副業を申告制にしたライオン株式会社
副業が成功するかどうかは、「本業と上手に両立していくこと」にかかっています。副業を認める企業は増えていますが、企業側には「本業をしっかりやること」「新しいアイデアや刺激を得て、本業に良い影響を与えること」という大前提があります。
ライオン株式会社は2020年1月、副業をこれまでの許可制から申告制に変更しました。「ライオン流 働きがい改革」にある副業に関するルールでは、副業ワーカーにとって重要な本質をズバリ明文化していますので、ここに列挙したいと思います。
副業をするにあたってのルール
1 ライバル企業や公序良俗に反する仕事は禁止する
2「本業の残業時間」と「副業の労働時間」の合計は、月80時間以内
3 翌日の勤務まで、10時間のインターバルを設ける
4「週に1日」は休む
1は当然のことながら、競合他社の仕事はしないこと。2から4は、体調を崩すような無理な働き方はしない、というルールですね。最も大切なことだと思います。
副業が成功するかどうかは、「本業以外の時間をどれだけ確保できるか?」にあります。やはりどれだけ好きなことでも、労働時間が増えすぎると、健康面でも精神面でも支障をきたします。タイムマネジメントの実現についても、本業にかける時間を最低限に抑えることが基本にあります。
2と4について考えると、次のような働き方が考えられます。
- 本業がある日……残業+副業=1日3時間以内
- 本業が休みの日……副業6時間以内(月に3日以内)
体を壊さない程度に、副業で刺激が得られて収入も得られることが理想的だと感じます。
本業と副業を両立させるための3つのポイント
家庭と仕事の両立には、私も思いっきり悩み続けてきました。完璧な両立は決してできるものではない。そう思い知らされてきました。けれど、家庭も仕事も「50%ずつの両立」ならできることがわかってきたのです。家庭と仕事の両立は、本業と副業の両立にも似ていると思います。
何かと何かをうまく両立させるために必要なことは、3つあります。
1つは、「人材の数」です。どれだけ家庭や仕事で、作業を人間の数に分散できるかどうかにかかっています。作業を分担する人間の数は多い方が良いことは、生産工場の流れ作業を考えればわかります。
しかし、令和時代の副業の場合は、かかわる人間の数が多過ぎると、伝達と意思疎通が煩雑になり、時間がかかりすぎて非効率になるような気がします。副業する仕事をつくるのであれば、関わる人間は自分ひとり、またはふたり、多くても3人くらいがよいのではないでしょうか。関わる中心人物が4人も5人もいれば、もう合議制の意思決定だけで、何日も経過してしまうかもしれないからです。
2つ目は、「機械化」です。どれだけ便利な機械を揃えて、それに頼れるか。いまどきの両立は、「便利な最新家電」なしには語れません。
3つ目は、「インターネットを最大限に活用する」こと。私自身も「ひとり起業」を20年近く続けていますが、「どうして続けてこられたのだろう? 家庭と仕事の両立を少なからずともできてきたのだろうか?」と考えると、「インターネットが発達し続けているから」だと感じます。
副業も同じで、本業をしっかりやりながら副業ワーカーとしてやっていくには、「インターネットを最大限に活用する」ことが秘訣です。
3つの要素を揃えれば、副業と本業の両立は難しくありません。
これほど副業の普及が叫ばれて、企業でも副業OKと言われるのは、「時代」の変化があってこそです。
2010年頃なら、まだインターネットサービスもスマートフォンの普及も過渡期で「(本業の勤め先がOKであれば)誰でも副業ができる時代」ではなかったでしょう。令和時代の副業は、機械とインターネットを最大限に活用するものであることは間違いありません。
楽しく副業を続けるには、本業の収入を目指さない
独立開業の場合も同じですが、最初の1〜2年で本業と同じような収入を得ることは難しいものです。
ましてや、週に1〜2日の副業で本業と同じような収入に達するには、かなりの熟練にならなければなりません。「1年目で成功させよう」なんて思っていると失敗します。
実際に、お客様が集められず、売上高が仕入れの量や経費に追いつかないパターンは多々あります。1年目にして赤字が補てんできずに廃業する人は、開業した人の5割以上に上ります。開業費用の高い飲食業においては、開業1年目の倒産が7割にも。
そこで、拙著『ど素人がはじめる起業の本』や『マイペースで働く! 女子のひとり起業』でも、「開業後のために、半年から1年間の生活資金を用意しておきましょう」とおすすめしています。
副業は、長期的な目線で「だんだん収入額を上げていこう」という気持ちの方が、結果的は成功します。
副業ワーカーとして、本業との両立を成功させるためには、
・1年目は、「副業をしている」という実績を大切にし、収入にはこだわらない
・2年目は、1年目の収入や経験値を振り返り、メリットや楽しさがあれば続ける
・3年目は、いよいよ収入にこだわり、収入額を上げていく
くらいの感覚で進めてはいかがでしょうか。
副業こそ、あなたのアイデアをそそぎ込む場だ!
副業は案外、本業よりも真剣に取り組むものかもしれません。なぜなら、あなたの未来を切り開くものだからです。「寝たまま、ラクに稼げる」副業を探している場合は、イメージと少し違うかもしれません。
副業こそ、あなたのアイデアを存分につぎ込むものになるはずです。
基本的に、「時間と共に、収入が増えていくビジネス(ストックビジネス)」を選び、副業の大切な「基本」に則った上で、「他の人とは違うこと」をしていくことが、副業の成功につながります。
他人と違うこととは、次のようなことです。
・取り組んでいる人が少ない分野を選ぶ(ニッチな分野)
・多くの人がやらないような方法を取り入れる(たとえば、週3日だけの営業、基本的にやりとりはメールやFacebookだけで電話に出ない、早朝に副業をする、など)
・副業で少し儲かっても、本業をやめないで、生活の安定を図る
・本業では効率的に仕事をこなし、周囲の声に惑わされず、定時に帰れる日を増やす
・周りの人がアドバイスしがちなことにとらわれず、自分の直感を信じて動く
常に「他人とは違う道を行こう」という気持ちが、結果的に、自分しか持ちえない働き方の創造につながっていきます。この本を手に取ってくださったあなたが、本当に手にしたいのは、副業そのものではなく、「もっと自由で、自分らしい働き方」や「雇用先に左右されない、自分らしい生き方」ではないでしょうか。
副業をはじめる時点から「他人と違うことをしていこう」と強く決心することで、世間で流れている情報に惑わされないで、本業と副業の両立というマイウェイを歩んでいけるのではないか。そう思っています。

- 作者:滝岡 幸子
- 発売日: 2020/08/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)