なんです。仲良し同士の遊びじゃなく、仕事ですから。

ここで、ロールプレイングをしてみましょう。

例えば、名刺交換をしますよね。

あなたは、どんな名刺をお持ちですか? 会社員時代とは違い、自由です。パッと印象づけられるようなものを、特注で作成していますか?

僕は、友人でもあり、TVによく出ているアメリカ人デザイナーでありタレントのケイリーン= フォールズにデザインしてもらった、黒地にエメラルドグリーンの「Gaichi Itou 伊藤賀一」という名刺を使っています。

見た目のインパクトが絶大で、ほぼ全員が「カッコイイですね!」と、声に出して言ってくれます。これで、次に話す順番がこちらに回って来ます。

例えば、以下のような話はどうでしょう?

日本が大好き、と来日して日の浅かったケイリーンとは、僕がCS放送で「天職」という番組を持っていた時、対談相手に指名することで知り合いました。

ここで、

「え? 賀一先生そんな仕事やってらっしゃったんですか?」となります。

「ええ、演者だけじゃなく広報プロデューサーもやってました」

「えー!」

「その番組内でさらに知り合った、彼女の友人のタレント・通訳案内士である栄木明日香さんとは、何度も食事やプロレスの試合を観に行くほどの仲良しなんです」という話をしつつ、一緒に撮った写真を見せます。

「なにこの美人!」

「彼女、ミスユニバースジャパンのファイナリストで、DHCシンデレラなんです」

と、またこちらが話す側に立てます。

彼女たちとは偶然、「運」と「縁」がありました。でも、初対面時に、ケイリーンや栄木さんに僕が嫌われていたらアウトです。

すべての出会いを逃さない「握力」、これもまた、そういう意味では勝負なのです。

具体的な方法に戻りましょう。

意外に大事なのは、インタビューの仕事でもない限り、相手のことを調べすぎないことです。

すでに知っている話を聞いても、相手にとって好ましい反応ができません。あいづちの打ち方が不自然だったり、驚いてほしいポイントで驚かないといったことが続くと、話者に「この人、話を聞いてないのかな?」と思われてしまいます。

相手のタイプによって、こちらの雰囲気を変えることも必要です。仕事の仕方が「ライオンタイプ(=部下にやらせる)」なのか、「オオカミタイプ(=集団で動くが本人が先頭に立つ)」なのか、「チータータイプ(=単独行動型)」なのか。

僕は完全な「チーター」です。

わずか4秒で地上動物で最速の時速110㎞に到達するという、スイッチが入れば誰も敵わないダッシュ力……自分もそうありたいと思います。しかし500mしか走れず、満腹になったら歩くことすらしない怠惰さ……これは反面教師としなくてはですね。

あなたはどれですか?

会う人によって「身長」すら変えるわけ

また、会う前の仕込みも大事です。

僕は会う人や仕事のタイプによって、底の高さが違う靴を用意しており、身長すら変えます。

相手が小柄な女性の場合は低い靴。例えば、スタディサプリの人気講師、古典の岡本梨奈先生は150.5㎝で、僕は179.5㎝ですから29㎝の差があります。

これって、男同士で歩いているとすると、僕の隣に約209㎝のジャイアント馬場さんがいるのと同じ差なんです。

大きいほうは、それだけの「圧」が出てしまう。これを常に意識して、例えば小柄な女性の前では、できるだけ優しく振る舞うようにしています。

このように、初対面のコミュニケーションの大半は、意識の持ち方ひとつなのです。それが、言葉の端々や、ちょっとした所作に出ます。

人の心をつかむ所作

まず前提として、良くも悪くも、人には2タイプあります。

五・一五事件(1932年)で殺害された犬養毅首相ではありませんが、

「話せばわかる」タイプと、

「問答無用」タイプ

です。

後者のタイプとは、仕事上、無理に会ってコミュニケーションをとる必要はありません。メールのやり取りなどで、来た依頼をきちんと果たせば、きちんと評価され、次もまた仕事が来ます。何も心配ありません。

ご存知のように、話すことだけがコミュニケーションではありません。立ち居振る舞い、気遣いなど有形無形の所作は、とても大事です。

たとえば財布を見ると、中身に一定のルールがなく、お札の向きがバラバラの人が意外と多いですよね。

僕は、折らなくてすむので長財布にして、開いた左側に一万円札、右側に手前から千円札、二千円札(話のタネに一枚のみ)、五千円札の順に向きを揃えて並べています。

手前は折れ目の入っているお札、奥は全てピン札です。

電子マネーのチャージやチェーン店以外、ピン札で支払います。

もちろんカードで決済したって良いと思います。ポイントとともに利用額に応じて信用もたまりますから。

ただし、サッとピン札で支払ったほうが「目立つ」のです。

それに関連して、長財布をわざと持ち歩く大きな理由があります。

僕たち「予備校講師」と呼ばれる職業は、世間的にかなり低く見られがちです。大学教員のように権威もなければ、幼・小・中・高の教員のように免許もない。塾の先生なら経営者や会社員という信用があるが、それもない。

揶揄される際に「チョーク芸人」と言われることもありますが、それは芸人さんに失礼というもの。まあ要するにキワモノ枠の職業です。

自分の職業を一度も恥ずかしいと思ったことはありませんが、そのように見られているという自覚はあります。完全な見世物商売です。

その代わり、成功すれば正規の教員や会社員よりも圧倒的に報酬は高く、大学の学長より稼げます。

ならば、僕らは「フリークス(怪物)」であり、「ズーランド(動物園)」でいいじゃないか、と個人的に思っています。

返り討ちにしてしまうので襲わないで頂きたいのですが、僕はいつも財布の中に70万円は入れています。そして、接待される時以外は、ピン札で全額払います。割り勘など、よほど特殊な場でない限りしません。

断られそうになったら、キラーワードがあります。

「たまには自分にも格好つけさせてください」

 

「うわ、予備校のトップ講師ってやっぱスゲえな」

「雰囲気あるな」

と思わせてナンボの商売だと思っています。

極端な例ですが、これもまた所作なのです。

プロにとって「雰囲気あるな」は最高の褒め言葉です。

 

PROFILE
伊藤賀一

1972 年、京都生まれ。リクルート「スタディサプリ」で日本史・倫理・政治経済・現代社会・中学地理・中学歴史・中学公民の7科目を担当する「日本一生徒数の多い社会講師」。43歳で一般受験し、早稲田大学教育学部生涯教育学専修に在学中。法政大学文学部史学科卒業後、東進ハイスクールの最年少講師となる。30歳から教壇を一旦離れ、全国を住み込みで働き見聞を広める(20以上の職種を経験)。四国遍路を含む4年のブランクを経て秀英予備校で復帰。著書・監修書は『47都道府県の歴史と地理がわかる事典』(幻冬舎新書)、『「90秒スタディ」ですぐわかる!日本史速習講義』(PHP研究所)など累計55万部。辰已法律研究所(司法試験予備校)・東急ホームクレール(シニア施設)・京急COTONOWA・池袋コミュニティカレッジ(学生・社会人向けスクール)等にも出講中。数々のTV・新聞などメディア出演、プロレスのリングアナウンサーやラジオパーソナリティーも務める。