有害物質を体外に放出! 病気を遠ざける「断食」の解毒パワー

デトックス

30年以上にわたり、食や栄養をはじめとする健康法について研究してきた山田豊文氏は、「断食」こそ人生を変えるほどの可能性を秘めているといいます。やせる、体調がよくなる以外にもある、断食の「リセット&デトックス効果」について教えてもらいました。

断食は「究極の健康法」である

正しい断食は、人生を変えるほどの可能性を秘めている

これには、きちんとした科学的な裏付けがある。私は、医療関係者にもさまざまな健康メソッドを伝えるべく開校した「杏林アカデミー」で講義をおこない、受講者らは、講義で身につけたメソッドをそれぞれの現場で還元している。受講者はその一環として、患者らに断食を指導することで、腸内環境の改善、血中脂質の改善、解毒効果といったデータを次々と提示してくれるのである。

断食の治療効果が証明された事件

歴史上でも断食が健康被害を救った事例がある。1968年に九州・福岡県を中心に起きた「カネミ油症事件」は、米ぬか油の製造過程で使用されたPCBと、それから発生したダイオキシンによって、油を使った人たちの大勢に甚大な被害が出た。

症状は発疹や肌の異常、肝機能障害、神経障害、頭痛など多岐にわたり、被害者数は1万数千人にも及んだ。なかでも痛ましかったのは、妊娠中の女性が油を摂取してしまったケースで、生まれた赤ちゃんの肌には色素が沈着し、黒い肌になっていたのである。

政府は九州大学と協力して治療にあたったが、効果はなく、暗雲のなかで遅々として進まない治療法の模索が続いた。

光をもたらしたのは断食だった。断食をおこなった人たちに、めざましい効果があらわれたのだ。改善率は神経障害では95・6%、皮膚障害では83%という驚異的に高いものだった。政府(当時の厚生省)はPCB中毒の治療法として、断食療法を正式採用することにもなった。

有害物質は脂肪に蓄積しやすい。断食をおこなうと、体はその脂肪を燃やして、エネルギーをつくろうとするのだ。

体内の脂肪が燃えると、蓄積されていた有害物質は血液中に遊離し、肝臓や腎臓を経由して体外に出ていきやすくなるのである。

いったん「食を断つ」ことのメリット

現代人の解毒システムが、どのような状態にあるかを見てみよう。

ここで、井戸水を汲み上げるポンプやパイプをイメージしてみてほしい。井戸の底にたまっている水は栄養素だ。その栄養素を汲み上げるポンプは、胃や腸、肝臓、腎臓といった内臓、パイプは栄養素を運ぶ血管である。

水に濁りがなければ、つまり、有害物質を体内に取り込んでいなければ、ポンプやパイプはいつまでもきれいで、充分な機能を果たすことができる。栄養素を吸い上げ、また、不要なものを排出(解毒)できるわけだ。

ところが、水はすでにたくさんの濁りを溶かし込んでいる。そのためポンプやパイプには汚れがこびりついた状態になっているのだ。これでは栄養素をきちんと吸い上げることもできないし、排出にも支障をきたすのは当然である。

必要なのは、ポンプやパイプから汚れを一掃することだ。いったん、ポンプのスイッチをオフにして、隅々まできれいにする。そのことなしには、本来の機能を取り戻すことはできないのである。

断食はまさに、ポンプのスイッチをオフにすることに等しい。食を断つことによって、休息を与えられた解毒システムはリセットされ、本来の働きを取り戻す。胃にも腸にも、肝臓、腎臓にも、パワーがよみがえるのである。

「食べない」ことによって、消化器官を休ませ、空腹の効果を最大限に活かせば、体は確実に活性化する。「断食」のリセット効果とデトックス効果をみてみよう。

リセット効果1 内臓を休ませる

胃や小腸、大腸、膵臓、肝臓、腎臓などの臓器は栄養の消化・吸収などで休むことなく働き続けている。その臓器を過剰労働に誘っているのが、高脂肪・高タンパク質と称される欧米型の食事や食べすぎだ。毎日アルコールを飲んだり、喫煙したりといったことも大きな負担をかける。オーバーワークになれば必然的に臓器は疲弊し、本来の機能が低下している可能性が高い。

