不動産投資コンサルタント
「コロナリストラ」が相次いでいると報道されていますが、どんな人が肩たたきにあいやすいのでしょうか? 不動産投資コンサルタントとして活躍している午堂登紀雄氏は、「自己肯定感」がカギを握るといいます。
会社で評価されにくい人の2つの理由
「自己肯定感が低い人」が会社で認められにくい理由は、2つあります。
ひとつは、周囲に配慮するあまり、自分の独自性あるアイデアや主張をしないためです。
それでは「勤務態度はまじめ」という評価は得られても、部門や会社の利益に貢献しているという評価は得られません。
また、言われたことを愚直にこなす従順な部下は、上司からは扱いやすい反面、自ら手を挙げて業務を推進していく積極性が感じられないため、昇進や昇格の審査に上げる対象に入りにくいのです。
もうひとつは、責任感が強く、仕事を一人で抱え込んでしまう傾向があることです。 「人にお願いするのは申し訳ない」「迷惑がられないだろうか」「他人に任せたら仕上がりが不安」「自分が責任を持ってやらないといけないのでは」と考え、なんでもかんでも自分で抱え込むことになりがちです。
そのため、納期に間に合わなかったりトラブル報告が遅れたりして、「なんでもっと早く言わなかったんだ」ということになってしまいます。
一人で抱え込む人は、「自分の努力が足りない」と自己否定する傾向があります。
また、目の前の仕事をこなすことで精一杯で、周りが見えなくなってしまうこともあります。
周囲の動きだけでなく、自分が置かれた状況も把握する余裕がなくなると、「しんどい」「つらい」「疲れた」という現象は感じても、どうすればいいかに思考が及びません。
一方で「自分はこんなに努力している」という自尊心は人一倍あるため、評価してくれない上司や会社に対する不満が強くなります。
彼らが持っている責任感は自己犠牲精神から来るものなので、プラスに働けばもちろん良いのですが、無理をして体調を崩したり精神を病んだりしてしまうケースもあります。
一人で抱え込まない勇気を持つ
そこで「役割交代思考」を発動させてみましょう。もし自分が相手の立場だとしたらどう思うか、という思考法です。
もし自分が上司なら、仕事を一人で抱え込む人を評価するか。
一般的に会社とは、チームや組織で力を発揮するものです。
「この人が抜けたら仕事が回らない」というのは会社にとってリスクですし、得手不得手は個々人によって異なります。
だから評価される人は、そのチームや組織の特性を理解し、自分にしかできないこと、自分がやってこそ付加価値が出ることに注力するものです。
また、自己肯定感が低い人は、他人からの依頼を断ることができません。
「断ったら相手の気分を害するかも」「断ったら嫌われるかも」「断ったらもう二度と声がかからないかも」という恐怖を感じるからです。
しかしこういう人には、誰でもできる仕事や雑務が回ってきやすいと言えます。
なぜなら、雑務をお願いするのはどんな人でも心苦しいわけですが、いつも「いいですよ」と気軽に引き受けてくれる人には頼みやすいからです。
そのため、自分の仕事以外にも他人の雑務をやらされることになり、余計にアップアップします。そうやって自分は忙しく働いていると思っても、それは雑務ですから、いくらやっても評価されにくいのです。
本来であれば、仕事の内容や分量も、上司と相談しながらコントロールする必要があるし、自分ではなく別の誰かに協力を仰いだ方が、より生産性が上がるとか成果が大きいと判断すれば、そのように分担する必要があるはずです。
ただし、まだ経験が浅いうちは、雑務もすべて引き受け、「頼みやすい人」を演出する必要があります。そういう元気で積極的な若手を見て、周囲は「やる気のあるヤツ」「ガッツのある新人だ」と評価するからです。
リストラの対象にされないために
自己肯定感が低い人は、誰も行きたがらない支店や営業所に異動させられたり、リストラの対象にされやすいと言えます。反論などの抵抗をしてこないし、説得しやすいからです。
あるいは、誰かの失敗や不祥事などの責任を取らされるスケープゴートにされやすい側面も持っています。
なぜなら彼らは、自分の意に沿わないことでも反対したり断ったりすることができないため、言いなりにしやすいからです。
そこまで大げさでなくても、体育会系の先輩と後輩が社内でも兄貴と子分といった関係になっていたり、ママ友グループでも女王様と下僕といったカースト関係になるケースはあります。
特に、上から目線で横柄な人は、常に自分が主導権を握り、支配したいという欲求を持っていて、自分が自由に動かせる手駒を常に探しています。
そして自己肯定感が低い人は、こういう人につかまって隷属的関係に陥りやすいのです。
こうした支配欲が強いズルい人間に対抗するには、できる限り早い段階で抵抗する姿勢を示し、「面倒くさい人」「支配しにくい人」という印象を与えておくことです。それには、繰り返しになりますが、「理論立てて話す」を心がけることです。
たとえば上司も、「あいつにこの話をすれば、しつこく理由を聞いてくるし、小うるさい反論をされて面倒くさい。だからあいつはやめて別の人にしよう」という感情が働きます。
なので、もし自分の先輩や上司が「雑務や思い付きの仕事を押し付ける」ようなズルい人間だとしたら、つねに反論する「面倒くさい後輩」になった方がストレスが溜まらないでしょう(ただし、まともな先輩や上司にこの態度を取ると逆効果ですから要注意)。
ママ友グループの女王様も「この人はいちいち理由をつけて私の言うことを聞かない、おもしろくない人」と思い、あなたをグループから外すか、別の子分候補を探すようになるでしょう。
つまり「自分は簡単に他人の言いなりになる人間ではない」と表明することが重要で、何か理不尽な指図をされたときは、必ずいちいち理由やその必要性を尋ねるようにするのです。
1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒。米国公認会計士。大学卒業後、東京都内の会計事務所を経て、大手流通企業にて店舗及びマーケティング部門に従事。世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。現在は不動産投資コンサルティングを手がけるかたわら、資産運用やビジネススキルに関するセミナー、講演で活躍。「極度の人見知り、口下手、ネクラの三重苦」という自身の特性を生かし、ストレスの少ない働き方を実践し強く支持されている。著書に『年収1億円を稼ぐ人の頑張らない成功法則』(学研)、『「いい人」をやめれば人生うまくいく』、『人生の「質」を上げる 孤独をたのしむ力』(日本実業出版社)などがある。