人生の重さに押しつぶされそうなとき、あなたを支える3つの言葉

あなたを支える言葉

人生にはうまくいかないことも不測の事態もおこるもの。こんなとき、不安な気持ちのまま過ごすのか、それとも自分の人生を愛しながら過ごしていくのかは、「未来をよくする言葉」があるかどうかで決まります。85歳の現役美容家、小林照子さんがこころの澱を溶かしてしまうような言葉を教えてくれました。

「10年後、何になっていたいですか?」

いまは、日本人の2人に1人はがんになると言われている時代です。でも自分が重い病気だと医師に宣告されたときに、取り乱さないでいられるようなひとはいるでしょうか。「仕事はどうしたらいいのだろう」「家族はどうなるのだろう」「治すことはできるのだろうか」。いろいろなことが頭の中で渦巻いて、とても不安な気持ちになると思います。そんなときに「強い気持ちを持って」「大丈夫よ」と周囲から声をかけられても、なかなかこころは落ち着かないものです。むしろ根拠のない「大丈夫よ」という言葉に、そらぞらしさを感じたり、「あなたに何がわかるの?」という憤りを感じたりするかもしれませんね。

7年前に、一緒に仕事をしていた女性ががんになりました。その方はラジオ番組のキャスターをされていて、私もときどき共演させていただいていました。ところがある日、彼女が急に番組を降板することになりました。彼女は私に静かに言いました。

「急ですが、私、今日で降板することになりました。がんが見つかったので、手術をしなければならないのです。すぐに入院します。いままで本当にありがとうございました」

いつも明るい笑顔の女性が、震えながらこわばった表情で話される姿を見て、私は胸が痛くなりました。私は彼女に精一杯の励ましをと思い、こう声をかけました。

「10年後に何になっていたいか、考えながら過ごすといいわよ」

これは私自身が体調不良のときにいつも自分にかけていた言葉なのですが、その彼女にとっては非常に衝撃的な言葉だったようです。仕事関係のひとたちに「がんになったので仕事を降板させていただきます」と言うと、多くのひとたちが「ゆっくり治療してね」「きっと元通りになれるわよ」とねぎらいや励ましの言葉をかけてくれたそうです。それはそれでとてもありがたい気持ちになったと彼女は言っていました。

しかし「10年後」という未来に目が向いたとき、彼女はハッとしたそうです。

「これからどんなにつらい治療が待ち受けているのだろうか」

「いまから何年くらい仕事を離れないといけないのだろうか」

と、それまでは自分の目の前のことで頭がいっぱいになり、こころの中に〝希望の持ちよう〟がなかったと、あとから彼女に聞きました。でも10年後にどんな生き方をしているか、ということに目が向いたとき、彼女はそれまで忘れていた自分の夢を思い出したそうです。彼女の夢はテレビでも仕事をすること。

「病気を治して、テレビに出よう。それを目標に生きていこう」

そんな決意が生まれた瞬間から、彼女のこころの中から治療の不安が消えたといいます。

入院して、がんの治療をする。

それは10年後の自分のため。

いま他人よりも遅れをとっているとか、自分は仕事に復帰できないなんて、

もう思わない。

自分はすでに10年後に焦点を合わせて生きているのだから。

そう思って、彼女はがんの治療に専念したそうです。そして見事に病を克服したあと、キャリアを積み重ね、いまや彼女はテレビの世界でも活躍する女性になりました。

今年、私は彼女からメッセージを受け取りました。

「あれから7年たちました。

いただいた言葉をこころに刻み

ずっと10年先を見て歩き続けてきました。

まだまだ道の途中ですけれど、

昨年、私は結婚式もあげることができました。

いろいろなことをあきらめずに、歩いてきてよかった。

いままで生きてきて本当によかったです」

私は涙がこぼれました。

重い病気というものは、なかなか受け入れられるものではありません。でももしあなたがこれから先、病気の宣告を受けるようなことがあっても、自分は不運だ、自分は不幸だという考え方にとどまらないようにしてほしいと思います。人生に「突然の転機」はつきものです。病気以外にも、不測の事態に出くわすことはきっといろいろあるでしょう。でもそこで「自分の人生はもうダメだ」なんて、どうぞ思わないでください。

あなたは、いままでの人生に負けたわけじゃない。

あなたの人生はダメなんかじゃない。

あなたは「10年後」に向かって、人生の舵を切り始めたのです。

いままで忘れていた夢を思い出したり、

いままでの人生の延長線上では出会うはずもないような人たちと新しく出会うために、新しい人生の舵を切り始めたのです。

そう考えると、不測の事態と向き合うときの気持ちも変わってきませんか?