断食をおこなうと、働き詰めの内臓は休息を与えられ、炎症や不具合が起こっていればその修復に費やす時間もできる。再生された内臓はそれぞれの本来の働きを復活させ、消化・吸収などのパワーも復活するのだ。

リセット効果2 味覚や嗅覚が鋭くなる

断食終了後に真っ先に感じるのは味覚の変化かもしれない。素材そのものの味を強く感じ、それを驚くほどおいしいと思えるようになっているに違いない。それまで調味料で判断していた味覚が、素材の味で感じるようになるのだ。これは、舌で味覚を司つかさどる細胞の修復がおこなわれるとともに、味覚を電気信号として脳に伝える神経伝達が円滑になった証拠だろう。それまで飲んでいたアルコールに舌がピリピリして飲酒意欲が失せたり、断食を契機に禁煙できたりしたという人も数多くいる。

また、味覚ばかりではない。触覚や視覚、聴覚、嗅覚を含めた五感すべてに対して、研ぎ澄まされたような感覚を覚えるようになるという声を多く聞く。

リセット効果3 肺がきれいになる

都会に暮らしている人は特に、大気汚染の影響を受けやすい。車が出す排気ガスや工場から排出される媒煙は、空気の澄んだ地方の田園地帯にさえも知らないうちに影を落としている。タバコの煙も害を及ぼすもののひとつだ。それらを吸い込むことによって、肺はかなりのダメージを負っている。断食によるリセットとデトックスの効果は、こうした害からも身を守ってくれるのである。

呼吸という最も基本的な活動を円滑にし、入り込んでくる有害物質をブロックするとともに、ダメージを負っていた肺の細胞が回復することによって、肺がきれいになる。酸素の供給がスムーズになることは、細胞の1つひとつが活気づくことなのだ。

リセット効果4 免疫力がアップする

断食をおこなって内臓や組織がリセットされると、血液中の白血球(免疫細胞)が本来の働きを取り戻す。これは、自己と非自己を適切に見分けるという、免疫力の増進効果が期待できるということにほかならない。

消化にまわっていた酵素を代謝酵素に使えるようになると、そのエネルギーは免疫系と組織再生のプロセスにまわる。すなわち、病んだ細胞が元気を取り戻し、免疫力が高まるということだ。免疫システムの異常(暴走)を象徴するような種々のアレルギー性疾患の改善のほか、細菌やウイルスの感染症にかかりにくくなったり、病気の改善にも好影響を及ぼしたりする可能性が高くなるのだ。事実、がんの治療にも断食のノウハウが導入されている。

デトックス効果1 有害物質を排出する

人間の体には本来、細胞の働きを阻害する有害物質や、栄養素の消化・吸収を妨げる物質を無毒化して体外に排出するという解毒システムが備わっている。ところが、環境汚染が深刻化しているように、人間の体内の環境汚染も、まったく予断を許さないほどひどいものになっている。そして目に見えないから、気づかないうちにどんどん悪化してしまう。

近年「デトックス」という言葉が巷(ちまた)にあふれるようになったが、これは、正常な代謝を妨げる化学物質、重金属、薬物などの有害物質が、想像もつかないほど取り込まれ、解毒システムが追いつかないほどのところまできていると考えるのが妥当なのだ。

有害物質は脂肪組織に蓄積しやすく、神経系、免疫系、内分泌系などに計り知れないほどの悪影響を及ぼす。断食で脂肪の燃焼を促すことは最大のデトックス効果と考えていい。有害物質と脂肪を切り離し、体外にどんどん排出していきたいものだ。

デトックス効果2 腸がきれいになる

腸内細菌のバランス、すなわち腸内フローラは多様性の高さを常に最優先で考えるべきである。「善玉菌」「悪玉菌」といった表現は誤解を招くだけであり、適切ではなく、腸内環境を整えるカギは、少食と断食、そして「穀菜食」の実践であることが、大きなポイントとなる。

