ストレスが体に出る人?心に出る人? それぞれ異なる対処法

ストレスの影響が心に出る人、体に出る人

「ストレスがないほうが健康」といえば簡単ですが、私たちが生きている以上、ストレスがゼロになるということはあり得ません。

実はストレスには、いいストレスと悪いストレスがあります。

試験や仕事のプレッシャーといった適度な刺激のストレスは、それを乗り越えることで自分が成長できたり人生を豊かにしてくれたりします。一方で、ハードワークや人間関係のトラブルといった不快なストレスが多くなってくると、心にも体にもダメージが出てきます。

ストレスがかかったとき、それがメンタル面に出る人と、体に出る人がいます。

これは昔からよくいわれていることですが、みなさんのまわりにもどちらかのタイプがいませんか。

ストレスというと、どうしても心に影響が出る印象が強いかもしれませんが、メンタルが強い人、あるいは感じにくい人というのは確かにいます。そのような人は、得てして体に影響が出る場合が多いようです。

ストレス関連疾患は、急に出ることもありますが、自分でも気がつかないうちに少しずつあらわれることがありますので注意が必要です。

例えば、会社に行くときに気持ち悪くなって吐いてしまう、電車のなかでめまいがして立っていられなくなるといったことが起こります。最初は我慢できる程度で無理して会社に向かいますが、徐々に症状がひどくなってきます。

調べても体の異常はなく、最終的にはメンタルの問題だったとわかるのです。

また、ストレスや怒りを感じにくい人もいます。

怒りが循環器疾患につながります。怒ると、血管がキュッと締まるのです。一方で、怒りの感情が外には出ていなくても、血管が締まってくることがあります。これは生体反応の1つです。

血管が締まってくると頭痛が起こったり、肩こりが起こったりして、怒りの感情は自覚していないのに、体の症状として強く出ることがあります。怒っているつもりはないのに、それなりに体には影響が出てしまうのです。

また、怒ることにはエネルギーを必要とします。怒りを覚える出来事があり、繰り返し怒ったあと、怒ってもどうにもならなくなってくると、「もう怒っても無駄」と思うようになります。そうすると、脳はむしろ怒らないように働きます。要は感情がなくなってくるのです。

一見いいことのように思われるかもしれませんが、感情が鈍麻した状態は脳のエネルギーが減っていることと関連するため、これがうつの要因になることもあるので、注意が必要です。

なかには、もともと自分の感情に気づきにくい人、そして自分の感情を表現することが苦手な人もいます。これは「失感情症」といって、対人関係がうまくいかずに心身症になりやすいタイプといわれています。

それとは逆に、自分の体の状態に気づきにくく、また自分の身体の状態を表現するのが苦手な人もいます。こちらは「失体感症」といって、失感情症と同様に心身症になりやすいタイプということが知られています。

病気はその人の「弱いところ」を突いてくる

病気や不調というのは、その人の「弱いところ」を突いてきます。気持ちが弱ければ気持ちに、体の弱いところがあればその箇所に出てきます。

例えば、心理的なストレスがあると末梢の血管が締まることが多く、筋肉が少ない女性のほうが、末梢の血流が関係する冷え性や肩こりの影響を受けやすいのです。

ちなみに肩こりはかなりストレスと関連が深いことがわかっています。肩こりと年齢との関連を見ていくと、ストレスが高いといわれている年代に圧倒的に多いことがわかります。年をとってくると、逆に肩こりは少なくなってきます。

では、体も心も強い人にストレスの負荷がかかった場合、最終的にはどうなるのでしょうか?

こういった人は、最後は行動に異常が出てきます。お酒を飲む、たばこを吸う、買い物中毒になる、暴力をふるう、ギャンブルにはまるなど、行動に変化があらわれるのです。

いずれにしても、ストレスの影響はどこかに出てくるものです。どのような症状が出るのかは人それぞれですが、自分の不調がどこに出やすいかという傾向を知っておくと、それをストレスアラームとして活用することができます。

「ああ、今ストレスがかかっているから、少し休もう」など、先手を打つことができるのです。

問題はそういった変化に自分で気づかないこと。先ほどの失体感症の人のように、自分の体のアラームに気がつきにくい人の場合に特にそうなりやすいのですが、ストレス信号を放っておくと、ある日突然、心筋梗塞になる、うつになるなど、病気と直結してしまいます。自分の体の声に耳を傾け、自分の体を感じ取る力を上げる必要があります。

そうした自分の気持ちや体の変化に鈍感な人は、血圧でも脈拍でも体重でもいいので、客観的な数値をチェックするようにする(家で毎朝血圧を測る、健康診断を受けるなど)のもおすすめです。

自分のことを健康にできるのは、自分しかいません。日頃から自分の心と体の状態に意識を向けることが、大病を小病に、あるいは未病にすることにつながるのです。

 

PROFILE
大平哲也

福島県立医科大学医学部疫学講座主任教授。同放射線医学県民健康管理センター健康調査支援部門長。大阪大学大学院医学系研究科招へい教授。日本笑い学会理事。 福島県いわき市生まれ。福島県立医科大学卒業。筑波大学大学院医学研究科博士課程修了。大阪府立成人病センター、ミネソタ大学疫学・社会健康医学部門研究員、大阪大学医学系研究科准教授などを経て現職。専門は疫学、公衆衛生学、予防医学、内科学、心身医学。 循環器疾患をはじめとする生活習慣病、認知症などの身体・心理的リスクファクターの研究および心理的健康と生活習慣との関連について研究。運動や笑いなどを使ったストレス解消法の研究でも知られており、テレビや雑誌などでも活躍している。