つまようじの“溝”の意外な役割とは?
つまようじを見ると、そのほとんどの製品には頭の部分にぐるりと溝が彫られている。この溝はあえてつけているというよりは、つまようじの製法のデメリットを隠すためにつけられているのだ。
つまようじは片方の先端を鋭くとがらせるために、もう一方の端をしっかりと固定して高速で回転させて削る。すると、どうしても固定している側が摩擦で焦げて黒くなってしまうのだ。
もちろんそのまま売ってもいいのだが、何とも見た目が悪い。そこで参考にしたのが、伝統工芸品のこけしだ。黒ずんでしまった側をこけしの頭に見立てて溝を入れ、デザインの一部であるかのようにして見せたのである。
溝があるほうの先端の部分をよく見てみると、濃い茶色になっているのがわかる。今も変わらない製法で作られ続けているために、溝を入れた先端の部分は摩擦で焦げた色を残しているのだ。
ちなみに、つまようじは「トゥースピック」という名前で世界中に同じようなものが存在する。両側がとがっているもの、平べったいもの、ミントフレーバーがついているものなどさまざまだが、片側に溝が入ったものは日本独特のきめの細かいワザが光っている証なのである。
自動販売機のコイン投入口が縦か横かは何の違い?
近ごろは、電車の切符を買ったことがないという子どもが増えているという。たしかに切符の券売機や飲料水の自動販売機などでも電子マネーが使えるようになり、手持ちの現金で購入する機会は少なくなっている。
とはいえ、街中の自動販売機にはコインの投入口が必ず設置されている。そのコイン投入口には、縦と横の2種類があることに気づいているだろうか。
駅などの券売機のコイン投入口は縦向きで、飲料水などの自動販売機は横向きのものが多い。なぜなら、設置側のある“事情〟が反映されているからなのだ。
縦向き、横向きにはそれぞれ違ったメリットがある。
まず、駅の券売機に採用されている縦向きの場合は、投入口に入ったコインが転がるスピードが速いことが挙げられる。その結果、内部にあるコイン識別機にスムーズに到達するので、切符が出てくるスピードも速くなる。多くの客をさばく必要がある券売機にはこのメリットが大きい。
一方、飲料水などの自動販売機で採用されている横向きの投入口では、縦向きのものに比べてコインが転がるスピードは遅い。しかし、薄型のコイン識別機を内蔵できるのがメリットで、自動販売機内部のスペースを節約できる。
そのぶん、商品を多く入れておけるので、品切れを防ぐことができる。商品を補充する回数も少なくてすむわけだ。
つまり、駅などの販売機の前に行列ができるような場所では縦型、飲料水の自動販売機など、内部のスペースを有効活用したい場合は横向きが適しているのである。
炭酸水のペットボトルの底がへこんでいるワケは?
天然水、果汁飲料、コーヒー、紅茶、炭酸飲料とペットボトル飲料の種類は多岐にわたっている。それぞれのメーカーが工夫を凝らしたラベルや色で消費者の購買意欲を刺激している。
しかし、ラベルをはがして比べてみれば、中身の飲料によってペットボトルのかたちに共通点があることに気づくはずだ。
中身が炭酸飲料の場合、最大の特徴は底のかたちだ。炭酸飲料の底には厚みのある5つの足があり、底全体はへこんだようにくぼんでいる。このくぼみのおかげで、ペットボトルの内部の圧力が上がって膨らんでも、5つの足が支えて自立していられるのだ。
底を下から見ると花びらのように見えることから、ペタロイド(花弁)型という名前がついている。
また、ボトルの側面はまるいかたちをしており、四角いボトルに入れることはない。これも内部の圧力が関係していて、まるい側面のほうが圧力を均等に受け止めるために変形しにくく、そのままの形状を保つことができるのだ。
では、四角いボトルに入れるのはどんな飲料かといえば、果汁飲料などの高温で殺菌した液を充填するタイプのものだ。
四角いボトルの壁面をよく見ると、パネルのような刻みが入っていてでこぼこしている。これは減圧吸収パネルというもので、中に熱い液体が入っているペットボトルを冷却したときに、外側からかかる圧力をうまく逃がすように設計されているのだ。
製法に合わせたデザインはまさに工業デザインの真骨頂であり、右肩上がりの清涼飲料水の需要を根底から支えているのである。
牛乳パックの開口部はなぜ三角屋根のかたちになっている?
低脂肪乳から濃厚ジャージー牛乳まで、牛乳といってもさまざまな商品がスーパーの棚に並ぶ昨今だが、見渡してみてもほとんどのものが注ぎ口が三角屋根のパックになっている。
この牛乳パックの正式名称は、「ゲーブルトップ型」という。ゲーブル=切り妻屋根という、じつに明快な名前だ。
ちなみに、1930年代にアメリカで考案されたゲーブルトップ型の容器は、当初「ピュアパック」と呼ばれていた。
パックの上部を三角形の屋根型にするのは、注ぎやすさを向上させるためだ。三角屋根の内部には空間があり、開口部を開けて注ぐときに中の牛乳がいきなり飛び出ることがない。また、屋根の頂点を全部開けるので、注ぎ口をつくりやすいという利点もあるのだ。
しかし、じつはこのゲーブルトップが主流の牛乳容器事情は、今では日本独特のものだということをご存じだろうか。
海外では紙パックの場合、直方体の容器にキャップがついたかたちが多い。これだと衛生的で保存もしやすいのだが、日本では設備投資の遅れからゲーブルトップ容器が使われ続けているのだという。
とはいっても、近年になってキャップ型に切り替える大手メーカーも出てきた。キャップ型ならさらに開けやすく、冷蔵庫の中で液漏れすることも少なくなるため、今後はゲーブルトップ容器からの移行が続くだろうと予想もされている。実際にゲーブルトップのキャップがついている商品など、牛乳売り場には確実に変化が出てきている。
今ではすっかり見なくなった懐かしいテトラパックの牛乳のように、ゲーブルトップ容器の牛乳も「そんなものがあったね」と懐かしい存在になる日が来るのかもしれない。
排水パイプがS字型になっているのはどうして?
家庭のキッチンや洗面所など、水回りには排水管が必ず設置されている。システムキッチンなどではそれがむき出しになることはないが、一番わかりやすいのは洗面所で、収納扉の中にある排水管でも扉を開ければ覗いて見ることができる。
排水口からのびる管は必ずといっていいほどS字にカーブしている。ここが一番掃除しにくいんだと思ってしまうかもしれないが、これは「S字トラップ」と呼ばれるもので、重要な役割を担うパーツなのだ。
S字トラップのカーブの部分には、流した水が一部残って溜まっている。この水が、下水管のほうから上がってくるにおいを遮断して、悪臭が室内に入り込むのを防いでくれるのだ。
もしS字トラップがなければ、下水管と室内を遮るものがなくなり、悪臭のみならずネズミやゴキブリなどの侵入経路にもなってしまう。
ただし、その形状からどうしても詰まりやすくなってしまうのが欠点だ。排水口から水を流すときは、紙くずや髪の毛などを流さないようにして詰まりを防止する必要がある。
また、一か月に1回は洗浄剤などを使ってきれいにするのもおすすめだ。室内の衛生状態を保つためのS字トラップが不衛生な状態になってしまったら本末転倒なのである。
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