13年と17年周期で大量発生するセミの数学的な生存戦略

自然の営みの裏側には、数同士の巡り合わせや計算が隠れていることがあります。たとえば長い年月を土の中で過ごすセミの発生周期には、彼らの緻密な生存戦略が垣間見られます。幼児から大人にまで大人気の「数学お兄さん」、横山明日希氏が解説します。

1日は24時間、1時間は60分である理由

私たちは1日を24時間、または12時間をまとまりとしてとらえ、「1時間」を1つの区切りに生活サイクルを作っています。

これは1日=地球の自転1回が、1年の間=太陽の周りを公転する1周に、月が満月になる回数が12回(または13回)であることから暦が作成されたことによるとされています。

日常生活は、0、1、2、3…9の、10を基本とする「10進法」を用いながら、一方で、1年12か月、1日24時間という「12進法」を私たちは違和感なく併用しています。ところが、12進法の時間は1時間を60分で分けています。これはなぜでしょうか?

これには、10と12のサイクルが共存できる数として、「60」が1時間を分割するのにちょうどよかったのではないかという説があります。

なぜ、60かというと、10と12の「最小公倍数」になっているためです。最小公倍数とは、2つ以上の数のそれぞれの倍数のなかで一致する最初の数を差します。実際に、10と12の倍数を見てみましょう。

10と12の倍数

異なる数字が、倍数という長い流れの中で交差することで、互いの性質の相乗効果をもたらしたのが「1日24時間、1時間60分」という私たちの時間感覚です。

公倍数を生存戦略に利用しているセミ

昆虫のセミは、この公倍数を上手く使って生き残っています。

米国各地では、13年の周期と17年の周期にセミが大量発生する現象が起きています。当然、数が多いので、多くの繁殖が行われ、その子孫がまた13年後、17年後に大量発生するのです。そのため「周期ゼミ」と呼ばれています。

なぜ、この2つのサイクルだけセミは大量発生しているのでしょうか。その解明に取り組んだ日本の生物学者、吉村仁教授による学説が話題となりました。

教授は13と17という数に注目しました。この2つの数は「素数」(1とその数だけしか割り切れない数)で、教授は13と17の公倍数と考えたのです。13年周期と17周期のセミが生き残ったのには、他の周期との公倍数を「避ける」ことができたからという説です。

かつて、セミは1年、2年、3年など、さまざまな周期で羽化する種がいたと考えられます。同じ公倍数を持つ種のセミは、周期がぶつかると他のときよりも激しい生存競争に巻き込まれ繁殖の機会を失います。

どのように周期がぶつかるかを見てみましょう。○印は各周期ゼミが羽化する年です。

セミの羽化周期

他の周期ゼミ同士が公倍数の一致をくり返す中、13年周期と17年周期のセミは、1年周期のセミと13年(17年)周期のセミしか出会いません。

さらに異常気象で繁殖できない状況が数年続いた場合、毎年繁殖期を迎える1年周期のセミは生き残れませんが、地中に長くとどまっていた他の周期ゼミは生き残れます。

このように異なる周期ゼミ同士の公倍数の戦いと自然の環境変化をやり過ごす幸運を、13年と17年の周期ゼミは獲得できたと考えられています。さらに13と17の最小公倍数は「221」なのです。両者が同じ年に羽化する機会はとても少ないのです。

米国の周期ゼミは、同じ年に全米でセミが発生するわけではなく、地域によって差があります。2016年はオハイオ州やペンシルベニア州などで17年ゼミが大発生しました。

その数は、数十億匹にも及んだといいます。2004年にニューヨーク付近で大発生した周期ゼミは、次は2021年といわれています。

 

PROFILE
横山明日希

math channel代表、日本お笑い数学協会副会長。2012年、早稲田大学大学院修士課程単位取得(理学修士)。数学応用数理専攻。大学在学中から、数学の楽しさを世の中に伝えるために「数学のお兄さん」として活動を開始し、これまでに全国約200か所以上で講演やイベントを実施。2017年、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)主催のサイエンスアゴラにおいてサイエンスアゴラ賞を受賞。著書に『笑う数学』(KADOKAWA)、『算数脳をつくる かずそろえ計算カードパズル』(幻冬舎)などがある。

文系もハマる数学 (青春新書プレイブックス)

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