「10年後、何になっていたいか」を考えながら、生きていこう。

この言葉は、あなたの大切な方にも教えてあげてください。

「これは私が選んだ道」

活躍しているひとを見て、「彼女は運に恵まれているひとだから」「彼はひとに媚こびるのが上手な男だから」と、嫉妬の裏返しを口にするひとがいます。いまの自分に満足していない気持ちが、どうしても表に出てきてしまうのでしょうね。

でもそういった気持ちは、あまり他人にぶつけないほうがいいと思います。はたから見たら何の苦労もないラッキーなひとに見えても、ただのラッキーでどこまでも進んでいけるひとはいないからです。

実はちょっぴり嫌な思い出があります。これももう大昔の話ですけれど、会社員時代に会社のOGの女性たちとお会いすると、

「あなたは私と違って子どもを産んでも会社に居座ったから、部長になれたのよ」

「やっぱり長く居座れば、偉くなれるものだわね」

「私は夫に言われて、結婚を機に会社を辞めちゃったからね」

と、よく言われたのです。

あなたは会社に長く居座ったから、部長!?

え〜っ、ひとってそんなふうに思うんだ。

私はそのとき、ちょっととまどってしまったのを覚えています。私の努力など完全に無視されているということにもびっくりしましたが、「私だって結婚や出産を機に辞めなかったら、全然違う人生だったのよ」というニュアンスにびっくりしてしまったのです。

自分の人生の進路を決めるのは、最終的には自分自身だと私は思っています。だから会社を辞めるというのも、ご自身の決断であったはずです。でもそれが夫のせいであったり、子どもを産んだせいになっているのは、どこかご自身の人生選択に「後悔」があるのかなと、私は感じました。

自分が歩んできた道というものは

誰かが選んでくれたわけではありません。

そのときそこに〝納得する自分〟があって

その道を歩んできたはずです。

いまになって悔いたり、

いまになって「もしあのとき、こっちを選ばなかったら」と

あれこれ考えたりするよりも、

自分が選んだ人生を愛するほうが、私は素敵だと思います。

仕事と育児の両立を選んだ私の人生にも、いろいろなことがありました。

泣きたくなること、みっともないこともいろいろありました。

でも、これは私が選んだ道。

私はそう、いつもこころの中で繰り返しています。

「この世に生まれてきたこと自体が奇跡」

予期せぬことの連続。それが人生です。

押し寄せてきた波に上手に乗っていけるときもあるでしょう。しかし、波に押しつぶされそうになるときも、必ずあるはずです。

「なんで自分がこんな目に」

「もう、自分の人生が嫌だ」

「勝ち組に入っていない、自分が嫌だ」

よくないことに出くわしたとき、そんなふうに思う方もいらっしゃるかもしれません。でも、まだそんなに長く生きていらっしゃらないうちに「自分の人生」を嘆くのは、早すぎます。40代の方でも、50代の方でも、私にとっては〝お若い方〟。私からすれば、まだこれから未来の築きようがいくらでもある方です。

よくないことに出くわしたときこそ、他人の人生と自分の人生をくらべないことです。狭いスケールでものを見ているから、偏った価値観で人生の優劣などを考えてしまうのです。あなたは、他の誰の人生とも変えられない「あなたの人生」をデザインしていけばいいのです。

途中で躓(つまず)いたら、方向転換すればいい。

そしてそれを誰かが笑うのであれば、

勝手に笑わせておけばいい。

あなたはただ、

自分が信じる道を、自分が信じる方法で

歩み続けていけばいいのです。

私たちはそもそも、この世に生まれてきたこと自体が奇跡なのです。

そして今日、普通に生きていることも奇跡。

明日も普通に目覚めることができたなら、それも奇跡。

私たちは、奇跡の連続の中で生きているのです。

だからこそ、自分から自分の人生を嫌になってほしくないなと思います。

奇跡によって与えられた「いのち」は、精一杯生きて、まっとうしなければ。

私が最近思うのは、そんなことです。

 

PROFILE
小林照子

1935年生まれ。美容研究家・メイクアップアーティスト。 化粧品会社コーセーにおいて35年以上にわたり美容について研究、その人らしさを生かした「ナチュラルメイク」を創出。数々のヒット商品を生み出す。また、メイクアップアーティストとしても活躍し、どんな人でもきれいに明るくすることから「魔法の手」を持つ女と評される。 91年、コーセー取締役・総合美容研究所所長を退任後、56歳で会社を創業、美・ファイン研究所を設立する。94年、59歳で、[フロムハンド]小林照子メイクアップアカデミー(現[フロムハンド]メイクアップアカデミー)を開校。2010年、75歳で、青山ビューティ学院高等部を本格スタート。近年は現場力を持った女性リーダーを育成する「アマテラス アカデミア(ATA)」を開講。85歳を迎えたいまなお精力的に活動を続けている。著書多数。

美しく生きるヒント

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  • 作者:小林 照子
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