不動産投資コンサルタント
コンプライアンスやマナーについて厳しく問われる昨今、「嫌われたくない、好かれなければ……」と思いつめてしまう人がいます。そんな人は要注意! もしかしたら、その思いこそが自分を苦しめてしまっているのかもしれません。40代に入ってから、人の目を気にすることなく、自由に楽しく過ごすことができるようになったという午堂登紀雄氏が、生きづらさをラクにする“いい人”のやめ方を教えてくれます。
本心を押し殺して人付き合いをしていると……
自己肯定感が低い人は、周囲から嫌われてはいけない、万人に好かれないといけないという強固な信念を持っています。
自分に自信がないため、周囲からの協力がなければやっていけないという潜在的な恐怖心があるのかもしれません。
そのため、自分の意見を押し殺して他人に迎合したり、人との摩擦や軋轢を恐れ、自己主張をせず遠慮したりする傾向があります。
しかし、そうやって本心を見せないために、周囲からは逆に「何を考えているかわからない人」「周囲を警戒して寄せ付けようとしない人」と映ってしまい、むしろ逆効果になっていることに気が付きません。
あるいは、嫌われないよう気を遣いすぎるあまり、イヤなことでも断ることができません。仕事や雑務はもちろん、気が進まない食事会や飲み会など、依頼されたり誘われたりしても、断る口実がとっさに出てこない。
「断ったら相手の気分を害するかもしれない」「付き合いの悪い人と思われるかもしれない」という不安が思考を支配し、「う、うん、いいよ」と応えてしまう。
また、彼らは「自分が周囲からどう思われるか」が優先するあまり、他人の気持ちを想像したり理解する余裕がありません。そのため突然トンチンカンな発言をして場の空気を凍り付かせてしまったり、カチンとくる余計な一言を言ってしまったりします。
こうして自己肯定感が低い人は、人から好かれよう、嫌われまいというその発想によって、逆に人間関係を損ないやすいのです。
利用されているだけかも……「認められている」にご注意!
自己肯定感が低い人が幸せをつかみにくい理由のひとつは、ずるい人を引き寄せ、なめられ、利用されやすいからです。
特に、幼少期に親からの愛情が乏しかったという原体験のある人は、大人になってからも愛情飢餓感が強く、自分を褒めてくれる人、自分を必要としてくれる人を誰でも信用してしまう傾向があります。
そんな「自己肯定感が低い人」を、ずるい人間は放っておきません。学生時代の先輩後輩よろしく、舎弟扱いされ、都合よく利用されてしまいます。しかも本人は、利用されていることを「認めてもらっている」と勘違いします。
会社では雑用を頼まれる、残業や休日出勤を半ば強制される。タバコや缶コーヒーを買いに行かされる。
休日でも、ゴルフコンペの運転手として駆り出される、引っ越しの手伝いをさせられる。プライベートでも、町内会の役員を押し付けられる、PTAや子供会の雑務をやらされる……。
また、愛情飢餓感が強い人は、相手の歓心を買おうと、不必要におごったりプレゼントしたりします。お金を振る舞って気前の良さをアピールし、自分の周囲に人を集めようとします。
彼らは、相手との距離感がつかめず、時間をかけて相手との関係を築く方法もわからないので、相手に媚びて自分を安売りする行動に出ます。
しかしその結果、おべっか使いばかりが集まってしまいます。そしてお金というメリットを失えば、さーっと潮が退くようにいなくなります。金の切れ目は縁の切れ目で、ずるい人はまた別のターゲットを探すというわけです。
彼らは、その人の財布だけが目的です。その人の自己愛の強さを知り、自分を安売りすることをわかっています。
自己肯定感が低い人は、いじめグループやママカーストなどでも標的になります。歪んだグループでは、メンバーの自尊心を満たすための道具にされてしまいます。
グループのメンバーにとって都合よく、利用しがいがある人、いじりがいがある人、格下扱いができる人物が「自己肯定感が低い人」です。
そして周りから嫌われるのを恐れる「自己肯定感が低い人」は、そんなずるい人たちの言いなりになってしまいます。これはつまり奴隷と同じ。
普通の社会人であれば、親族や学生時代の友人などを除き、人間関係を損得で選びます。たとえば悩みを打ち明けあえるというのも、ひとつの得でしょう。
つまり金銭面だけでなく、自分の人生にとって発展的貢献につながるかどうかという意味での人間関係の選択です。
しかし「自己肯定感が低い人」の損得とは、自分が好かれるかどうか、嫌われないかどうかという判断軸しかないから、人間関係を間違えます。
彼らにとっては、相手の発する言葉は嘘でもお世辞でもよく、自分の人生にメリットがある人なのかを考えるとか、自分を利用しているだけではないかと疑うという発想がありません。
好き嫌いをはっきりさせると、人間関係が安定する
そこでまずは、全員に認めてもらう必要はないし、そもそも不可能だという前提のもと、自分の好き嫌いをはっきりさせていくことです。
他人からの好意や「嫌われないこと」で自分の価値を認識するのではなく、自分で自分自身を認めることです。
そして、他人に媚びて自分を安売りして認めてもらおうという発想ではなく、相手や社会の問題解決をすることで価値を出そうという発想に切り替えることです。
「私は世間の期待、周囲の期待に応えるために生まれてきたわけではない」
「相手も、私の期待に応えるために生まれてきたわけではない」
「だからみんな、自分が目指す道を自分らしく生きればいいんだ」
というふうに、自分を尊重し、自分の損得基準を信頼し、つきあう人を選んでいくことです。
同時に、自分の感情を素直に表に出すことです。
それはわがままに自分勝手に振る舞えということではなく、自分はどういう人間でどういう人生を目指しているか、何を幸せと感じるかという軸をはっきりさせることでもあります。
すると、あなたに共感する人、あなたとウマが合う人が自然に集まり、そうではない人との関係は疎遠になるでしょう。
すると、自分の人間関係は同じような価値観を有する同士ゆえに、穏やかで信頼できる関係として安定しやすいのです。
とはいえ、現実逃避や傷口のなめ合いにならないよう、人間関係を固定させすぎず、自分のレイヤーを上げ、つきあう人のレイヤーを上げていく努力は必要ではあります。
1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒。米国公認会計士。大学卒業後、東京都内の会計事務所を経て、大手流通企業にて店舗及びマーケティング部門に従事。世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。現在は不動産投資コンサルティングを手がけるかたわら、資産運用やビジネススキルに関するセミナー、講演で活躍。「極度の人見知り、口下手、ネクラの三重苦」という自身の特性を生かし、ストレスの少ない働き方を実践し強く支持されている。著書に『年収1億円を稼ぐ人の頑張らない成功法則』(学研)、『「いい人」をやめれば人生うまくいく』、『人生の「質」を上げる 孤独をたのしむ力』(日本実業出版社)などがある。