ベースとなる腸内フローラは生後1年足らずでほぼ決まるといわれているが、その後の食習慣や生活習慣によって、良くも悪くも変化していく。現代の食環境や生活環境はさまざな問題に満ちあふれているため、腸内環境や腸内フローラも不健康な状態になっている人が少なくない。

しかし断食をおこなうと、腸内環境がいったん浄化されるとともに、腸内細菌のエサが入ってこない状態が続くため、腸内フローラの混乱も落ち着くことになる。そこへ質の高い「穀菜食」を導入すれば、腸内フローラも徐々に改善していくと考えられるのだ。

また、断食によって腸壁(絨毛)のダメージも回復する。腸内環境の悪化によって腸壁がダメージを受け、栄養素が適切に吸収されない一方で有害物質が侵入しやすくなるという「リーキーガット」(漏れやすい腸)からの回復も、大いに期待できる。

デトックス効果3 肝機能が改善する

肝臓といえばアルコールを分解する臓器として、飲酒をする人はことに気になるだろう。もちろん、アルコール代謝を司るだけではない。食物の消化を助ける胆汁酸の生成や、血液中のブドウ糖をグリコーゲンとして貯蔵、コレステロールの生合成、さらには薬や食品添加物、重金属といった有害物質の解毒に働く臓器でもある。つまり、我々が毎日「間違った」食生活を続けている限り、大きな負担を抱えっぱなしになるのが肝臓の宿命だ。その結果、肝臓の解毒機能がキャパシティーオーバーになり、有害物質はどんどん体内に蓄積していく。

しかし、断食中は少なくとも、食に伴う新たな有害物質が入ってこない。体に蓄積してしまった分のデトックスに専念できるというわけだ。断食後は、より解毒・排泄が促される。ただし、肝機能を正常に戻すには、断食後の食生活の見直しが欠かせないことも認識しておこう。

デトックス効果4 脂肪が燃える

断食をすると体重は確実に減少する。だから断食をしたいという人もなかにはいるかもしれない。しかし体重の減少は、あくまで付随的なことだ。

脂肪燃焼といえば、断食によって体内の脂肪酸バランスの改善が期待できることも見逃せない。つまり、「オイル交換」だ。液体状の植物油を固形にする製造過程で、本来の植物油の不飽和脂肪酸が、不自然なトランス脂肪酸に変化する。現代人の食生活は、このトランス脂肪酸まみれであることに加え、ベニバナ油、コーン油などに多いリノール酸・アラキドン酸(オメガ6)過多で、亜麻仁油、えごま油、青魚の油に多いα–リノレン酸・EPA・DHA(オメガ3)過少の傾向が強いこと、この結果、私たちの体のなかで炎症性や血栓性が異常に亢進している。

断食を通して体内の脂肪が燃焼し、組織の修復が進めば、脂肪にたまった有害物質(トランス脂肪酸を含む)を遊離して体外に排出しやすくすることはもちろんのこと、過剰に蓄積したオメガ6を一掃することで、極端に開いてしまったオメガ3との比率を戻すのにも役立つはずだ。

細胞の生体膜の柔軟性が復活し、体内の炎症性や血栓性が正常になれば、現代人に生じているありとあらゆる健康上のトラブル──がんや心臓病、糖尿病、さらにはうつや認知症まで──の前に解決の道が開ける。現代人にとって、断食はそれほど大きなカギを握っているのだ。

 

PROFILE
山田豊文

杏林予防医学研究所所長。日本幼児脂質栄養学協会(JALNI)会長。あらゆる方面から細胞の環境を整えれば、誰でも健康に生きていけるという「細胞環境デザイン学」を提唱し、本来あるべき予防医学と治療医学の啓蒙や指導を行う。2013年6月に「杏林アカデミー」を開校。細胞環境デザイン学を日本に広めていくための人材教育に力を注いでいる。

脳と体が若くなる断食力 (青春文庫)

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  • 作者:山田 豊文
  • 発売日: 2019/05/10
  • メディア: 文庫